202 レンダート伯爵家
どうぞよろしくお願いします。
ジョナサンとレンダート伯爵家に向かう馬車の中でクルトはまだどうやって話を切り出そうか悩んでいた。
ジョナサンが馬車の窓から王都の通りを眺めながら言った。
「クルトも東部を回ってきたのだろう?
ミレーヌらしい少女の話などを聞いたりはなかったか?」
「ギルドでお嬢さんが王都からいなくなり、情報を出さないように捜索していることは聞きました。
それと、街でお嬢さんと思われる特徴と年齢の少女を見なかったかと役人風の男達に聞かれて……、不審な点がありましたのでギルドに報告はしました」
「役人風……。ギルド以外の?」
「はい、私に声を掛けてきましたが、私がギルドの職員だと知ると慌てて誤魔化すように離れて行きました。ギルド以外の……、教会や魔法協会とも違う感じでしたし。隠れてミレーヌ様を捜索していたということです」
「……どこぞの貴族か?」
「領地的にはファルク公爵家です」
「ファルク公爵家……。現王妃の実家だな。
そういえば、エドワード王子が急用があるとかで呼びつけられたのがファルク公爵領だそうだ。
ミレーヌに関係あるかもしれないと、私にだけ伝えてくれた。もし違っていたら申し訳ないから、カイエンには話さず行くとのことだったが……」
「それはいつ?」
「話をしたのは昨日だ。
今日の朝、発たれたはずだ」
一瞬ミレーヌ……、レンのことが頭をよぎる。
無事でいることを祈るしかない……。
レンダート伯爵家に到着する。
昨夜はマリアとシーラとコーラスもレンダート伯爵家に泊っていたそうだ。
ジョルジュ王子とウィリアムはエドワード王子を見送ってから、レンダート伯爵家に合流したと話を聞いた。
クルトはジョナサンと一緒に、みんなが集まっていると言われた客間に入り、見回した。
カイエンとマリアとシーラがいない。
「カイエンはイシュー隊長が来たから、夫人の所に連れて行った。
マリアとシーラはイシュー隊長対策で夫人のそばにいる」
コーラスが苦笑しながら教えてくれる。
やはり、ミレーヌが言っていた女性はコーデリア・イシュー子爵令嬢で、イシュー隊長のことなのか?
「クルト、どうした?」
ジョナサンが苦し気な顔をしたクルトに気づいて言った。
そこへカイエンが戻ってきた。
「クルト!! おかえり!
戻ってくるなり、こんなことになっていて、驚いたことだろう……。すまない……」
クルトはカイエンの姿を見て驚いた。
やつれているというのが第一印象。
そして、背がかなり伸びていて、よけいにそう感じる。
カイエンが魔法協会の仕事で王都から離れ、さらにクルトが王都から東部へ。
約2ヶ月近くカイエンとは会っていなかったのだが……。
その間にカイエンは背が伸び、ミレーヌが家を飛び出してからずっと心配しながらも、自分は王都から離れられないという日々を過ごしていたのだろう。
「昨夜、東部の仕事より戻りました……。
ミレーヌ様を捜索しているのは、途中のギルドで聞きましたが……」
「そうなんだ……。
なんで、こんなことになっているのか……。全くわからなくて。
手掛かりもないし、マリアが最近、東部の方ではないかと言ってくれて……。
ちょうど今日、エドワード王子がファルク公爵の用事で東部へ行くので、情報を集めてくれると……」
何とか微笑もうとするカイエンの表情が痛々しい。
「……ミレーヌ様がどうしていなくなったのか、の情報はないのですか?」
カイエンが収納魔法から2通の封筒を取り出す。
「ミレーヌが残したものだ」
クルトは受け取り、ざっと目を通した。
ミレーヌが話していた通りの内容だ。
封筒に便箋を戻し、カイエンに手渡しながら言った。
「このお嬢さんが書いている『本当に愛する人』の心当たりは?」
「あるわけない!
俺が愛しているのはミレーヌだけで。
……まだ、ミレーヌに他の好きな人ができた、とかの方が納得できる!!」
「……納得できるのですか?」
「いや、できないけどっ!
俺が別の人とというのは、それこそ、何が何やらで、まったく意味がわからないっ!」
カイエンが少々取り乱しかけて、コーラスがどうどうとカイエンを宥めるように肩を押さえた。
これは、やはり、ミレーヌの勘違い……、にしてはミレーヌの真剣な表情を思い出しため息をつくクルト。
さて、どうしたものか……。
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