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アリフレタ聖剣物語  作者: 天野ハザマ


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第2話:老人と魔法

本日2話目の更新です

「……やれやれ」


 老人は指先に淡い光を灯すと、空中に絵のようなものを描く。その絵は空中で確かに像として結ばれ、光を放つ。その光は3人組を貫き……瞬間、少年たちは互いに顔を見合わせる。


「そういえば親父の前髪の食事って何処だっけ」

「エンの兄貴の馬糞が走ってるから礼拝に急がないとな」

「ああ。畑が怒り狂って村長が生えてきちゃうよ」


 意味の分からないことを言いながら走っていく3人組を少年はポカンとした顔で見ていたが……すぐに老人が何かをしたのだと気付きその顔を見る。


「混乱の紋章だ。まあ、簡単な魔法だな」

「魔法……今のが、魔法……?」

「興味があるかね? あるなら教えてあげよう」

「え、でも。え? 魔法って、大きな町でたくさんお金を払って覚えるものですよね?」

「そんなもんは知らん。儂はお前が学びたいかどうか聞いとるんだ」


 老人は言いながら、ニヤッと笑う。


「言っておくが、今の馬糞みたいな村で暮らすよりは余程未来が拓けるぞ? 魔法使いは何時の時代だって尊敬されるもんだ」

「お、教えてください! 僕、何をしたらいいですか⁉」


 必死で頭を下げる少年に、老人は優しく微笑む。よかった、と思う。心まで完全に死んでいたら、自分の提案に少年は頷かなかっただろうから。


「お前がすることは儂が教えることを覚えることだけだ。これは単なる儂の自己満足。だから、やってよかったと思わせてくれればいい」


 そう、これは老人の自己満足だ。だからこそ、見返りなど必要ないし……そもそもこんな哀れな少年から何かを貰うつもりもない。


「儂はヴォータン。旅の吟遊詩人じゃよ。それで少年、名前は?」

「えっと……クズとかクソガキとかおい、とかなら呼ばれてます」

「うむ……それは名前じゃあないな。となると……ふうむ」


 老人……ヴォータンは悩むようにこめかみを何度か指で叩くと、思いついたように「おお」と声をあげる。


「よし、少年。今日からお前は『アルドロット』だ。旧い言葉で『光目指す者』を意味する……お前にピッタリな名前だろう」

「アルドロット……僕の、名前……」

「ハハ、泣いているのかね……っと」


 自分に縋りつき泣きじゃくる少年の背を、ヴォータンは優しく撫でる。名前すらなかった少年……アルドロットの未来は、故郷の村にはない。それは自分が魔法を教えた程度で変わりはしない……どころか、より酷くなるだろう。アルドロットが覚えられるようなものなら、自分たちだって。そう考えるのは間違いないからだ。

 だから、ヴォータンが最初にするべきことは……アルドロットに、村で魔法を絶対に使わないように言い含めることだった。


 そうして、ヴォータンの授業は始まってから1か月ほどの時間が経過した。吟遊詩人であり魔法使いであるというヴォータンの教えてくれることは、アルドロットにとっては目からうろこのことばかりだった。小さな村のことしか知らないアルドロットは世界を知り、常識を知った。住んでいる村……ジム村が、エルク王国と呼ばれる国の中でも田舎のミッド男爵領の、その中でも更に田舎であることなども当然のように知らなかった。

 教えてくれることはどれも素晴らしいことばかりで、しかし……その中でも一番面白いのは魔法の話だった。


「さて、アルドロット。復習だ。魔法とは何だ?」

「世界の法則を捻じ曲げる力です」

「具体的な手段は?」

「詠唱魔法、精霊魔法、あとは知られざる魔法が幾つか。師匠の紋章魔法もその1つです」

「うむ、その通りだ。さて……ではその内、一番優れているのはどれかな?」

「紋章魔法です!」


 アルドロットがそう答えれば、ヴォータンは楽しそうにワハハと笑う。


「こいつめ、師匠の機嫌をとってきよる!」

「あ、あはは」

「まあ事実ではある。しかし一般的には精霊魔法であるとされている。その理由は何故か分かるか?」

「特別な才能が必要だからです」

「うむ、正解だ」


 詠唱を必要とする詠唱魔法は魔力と正しい知識があれば誰にでも使える。しかし精霊と契約して使う精霊魔法は精霊に好かれる才能が必要になる。通常は13歳になれば精霊の祝福と呼ばれる儀式を受けて、その中で才能のある者が精霊と契約をするのだが……アルドロットは受けさせてもらっていない。いてもいなくても同じで、村の一員と思ってもらっているかすら不明だ。さておき、精霊魔法とはそういうものだ。


「では、そうした魔法より儂の紋章魔法が優れている点は何処か。それは使う状況を選ばず、応用性が高いところだ」


 魔法とは、おおよそ7つの属性に分けられる。すなわち火、水、風、土、光、闇……そして、無。このうち無を除く6つの属性は司る神々がいて、特に素晴らしいものであるとされている。しかし、ヴォータンの詠唱魔法は違う。その7つ全てが平等だからだ。


「そもそも属性に優劣をつけようというのが間違っている。そんな初歩的な部分を間違えている時点で、真理には一生到れん」


 過去に何かあったのか如何にも不機嫌そうな表情になるヴォータンだが、すぐに笑顔に変わる。


「さて、では紋章魔法についてだ。紋章魔法とは、発現させたい効果に対応した紋章を魔力を込め描くことで効果を発揮する。最初に覚えておくべき7つを教えよう」

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― 新着の感想 ―
「老人」「ヴォータン」という名前だけで身構えてしまう……w 大丈夫ですか、この御老人、隻眼だったりしませんか? >しかし、ヴォータンの詠唱魔法は違う。 一箇所、詠唱魔法となっていました。
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