11話:アリシアのお母さんについて
それから俺はアリシアから亡くなった母親について色々と聞かせて貰った。
アリシアの母と父は幼馴染同士で、幼少の頃からずっと仲が良かったそうだ。
なのでお互いの両親から公認の元許嫁同士となりすぐに結婚した。そして子供を三人程もうけていった。その内の一人がアリシアだった。
アリシアは生まれてからずっとお母さんの事が大好きだったようで、お母さんにずっとベッタリとくっ付いて中々離れなかった幼少時代の話や、一緒に遊んでいった話、一緒にお菓子を食べに出かけた話、勉強を見て貰った話などなど、沢山の楽しい思い出話を聞かせて貰った。
そしてそれらの話はどれもアリシアのお母さんが大好きな気持ちがとてもよく伝わって来る素敵な話だった。
「なるほど。アリシアさんのお母さんは優しくて素敵なお母さんだったんですね」
「はい。そうなんです。とても優しくて素晴らしい母でした。本当ならそんなお母様ともっと長く一緒に過ごしたかったのですが……」
「そうですよね。もっとお母さんと一緒に居たかったと思うのは当然ですよね……あ、でもちょっと待てよ? すいません、アリシアさん。こんな事を聞くのは酷かもしれませんけど……アリシアさんのお母さんって、もしかして病気で亡くなられたんですか?」
その時。俺はふと疑問に思ったのでそんな事をアリシアに尋ねた。
アリシアに母親の死因を尋ねるなんて酷すぎるのは重々承知だ。でもアリシアの病気の原因が誰にもわからないというのは非常に不気味だと思うんだ。
そしてもしもアリシアの母親もアリシアと同じ奇病によって亡くなったのだとしたら……もしかしたらアリシアの奇病の原因解明に繋がるのではないかと思って、俺はそう尋ねてみたんだ。
(もしそうなら親子だから遺伝的な病気という可能性も考えられるしな)
それならアリシアの兄妹にも身体の不調とかそういうのが出てるかもしれないし、いつかアリシアの兄妹の診察もしてあげた方が良いかもしれないよな。
「あぁ、いえ、違いますよ。お母様は病気で亡くなったのではありませんよ」
「え? あ、そうなんですか。それじゃあアリシアさんのお母さんはどうしてお亡くなりになられたのでしょうか?」
「お母様は事故で亡くなったのです。私がまだ子供だった頃の出来事なので詳しい話はわかりませんが、お母さまが社交のお仕事で隣国への出張された際、移動に使っていた馬車が森の中でモンスターに襲われてしまったそうです……」
「な、なるほど。そんな事があったんですね。それとすいません、アリシアさんにそんな辛い話をさせてしまって……」
俺はアリシアに頭を下げながらそう謝罪をしていった。アリシアに酷な事を思い出させてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
でもアリシアのお母さんが同じ奇病で苦しめられていたという訳ではない事は判明した。親子で同じ奇病に罹っていた訳ではないという事だな。
という事はつまりあの奇病は遺伝的な病気という訳ではなさそうだ。でもそれなら一体あの奇病はどういった原因で発生したんだろう?
「いえいえ、お気になさらなくて大丈夫ですよ。むしろお母様の事をこんなにも沢山お話出来て、私は凄く嬉しい気持ちでいっぱいです。お母様の話をこんなにも沢山聞いて下さって本当にありがとうございます」
「はは。俺もアリシアさんのお母さんの話を聞けて凄く楽しかったですよ。だからこちらこそありがとうございます……って、あ」
「え? って、あ……」
そんな会話をしていたら急に気が付いた。いつの間にかアリシアのお皿が空っぽになっていた。
でも俺のプリンはまだ半分以上も残っている。つまりアリシアのプリンを食べる速度があまりにも早かったという事だ。
それに気が付いた瞬間、アリシアはちょっとだけ顔を赤くしながらこう言ってきた。
「あ、あはは……恥ずかしい所を見せちゃいましたね。セツナ様の作ったプリンがあまりにも美味しかったので、スプーンを動かす手がいつも以上に早くなってしまいました……」
「はは、それはプリンを作った俺からしたら嬉しい言葉ですよ。それじゃあ良かったら俺のプリンも食べますか? まだ半分以上残ってますし」
「えっ? セ、セツナ様のプリンをですか??」
「はい。もちろん口が付いてるから嫌なようなら断って頂いて構いませんけど」
「い、いえ、そんな嫌だなんて全然思いませんよ。で、でもその……私が食い意地が張っているような女に見えちゃいそうな気がして……」
「そんな事は思いませんよ。むしろ俺の作ったプリンをここまで喜んで食べてくれるなら、もっと食べて欲しいなって思うくらいですしね。という事で遠慮せずに良かったら食べてください!」
「セツナ様……はい、ありがとうございます。ふふ、それではお言葉に甘えて頂きますね」
「はい、どうぞです!」
という事で俺は残りのプリンもアリシアにあげていき、それからも俺達は雑談をしながらノンビリと楽しい時間を過ごしていった。




