195 捜さなくていいのに
どうぞよろしくお願いします。
魔法使いの男は面白そうに笑った。
「聖女と呼ばれたくないとは……。
面白い令嬢だな」
「……なんで私の居場所がわかったんだ?」
「……あなたが王都から姿を消したという情報から、どこか地方へ行くのではと予想された。
で、ファルク公爵家にこの周辺、領地の辺りを気をつけて探すようにと。
特に目星があったわけじゃない。
ただ、ファルク公爵家がこの地方では動きやすかっただけだ」
「あちこちの地方でも捜索が行われていた。
でも、ギルドや教会が……」
「ああ、ギルドには知られないように探すのは難しかったよ。でも、ギルドもおおっぴらにはできなかったからな。それで、髪が短いという情報が追加になって、レンという名の少年にたどり着いた」
「それで、すぐには捕えずに、様子を見てた?」
魔法使いは頷く。
「ああ、誰を人質にすればあなたが言うことを聞くかもわかったしね」
ミレーヌは男を睨みつける。
「さいっていっ!」
「話が早い聖女様で助かったよ。
……あなたが逃げなければ、あの村の薬屋の薬師やその子ども達は無事でいられるだろう」
ミレーヌの身体から、強い怒りの気配が消えた。静かな怒りは残っているが、今は言うことを聞くという選択肢しかありえないからだ。
「あの人達には手を出すな……」
「大丈夫、約束は守る。私達もこんなことはしたくない。
逆に教えておいてやる。
私達はファルク公爵家に仕えている。
ファルク公爵家が誰の指示で動くのか。そこが変われば、私達はしたくないことをしないで済む」
「……公爵家の中で、意見が分かれてる?」
男はミレーヌの肩をつかむと座れるように引き起こしてくれ、背もたれの角に楽なようにもたせかけてくれた。
「今は、様子を注意深く見ることだ。今は……、動くな」
ミレーヌは考えこむ。
この魔法使いの男は、何かを教えようとしてくれている?
それとも、私に言うことを聞かせるために?
でも、今は、ケイトさん達を守るためにも、このまま……。
ミレーヌは頷いた。
「わかった」
男はほっとしたように微笑んだ。
「本当に手荒なことはしたくない。
カラコムまでは数日かかる。
逃げ出さないでくれ。約束は守る」
「……あなたの名前は?」
「私はエリオス」
「エリオス……。パーティのリーダーなの?」
「リーダーではないが。
まあ、重要な仕事を任されることは多いな」
「今回は私の見張りか」
「そうですね。あなたは魔法を使えるし……。
それに天才魔法使いのカイエン・レンダートがあなたを追っている」
カイエン……。
名前を久しぶりに聞いて、身体が心がざわざわする。
私を、まだ、捜してくれている……。
うれしいと思う気持ちを押し殺す。何で、捜している?
家の面目のため? 怒っている? それとも……心配してくれて? いや、罪悪感からかもしれない。
ミレーヌが不幸になったのではと……。
そんなのいいのに。何も知らずに、カイエンの心がないのに隣にいて気づかずに笑っていた自分の方が罪深い。
私のことなんか放って置いて、幸せになってくれていいのに。
読んで下さり、ありがとうございます。




