第二章・第四幕:戦争と夢
「あ~、バイト疲れた~」
「フィル、おかえり」
「ただいま~」
僕がここにきて数週間?が経った。
時間...時計は読めるようになったけど、曜日感覚がまだつかめていない。
「って、カルディアもいたのかよ」
「よう、邪魔してるぜ」
「何してるのさ」
「ナディエに文字の読み書きを教えてやってるんだ」
「だいぶ読めるようになったよ」
「そうか、よかったな」
フィルはニコッと笑う。
「......」
「そういやフィル、今日は歴史を教える予定だったよな?」
「え?あ、いや~、今日は疲れたし、別日にしません?」
「そう言って昨日も、その前も、先延ばしにしたよな?」
「......はい、やります」
そう言ってカルディアは机の上に教科書やら資料集やらを広げる。
「まず、君がわからないのは近代当たりだったよね」
「うん、さっぱり何の話か分からなくて......」
「まあそうだな、あの辺は覚えること多いし......。歴史って何を教えたらいいんだ?ただ歴史年表とか暗記すればいいじゃん」
「それができないから困ってるの!」
「......たびたびフィルは頭悪いって思う時があるんだよね」
「幼馴染なのに!」
「だって事実じゃん」
「.......」
僕はカルディアが広げた教科書のページを読む。
「これ.......」
「ん?どした?」
「いや......これ」
僕は一枚の写真を指さす。
写真には、奴らと同じ銃を持った人が、何かと戦っているところが写っていた。
「これは......侵略戦争の時のものだね」
「侵略戦争......?」
「うん、今から説明するから。フィルも聞いててね」
「あ、はい」
カルディアはノートを広げ、ペンで何かを書き始めた。
「まず、侵略戦争っていうのは国同士の争いじゃなくて、地球人と他の星から来た生命体と戦った戦争なんだ。正確にはわかってないけど、おとめ座の方から来たんじゃないかって言われてる。彼らはアストリルって呼ばれて区別された。彼らには、死んでも復活するって能力があったらしいよ」
「いや、そんなのどこにも書かれてな―」
「都市伝説だよ。今はもう全滅しちゃったけど、まだ生き残りがひっそりとどこかで暮らしてるって言われてるよ」
「へ~。ねえ、カルディア。ここに『地球人と友好関係を築こうとするアストリルもいたが、大半は地球人を滅亡させようとした』ってあるけど、この友好関係を築こうとしたアストリルはどうなったの?」
「死んだ」
「え?」
「友好関係を築こうと行動を開始した時には、もう地球人とアストリルは戦っていたんだ。でも、国はそういう彼らを保護した。だけど、過激団体に暗殺されてしまったよ」
「ちょっと待ってよ、アストリルは死なないんじゃなかったの?」
「目を破壊すれば死ぬらしい。国が遺体を......死んでないけど遺体で実験をした結果そうだとわかったんだ」
「......なんでそんなこと知ってるの?」
「フィルはあーしがオカルト好きってこと知ってるでしょ?」
「あぁ......そういう」
僕は写真をまじまじと見つめる。
塹壕から顔を出す兵士、編隊を組んで飛行する戦闘機、潜水艦内部のモニター、そして......目が光っている兵士。
違和感。
耳を裂くような銃撃音、不気味なほど静かな夜、凍えるような寒さ、暗闇を切り裂くような閃光。
違和感。
僕はここにいなかったはずだ。
それなのに、なぜだか全てをぼんやりと覚えている。
引き込まれる、この感覚。
違和感。
僕は、僕は......なんだ?
「ナディエ?」
「......え?」
「大丈夫?」
「え、あ......うん、大丈夫だけど」
「じゃあなんで......」
カルディアは僕の顔を覗き込む。
「なんで......泣いてるの?」
「......え?」
僕は自分の頬に触れる。
涙。僕は生きていてこれを初めてみた。
「......大丈夫。なんか、変な感じになっちゃって」
「それは大丈夫なのか?」
「......ん」
「わっ、どうしたのナディエ」
僕は気づけばフィルに抱き着いていた。
......寂しい。
無性に誰かに甘えたい。
寂しい。
孤独で、暗くて、逃げ出したくて。
―帰りたくて。
「な、ナディエ......その、離れてくれないかな?」
「やだ」
僕はもっと腕に力を込める。
離れない。離れたくない。
もう二度と、離れたり......しない。
もう一度......あの場所に―
「......帰りたい」
無意識に声に出る。
「え?」
「どこに?」
カルディアが鋭く返す。
どこ?
家じゃない。
ここじゃない。
この街でも、あの街でもない。
もっと遠くて、暖かくて、明るい場所。
はるか遠い、あの場所。
「......わからない」
ぼんやりと思い浮かぶ情景に、場所を指し示す決定打がない。
「わからないって......」
フィルが頭を撫でる。
「今日はもう、寝ようか。きっと疲れたんだよ」
そう言って、フィルは僕をベッドへ連れて行った。
「なあ......ホントにこの航路で合ってるんだよな?」
「えぇ、あっているはずだわ」
なんだ......これは?
「あれが標的なんだよな?」
「えぇ、そうね」
目の前には青と緑色の、綺麗な......なにか。
「にしても......綺麗なとこだな」
「私たちのやるべきことはわかっているわね?」
「はい」
「再確認しましょう。まず一つ目―」
映っていた幻影が、渦を巻いて消える。
消えたと思ったら、また現れる。
「はぁっ、はぁっ......」
「おかしいわ......一向に来ない」
「やっぱり間違ってたんだ!事前情報と全然違う!」
「落ち着いて、アルタ」
「いくら命令だからっておかしいじゃないか!こんなの......あんまりだよ」
「......アルタ」
「......俺は、あいつらに降伏する」
「な?!それは―」
目の前の少女は激しく動揺する。
「それがどれだけ危険かわかっているの?!」
「あぁ、わかっているさ。でも、それしか手段がないと思う」
「アルタ―!」
「俺には、まだ死ねない理由があるんだよ、シルン。俺はまだ―」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
激しく鼓動する心臓、噴き出す冷や汗、止まらない震え。
「あれは......なんなんだ」
まだ鮮明に残っている、恐怖の感情。
あれは......僕の記憶じゃない。
なんだ?
「あ、ナディエ。起きたんだね」
「うん......」
「大丈夫かい?」
「うん、なんか......思い出してた」
「......不思議なこともあるもんだね」
フィルがカーテンを閉めて、部屋の電気をつける。
「ねえナディエ。今週末、出かけないかい?」
こんにちは、恋葉春です。
受験も終わり、ある程度余裕ができました。
約一ヶ月ぶりの投稿になります。お待たせしてしまった方がいたら申し訳ありません。
これからはバンバン投稿していくつもりですので、お付き合いいただけたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。




