187 毛皮の工房
どうぞよろしくお願いします。
バートも一緒にとなるとあまり奥へは入れない。
ブラウンボアを1頭見つけて仕留め、一度村に帰ることにする。
薬屋に帰り、バートがブラウンボアを収納していたので、ジョバンニと一緒にライナスの所へ解体をお願いするように言って、レンは再びコボーのナナに乗った。
「シルバーフォックスの罠を見てくる! すぐ戻るよ!」
そう言い置いて森の奥へ向かう。
ナナが場所をよく覚えていてくれて、罠にかかっていたシルバーフォックスをきれいなうちに回収できた。
再び罠を仕掛けて、もうひとつの罠へ。
そちらはまだかかっていなかったので、餌を交換して配置し直す。
「行こう、ナナ!」
ナナに乗り、村に向けて走り出すが、何かに見られている気がする。ナナも周囲を気にしている。
「何だろうね……」
少し開けた場所で周囲を確認するが、特に何かいるわけではなさそうだ。
「よほど、うまく隠れた見張りとかかな?」
グレイウルフの時のことを思い出したレンは周囲のニオイを注意深く嗅いだ。
特に……、変わりはないようだ。
ただ、ナナも気にしているということは、気のせいではないということだ。
「うーん?」
カイエンなら、周囲の探索魔法ができたんだけどな。
ふと思い出してしまい、頭を振る。
なんでふとした時に、カイエンのことを考えちゃうんだろう!?
そういえば、マリアの探し物の勘もあったっけ。
あの時はカイエンのブレスレットだけ外せば行けると思って、夢中で飛び出してきちゃったけど……。
今、王都の方はどうなっているんだろう。
コーデリア嬢は、カイエンと……。
胸がズキンと痛んだ。
自分で身を引くことを選んだのに、まだ心は納得できていない。
レン……、ミレーヌは苦笑した。
とにかく、村に早く戻ろう。
ナナを走らせてたら、見られている感覚が消えた。
何だったんだろう?
やはりグレイウルフとかの偵察だったのかな?
ナナがなんとなく村に入るのを躊躇している。
そっと村の裏手の山に登り、上から観察してみる。
知らない男の人達がいる。
格好は……、ギルドの職員……ではなさそう。どちらかというと役人という感じ……。
クルトが役人風の男がミレーヌのことを捜しているようだと聞いたことを思い出す。
レンは胸がドキドキした。ナナが大丈夫だとでも言うように顔をこちらに器用に曲げてレンの髪の毛をすりすりする。
「ふふ、ありがとう。ちょっと落ち着いた」
うーん、薬屋に帰るのはもう少し様子を見よう。
レンは村外れの毛皮の加工職人の工房へ行くことを思いつき、そちらにナナを向かわせる。
毛皮の加工は臭いがするためと水をたくさん使うため、村から少し離れた、川下にあるのだ。
獲物のシルバーフォックスもあるし、そちらを回って帰ることはおかしいことじゃない。
皮の加工の工房にはギム爺さんと弟子のリオルがいる。
用心して、村から死角になる工房の裏から、近付き、そこら辺の柵にナナの縄を繋ぐ。
製品となった毛皮を運ぶ馬車があるということは工房に人はいるはず。
工房にはふたりともいて作業中だった。
「えーと、ケイトさんとこの新しい弟子、だっけ?」
リオルに言われて挨拶をし、シルバーフォックスを頼みに来たことを話す。
「どれ?」
収納魔法から出すと仕事の手を止めて見に来たギム爺さんが「きれいな個体だな」言った。
「罠で捕まえたばかりです」
「肉は廃棄でかまわんね」
「はい」
シルバーフォックスの肉は食用向きではない。
前にナナが食べるかと少しもらったことがあるが、食べなかった。臭みが強いようだ。
「この毛皮もいつもケイトから預かったものと同じで、素材として売っていいのかね」
「はい、お願いします」
レンの言葉に頷くギム爺さん。
リオルが何かノートに書きつけて、レンに見せた。
ケイトさんのページにシルバーフォックスのことを記入してくれている。
「ありがとうございます」
ギム爺さんが笑う。
「……何か気になることでも?」
読んで下さり、ありがとうございます。




