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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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215/224

第215話 決意 ★


 対抗戦が終わった翌日の日曜日はシャルの家に来ていた。


「いやー、ツカサ様は素晴らしかったですね。あのトウコ様の手綱をきちんと握っておられました」


 クロエがそう言いながらコーヒーを置いてくれる。


「ありがとー。あいつはすぐにでしゃばるから苦労するわ」

「御二人は実に見事でしたよ。正直、相手に勝ち筋がまったくなく、可哀想でした」


 まあ、負ける要素はなかったな。


「ちょっと実力不足だったわよね。実はキースの町もウチと同じように1年生だけで構成されていたみたいなの」


 ミシェルさんが教えてくれる。


「そうなんだ……」

「結果的に1年だけで構成したウチとキースが1位、2位だから他所の町は今頃、騒いでんじゃない?」

「ふーん」

「あ、そうだ。それとなんだけど、来週末に校長先生のところに行ってね。お褒めの言葉をちょうだいできるから」


 いらねー。


「私はただただほっとしたわ。ちょっと態度が悪いのが数人いたけど、結果は万々歳。面目を保てたわ」


 シャルがしみじみと頷く。


「お嬢様はもっと頑張れたと思うけど……」

「そうですよ。本当だったら最後の戦いもトウコ様ではなく、お嬢様がツカサ様と組んで世界に2人の愛を知らしめるべきでした」

「嫌よ」


 俺も嫌。


「シャルって来年も生徒会長なの?」

「絶対に辞める。もう嫌。ロクなことがないわ」


 魔法大会も強制参加になっちゃったからな。


「それは無理かなー? 頼るべきはシャルリーヌさんって風潮だし」

「なんで? トウコさんで良いじゃないの」


 トウコが生徒会長?


「あれが?」

「無理ですね」

「うん、無理。中学の時もずっと成績は良かったけど、そういう話は一切なかった」


 うるせーし、落ち着きがないもん。


「ユキさんもダメだし、あとはオスカー? よし、オスカーに勧めましょう」


 どうしてもやりたくないらしい。


「でも、シャルが会長をやめたら皆がよそよそしくなるぞ。何て呼んでいいかわからなくなりそう」


 名前が役職になってしまう委員長、会長あるある。


「大丈夫よ。今現在も皆、よそよそしいから」


 シャル……


「ツカサ様、お嬢様をどうかよろしくお願いします」


 クロエがハンカチを取り出し、目元をぬぐう。


「うるさいわね。いいから勉強するわよ。ツカサ、行こ」

「うん……」


 俺達は2階に上がると、いつもの勉強会をした。




 ◆◇◆




 対抗戦も終わり、いつもの日常に戻ってきた。

 私は午後からの授業を終えると、校長先生に呼び出されたので校長室に向かう。


「シャルリーヌです」

『どうぞ』


 扉越しに校長先生の声が聞こえてきたので扉を開けて、中に入った。


「失礼します」

「お忙しいのに悪いですね」

「いえ……それで何の用でしょう?」

「対抗戦のことです。結果は素晴らしいものでした」


 私も1位はすごいと思う。


「皆が頑張ってくれました。特にユキさんとトウコさん、それにツカサ君の働きは素晴らしかったです」

「確かにそうでしたね。でも、皆さん、頑張られた」

「ありがとうございます」


 頭を下げる。


「シャルリーヌさん、イヴェール派とラ・フォルジュ派はどうですか?」


 校長先生がこの話題に触れてくるのは珍しい。


「より悪くなったように思えます」


 特にウチの派閥が……


「そうですね。時にあなたはメラニー・ラプラスをご存じですか?」


 メラニー?

 確かウチの派閥でトウコさん誘拐事件の時にツカサ達と駅で遭遇したはずだ。


「もちろん、知っています。会ったことはないですが」

「メラニーさんはウチの卒業生でしてね、今度、ウチに赴任することになりました」


 赴任?

 教師ってこと?

 つまりそれはミシェル先生への対抗策。


「すみません……」

「いえ、良いんですよ。教職も忙しいですし、手伝ってくれるのなら助かります。ただ、あなたには先にお知らせしておこうと思いましてね。意味がわかりますね?」


 ツカサか……


「ありがとうございます」

「以上です。呼び出してすみませんでした」

「いえ、情報提供に感謝します。それでは失礼します」


 一礼すると、部屋を出る。


「メラニー・ラプラス……」


 確か鉄道警備隊だったはず……

 失策の責任がこれか……

 とはいえ、ちょっと面倒だ。

 帰って同級生だったはずのクロエと相談しよう。


 私は校長室をあとにすると、寮に帰るために歩いていく。

 そして、女子寮まで戻ってくると、自室がある2階に上がった。


「いやー、私に敵う者はいないね」

「トウコ、すごーい」


 なんかいるし……


 私は嫌なコンビに出会うのを避け、なるべく気配を消しながら階段近くの休憩スペースをスルーして、通りすぎていく。


「わはは! でも、お婆ちゃんからめっちゃ鬼電。怖いわー」

「ちょっと品がなかったもんね」

「ユキよりマシじゃね?」


 それはそう。


 内心で同意しながら自室までやってくると、扉を開け、中に入る。


「ハァ……」


 トウコさんか……

 確かにすごかった。

 私はあれと春先に戦ったのか。

 もう1回やったら絶対に勝てない。

 もし、次の魔法大会でツカサとトウコさんに組まれたらもうどうしようもない。


「情けない……」


 首を横に振り、ゲートに向かう。

 そして、ドアノブを握ったところでふと何かの気配がしたので杖を取り出し、後ろを振り向いた。


「あら? 気付くなんてすごいじゃないの」


 そこにはテーブルにつく茶髪の女がいた。


「ジョアン……」


 なんでこんなところに!?


「こんにちは。それと優勝おめでとう。さすがね」

「ジョアン、なんでここにいる!?」


 杖を向けたまま聞く。


「怖い、怖い。ちょっとした里帰り?」

「どうやって……」


 いや……


「まさか……!」

「そうそう。ゲートを使いました。私はイルメラさんにやられちゃったけど、そのままこっそりあなた達が使っているゲートをくぐったの」


 ジョアンが対抗戦に参加したのはそれが目的か。


「センサーは?」

「ふふっ、どうとでも……まあ、タネは簡単でこの泥人形は生命じゃないからゲートを抜けられるのよ」


 面倒な。


「それで何の用? ここは女子寮の私の部屋よ?」

「知ってる。今日はあなたに用があって来たのよ」


 私?


「悪いけど、あなた達の期待に応えられるだけの魔力は持ち合わせていないわよ」


 悲しいけど。


「そこはいいかなー? それよりも大事な役目があるのよ」

「役目?」

「ほらー、ツカサ君てこのままだと絶対に来てくれないじゃない? それに誘拐も無理そう。警備はきついし、何よりもバケモノじゃん、あの兄妹」


 それはそう。


「それで私……」


 そういうことか。


「そうそう。ほら、ツカサ君ってあなたのことが大好きじゃない? だからあなたがこっちに来てくれたらツカサ君も来てくれるかなーって」


 私はエサか。


「来ないわよ。それに私はイヴェールの次期当主よ? 行くわけないでしょ」

「悲しくない?」

「何が?」

「あなたもツカサ君が大好きなのに絶対にくっつけないじゃない? まさしく、悲恋。ロミオとジュリエット」


 またその話か。


「放っておいて。どうでもいいことでしょ」

「あー、なるほど、なるほど。シャルリーヌさんの方は本気か……そうよね、イヴェールのトップに立てば文句を言う人なんてどうとでもなるもんね」

「黙れ」

「おー、怖い。そんなにツカサ君のことが好きなんだ。シャルリーヌさんも乙女ね……でも、やっぱり悲恋かな?」


 イラつく。


「何が?」

「あなたは何も知らないもんね。ツカサ君、このままだと死んじゃうわよ?」


 は?


「ツカサが死ぬ? 冗談でも許さないわよ」

「ツカサ君がなんで呪学を学んでいるのか知らないの?」


 っ!


「どうでもいいでしょ」

「ツカサ君の腕にある腕輪はね、渇望の腕輪という身に着けた者の魔力と命を奪う呪いの腕輪なの」


 渇望の腕輪……

 聞いたことがある……


「………………」

「あは! ツカサ君がなんであの時期に魔法学校に来たんだと思う? 勉強嫌いの彼がなんで難しい呪学を受けているんだと思う?」


 わかっている。

 前から疑問だった。

 それにツカサはいつだってあの似合っていない腕輪をしていた。

 それこそ、海でも……


「黙れ……」

「ツカサ君は死んじゃいます。ね? 悲恋」

「殺す」


 杖に魔力を込める。


「取ってあげようか?」

「は?」


 この女、何を言っている?


「だから取ってあげる。だからこっちにおいでよ。それでツカサ君と幸せな家庭を築い――あれ?」


 ジョアンの首が落ちた。


「黙りなさい、賊」


 後ろから声が聞こえたと思ったらいつの間にかクロエが横に控えていた。


「ク、クロエ!?」

「お下がりを」


 クロエが私を下げる。


「あらあら? イヴェールの懐刀さんじゃないの……びっくり」

「死ね」


 クロエがそう言うと、一瞬でジョアンの身体がバラバラになり、泥のかたまりになる。


「あはは! じゃあねー。私を頼ると良いよ。それが嫌なら錬金術の闇に飲み込まれるといい」

「黙れ」


 クロエがジョアンの顔を踏みつけた。


「クロエ……」

「お嬢様は家で待機していてください。私はこのことをミシェルに知らせます」


 クロエはそう言って扉の方に行く。


「クロエ、ジョアンの言っていることは? ツカサは?」

「事実です。ですが、何も問題ありません。そのためのラ・フォルジュですし、最悪は腕を落とせばいいだけです」


 腕を……


「いや、ちょっと待ちなさい! よくないでしょ!」


 腕って……


「お嬢様、ジョアンの言葉はお忘れください。敵の言葉は無視です」


 クロエはそう言って、部屋を出ていった。


「無視って……」


 できるか! ツカサの腕よ!?

 腕がなくなったら……


『錬金術の闇に飲み込まれるといい』

『あなたは禁忌を犯しそうだもの。それを伝えたくてあなたをここに呼んだの』


 ジョアン……それが目的か……

 ということはそれはつまり……

 私は……どうすればいい?


「ああ、そうか……」


 答えは最初から出ている。

 私は不可能を可能にするだけだ。

 ツカサを失うわけにはいかないのだから。


ここまでが第5章となります。

ここまで読んで頂きありがとうございます。


引き続き、第6章もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
シャルガチだったか
ツカサくん本人が半ば忘れてそうな腕輪の件を外野から伝えられたかぁ。ジョアンはだいぶ遠回りな搦め手使ってきましたね。
久しぶりのメインクエスト進行?ツカサも忘れてるんじゃ?
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