10話:アリシアと一緒にプリンを食べていく
それから数分後。アリシアの自室にて。
俺は厨房の冷蔵庫から取り出してきたプリンをアリシアの座っているテーブルの上に置いていった。
「はい。それじゃあどうぞアリシアさん」
「ありがとうございます。これが先ほど教えて下さったプリンというお菓子なんですね。セツナ様の故郷で食べられてたお菓子を食べられるなんて嬉しいです。とても柔らかそうで美味しそうですね!」
「はい、とても柔らかいので今のアリシアさんでも食べやすいお菓子だと思います。自信作なので是非とも食べてみてください!」
「はい、わかりました! それでは早速……いただきます!」
アリシアはしっかりと手を合わせてから、スプーンでプリンを一口分すくっていき、自分の口に入れていった。
「……んんっ!?」
するとその瞬間、アリシアは目を物凄くキラキラと輝かせながら俺にこう言ってきた。
「んんっ!! お、美味しいっ! 美味しいですよ! セツナ様! プルプルで柔らかくて食べやすいですし、卵の濃厚な味もしっかりとしていて、甘くてとても美味しいです!」
「はは。アリシアさんのお口に合ったようなら何よりです。それじゃあ俺も早速……うん、甘くて美味しい。久々に作ったけどちゃんと美味しく作れて良かったなぁ」
という事で俺もプリンを一口食べていってみた。冷たくてプルプルで甘くて美味しかった。久々にプリンを食べたけどやっぱり美味しいよな。
「はい、本当にとても美味しいです! それに私は甘いお菓子を食べる事自体が凄く久々なので、それも相まって今はとても嬉しい気持ちでいっぱいです! こんなにも甘くて美味しいお菓子を作って下さってありがとうございます、セツナ様!」
「はは。そう言ってくれると朝早くに頑張って作った甲斐がありました。前にアリシアさんが甘いモノが好きという話を聞いといて良かったです。ちなみにアリシアさんは一番好きなお菓子とかって何かありますか?」
「私の一番好きなお菓子ですか? うーん、やっぱりアレでしょうか。甘いモノは何でも大好きですけど……私はシフォンケーキが一番大好きかもしれませんね」
「なるほど。アリシアさんはシフォンケーキが一番好きなんですね。シフォンケーキは子供の頃からよく食べていたんですか?」
「はい、そうなんです。だいぶ昔の事なんですけど……幼少の頃に私、亡くなった母に王都にあるシフォンケーキ屋さんに連れて行って貰った事があるんです。そこで生まれて初めて食べたシフォンケーキがとても甘くて美味しくて感動したので……それから毎日のように母の手をぎゅっと握りしめながら“シフォンケーキ屋さんに連れて行って欲しい”と何度もせがんだものです。ふふ」
「へぇ、それは何だか母娘の仲睦まじい様子が思い浮かぶ話ですね……って、えっ? ア、アリシアさんのお母さんって……既に亡くなっているんですか?」
その時、アリシアの口から衝撃的な言葉を聞いてしまい、俺は驚きのあまりそう聞き返してしまった。
「え? はい、そうですけど……? って、あっ。お父様からこの話は事前に聞いていると思ったんですけど、どうやら聞いてはいなかったようですね……気を遣わせてしまったようでしたら申し訳ありません。でも母が亡くなったのはだいぶ昔の事ですし、私も既に吹っ切れていますからね。ですからセツナ様も私に対してそんな気を遣わないで大丈夫ですよ」
「そ、そうですか。アリシアさんがそう仰って下さるのなら良かったです。それにしても今のアリシアさんの優しい表情を見てると……アリシアさんはお母さんの事がとても大好きだったというのが良く伝わってきますよ」
「ふふ、もちろんです。お母様は優しくて素敵なお母様でした。私が幼少の頃はお母さまには毎日のように勉強を見て貰ったり、遊んで貰ったり、本を読んで貰ったり、一緒に眠ったりと……お母様自身も貴族として社交界で忙しかったはずなのに、それでも子供の私との時間をいつも大切にしてくれてたとても優しいお母様でした。それと私と同じく甘いモノが大好物だったので、よくお父様に内緒で王都の商店街を訪れてコッソリと甘いお菓子を食べに行ったものです。ふふ、そんなお茶目な所も大好きでした……」
アリシアは嬉しそうに笑みを浮かべながらそんな母親との思い出を語って来てくれた。
「……って、あ。す、すいません。久々にお母さまの事を思い出したので、それでついお母さまの事を熱中して話しちゃいました……セツナ様にはこんなしんみりとしちゃうようなお話は聞いててもつまらないと思いますし、何か違う話題で話しましょう」
「いえいえ。つまらないなんて事は無いですよ。アリシアさんの大好きな家族の話を聞くのはとても楽しいですよ。だからアリシアさんのお母さんの話をもっと聞かせて貰えませんか?」
「え? もっとって……良いんですか? こんな身内の話をセツナ様が聞いてもら何も面白くは無いと思うのですが……」
「そんな事はないですよ。俺もアリシアさんとこうして縁が出来た事だし、アリシアさんの事をもっと沢山知りたいですからね。だから是非ともアリシアさんのお母さんの話をもっと聞かせてください!」
「セツナ様……はい、ありがとうございます。私の事を沢山知りたいと仰って頂けるのはとても嬉しいです。ふふ、それではこの後も……良かったら私とお母様との思い出話を聞いて頂けますか?」
「はい、もちろんです!」
という事でそれからも俺はアリシアと一緒にプリンを食べながら母親についての話を聞きながら過ごしていった。




