192 自覚
どうぞよろしくお願いします。
レンは賑やかな場をそっと離れ、ナナの様子を見に外へ出た。
暗いが、厩の前に小さな灯りが灯っていて、場所はわかった。
ナナは落ち着いて過ごしている。
「ナナ、家の方にジョバンニとバートも来ているからね!
明日、うーん、どうしようか。
しばらくパーティがいるんだっけ。でも、罠も確認しに行きたいしね……」
「明日もこっちに泊れば?」
レンは背後からの言葉にびっくりして振り返る。
リオルが明かりを手に持って立っていた。
「あ、心配してついてきてくれた?
すぐ戻るよ。ありがとう
「……レンなら、ずっといてくれてもかまわない」
リオルの顔が少し赤い気がする。酒のせいか?
「それは、ありがとう。
みんなも心配するね。戻ろう」
レンがリオルの横に行き、そのまま家の方へと歩き出す。
リオルは立ち止まったままだ。
「リオル?」
レンが怪訝そうに立ち止まり振り返る。
「レン……、もう少し、ふたりで話をしたい」
「うーん。みんなで、ではなく?
リオルはさ……。
たぶん、子どもの頃、大人にひどく扱われて、子ども時代というか、その時の経験がないまま、大きくなったんだろうね。
だから、やさしくしてくれる人には甘えたくなるのかも。
でも、もっといろいろな人と、子どもや大人、ちょっと嫌なことを言ってくる人とも……、付き合って、経験を積み重ねた方がいいよ」
「いろいろな人……」
「うん、今はギム爺さんって保護者が、居場所があるんだもの。できるよきっと」
「居場所……。レンは一緒にいてくれない?」
「僕は……、この先どうするか、考え中で」
「俺と一緒に、ここにいるってのは?」
「えっ?」
「俺は……、レンが好きだよ。
たぶん、この気持ちは、好きだというもの、なんだと思う」
「えっと……」
レンは何か言わなくてはと焦るが、言葉が見つからない。
「レンは、俺のことなんか……、だよな」
リオルが顔を歪めて笑う。
「初めて、初めて、こんなにそばにいて欲しいと思った。
俺を見て、俺だけを見て欲しいと。だから……」
リオルが素早く手を伸ばしてきた。ただの動きならばレンなら逃れられる。
何故かその動きがぬるりとした感触で、手を動かしたと認識した時には掴まれていた。
「魔法?
リオル、魔法が使える!?」
レンが驚いて言った。
自分の動きの速さを上げている!?
それとも時間に干渉している?
気がついたらリオルに抱きしめられていて、レンの顔や表情が強張る。恐怖だ。
抵抗しようとするが、地面に引き倒されていた。
ナナが異変に気付きけたたましい叫び声をあげる。
「やだ! カイエン!! カイエン、助けて!!」
思わず別れを決めた人の名前を叫んでしまう。
今更ながらミレーヌは自覚した。カイエンと別れるなんて、忘れるなんて、無理なことに。
その時、リオルが「うっ!」と呻いて、ミレーヌの身体の上に倒れ込んできた。
ミレーヌはリオルを横に丁寧に転がして、何が起きたのか確認しようとした時、顔に何か布のようなものを押し当てられた。
誰!?
レンは自分の顔を押さえ付けている手の先を見た。
パーティの冒険者?
それとその奥に、役人風の男……。
ナナの叫び声が遠くなる。ミレーヌは意識を失った。
読んで下さり、ありがとうございます。
ケイトはリオルのことを知っていたので(前に治療で関わったことあり)、レンが気に入られてしまい距離をつめられて、さらに女だと知られたら、とっても面倒なことになりそうだと、心配したのでした。




