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196 申し訳ない

どうぞよろしくお願いします。

「……何を考えている?」


 魔法使いのエリオスが心配そうに言った。


「……のどが渇いたし、お腹も空いた、なと」


 エリオスは笑って、馬車の窓を開けて合図する。

 すると馬車はまもなく停車した。

 エリオスがミレーヌの隣に座り、水やパンなど口に運んでくれる。


「……逃げないから、手の縄、解いてくれないかな?」


「申し訳ないが、それはできない」


「えっと、トイレとかは……」

 

 カラコムまでけっこうかかったはず。途中に農村があったけれど。


「申し訳ないが、今日は宿まで我慢してもらう。無理なら、私が手伝う」


「手伝うって!?」


「申し訳ないが、吸水性の良い布を用意しているのでそこに……」


「おむつってか!? 女性に!? エッチ! 変態!」


 エリオスが「申し訳ない……」と言う。

 ミレーヌは笑ってしまった。


「申し訳ないって何回言うんだよ!

 わかったから、エリオスがしたくないことをさせられているのは!

 まあ、切羽詰まったら、相談する……」


 エリオスがほっとした表情で、また「申し訳ない……」と言って、自分でも気がついたのか苦笑した。



 公爵家の馬車、しかも周囲には騎士団がついて護衛している。パーティのもうひとりが御者台にいて、もうふたりの姿は見えないので、そちらは村にいるのか?

 もう一台もう少しグレードの低い馬車がいてそちらに役人風の男が3人乗っていた。

 移動中にミレーヌはそんなことをひとつひとつ確認していった。


 宿というか、泊ったのは騎士団が使う石造りの小屋みたいなものだった。

 もう1泊は農村の村長の家だった。

 その2泊以外は野営はせず、時々休憩を挟みながら馬車は夜も走り通した。


 最初に気を失っていたのは半日くらいだとしても、目覚めて3日間でカラコムの街に入り、街の外れのファルク公爵家の屋敷に入ったのはかなり強行軍であったはずだ。


 エリオスとはすっかり仲良く(?)なっていたので、ここで別れるのは寂しいと思ってしまったミレーヌだった。


 魔法使いはエリオス。もうひとりは剣士でイアンという名だった。

 イアンも話してみると悪い人ではなく、指示のために動いているという感じで、エリオスの言葉の信憑性を裏付けた。

 ファルク公爵家……、その上から指示を出している者がいる。そのうえとなると、王家しかいない。


 エドワード王子、アルベルト神官、このふたりはミレーヌをギルドや教会から隠れて探す意味がない。

 ジョルジュ王子はカイエンと一緒に動いているだろうし、影でこんな手を回すことはないし、できないだろう。

 王も……、似たようなものか。というか、あんまり覚えていない。向こうもミレーヌにそこまで興味を持っているとは思えなかったし。

 王妃……、ジョルジュ王子とミレーヌに何か思うところがありそうだった。ミレーヌが言い返したことも不満に思っていたようだし。でも、ミレーヌの聖女、というかジョルジュの勇者の任命と名を解きたがっていたのは王妃だ。


 たぶん、王妃だろうな……とミレーヌは考えを巡らした。

 王妃なら、ジョルジュにカイエンがついたことが不満だろうし、さらにコーラスが護衛騎士になったことも不満に思っただろう。

 カイエンをジョルジュから引き離したい?

 そのために私を利用する?

 でも、カイエンにはコーデリアがいるから、私には人質の価値なんてないのにな……。


読んで下さり、ありがとうございます。


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