200 中途半端
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もう夜だったが、エドワードがミレーヌを連れて執務室を訪れると、ファルク公爵が苦笑して迎えてくれた。
「やはり、だめだったか……。
エドワードの性格を考えるとうまくいかないだろうとは王妃に伝えていたんだがね。
しかし、もっと大騒ぎになると思っていたよ。しばらく、ふたりで籠っていたとは想定外だ」
「はあ、叔父さん。
そう思っていたなら、相談してくれても。
あそこですぐに私が人を呼べば、彼女のあんな姿をさらすことになるだろ!?
彼女は友人で……、そして、友人の婚約者だ。
……間違いが起きなくて、本当に良かったよ」
「……エドワード?
その反応は、もしかして?」
エドワードは赤くなる。
「とにかく! 私は彼女に指一本触れてないっ!」
あれ? 揺すったり、頬を叩いたりしましたよね? とミレーヌは思ったが、たぶん、違う概念の意味の指一本なのだろうと黙った。
「……そんなにムキになるとは、珍しいな?」
ファルク公爵にさらに言い返され、エドワードがぐっと言葉に詰まる。
バルドもカイトもエドワードのそんな姿を見るのが初めてで、驚いている。
エリオスとイアンも駆けつけてきて、ミレーヌの無事な姿を見て微笑んだ。
「エリオス、イアン!!
エドワード王子にケイトさん達の無事をお願いしたの。
もう、村の人達を人質にするのはやめて欲しい」
エリオスとイアンがファルク公爵を見る。公爵は頷いた。
「ミレーヌ嬢、よくわかった。
あなたがこの屋敷にエドワードと留まってくれるなら、そうしよう」
「……わかりました。とりあえずエドワード王子と行動を共にします」
ミレーヌがはっきりと返事をした。
ファルク公爵がうれしそうな顔をする。
「それならば、私は姉に叱られずに済むな。
エリオス、イアン、ご苦労だった。
慣れぬ嫌な仕事をさせてしまい済まなかった」
それから、ミレーヌは王都を出てからのこと、クルトと行動を共にして辺境の村にたどり着き、ギルドを通しての冒険者活動ができないため、薬師の弟子にしてもらったことを話した。
エリオスは王妃の命を受けて動いていた役人の男3人がミレーヌ捜索をしていたところ、薬屋の新しい弟子レンという名の少年がもしかしたら女性かもしれないという話になったこと、そして、少し前から探りを入れていたこと。
直接接触しようとしたら、警戒され、村外れの工房に行かれてしまい、機会を窺っていたところ、工房の男に屋外で襲われるのを見て、助け出して保護したことを話した。
男に、リオルに襲われた話になるとエドワード達が驚きの表情を浮かべた。
「保護っていうか、私、気絶させられたんだけど」
ミレーヌの言葉にエリオスとイアンが謝ってくる。
「姫さんは戦えるって話で、しかも狩りにも出ていたし。
用心して、そういう方法を取らせてもらったんだ」
ファルク公爵がエリオスとイアンに村に戻り、パーティと合流して、この計画はここで終わらせると指示してくれた。
エドワードが話の終わりが見えてきたからか、ほっとした表情をしたが、首を傾げる。
「ミレーヌのことを知っていたのはギルド職員のクルト。
クルトは私と入れ違いに王都へ戻っている。
とすると、クルトの話を聞いて、カイエンもこちらにもう向かっているのではないか?」
「なんで、カイエンが?」
ミレーヌが言うからエドワードが驚く。
「それはミレーヌを捜しているからだろう!」
ミレーヌは厳しい表情をして言った。
「私は王都には戻りません。
エドワード王子が王都に戻るタイミングで村に戻る。
この屋敷では一緒にいるけど、王都に帰るタイミングで、私は村に戻る」
「それこそ、なんでだよ!?
村にはミレーヌを襲うような男もいるんだろ!?」
「リオルのことは……、きちんと話をするし、もう油断しない。
カイエンの元には戻らない。
それで、私はあの村で生活したい。
なんだか、ずっと中途半端なの……。
ファルク公爵領のあの村にずっといるから!
エリオス、イアン、一緒に連れて行って!」
「なら……、私もその村に行く!」
「「王子!?」」
バルドとカイトが慌てている。
ファルク公爵が笑った。
「あのエドワードをこんなに振り回すなんてすごいな! ミレーヌ嬢は!
姉の勘は正しかったのか!?」
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