第008話 部屋探し
「クラーク、問題ないな?」
部長がいまだに呆けてへたり込んでいるクラークに声をかける。
すると、ハッとしたクラークが慌てて立ち上がった。
「はい……負けました。レオンさん、非礼を詫びます。またルール違反の魔法を使用してしまい、申し訳ございません」
クラークが頭を下げてくる。
「いや……」
反応に困る……
「さて、遊びはここまでだ。お前達は仕事に戻れ」
部長がそう言うと、特殊捜査チームのメンバーが帰っていく。
クラークもまた、他のメンバーに肩を叩かれながら階段を上がっていった。
「レオン、ご苦労だったな」
「いえ……」
「お前達も仕事に戻れ、と言いたいところだが、まだ仕事はない。明日、ギルバードとフィリスが研修から戻ってくるのでそこから始動となる。今日は帰っていい。というのもお前は来たばかりだし、寝床を確保せねばならんぞ」
寝床……
「あの、寮とかは?」
「すまん。この部署自体が設立されたばかりでな……メンツも色んなところから引っ張ってきた連中しかおらず、寮は作ってないんだ」
あー……どうしよう。
「わかりました」
「悪いな。アパートなんかは多いと思うし、すぐに見つかると思う。何だったら給料の前借りも認めるが……」
「あ、いえ。貯金はありますので」
さすがにある。
「そうか。では、早めに見つけると良い。それでは明日な」
部長がそう言って、戻っていった。
「レオンって本当に強いのねー。すごいわ。あ、はい」
アリアが剣とエルを返してくれたので剣を腰につける。
「剣には自信があるんだ」
「いやー、本当にすごい! これでウチも安泰ね。あ、そうだ。ウチのチーム室を案内するわね」
「ああ」
俺達もこの場をあとにし、非常階段を上がると、治安部の部署に戻った。
そして、そのまま廊下を歩いていき、奥の左側にある扉の前に立つ。
「ここ、ここ。まあ、入ってよ」
ニコニコ顔のアリアが勧めてくるので扉を開け、中に入る。
部屋はさっきの特殊捜査チームと同じ間取りだが、デスクが4つしかない。
とはいえ、さっきの部屋よりもかなり小綺麗だった。
「綺麗にしてるな」
「逆。逆。あっちが汚いの。あ、レオンってタバコは吸う?」
「いや、吸わない」
好きじゃないのだ。
「なら良かったわ。ここは禁煙ね。髪や服に匂いが付いちゃうから嫌なのよ。あ、座って。お茶を淹れるから」
アリアがそう言って、左端の方にあるお茶コーナーに向かった。
「ここで良いか?」
奥の右側のデスクに行く。
左側手前のデスクは犬のぬいぐるみが置いてあるし、奥は書類が山積みになっている。
そして、右側手前には本が置いてあり、何もないのは右側奥なのだ。
「あ、ごめん。そこね。別のところが良かった?」
「いや、ここでいい」
席につき、エルをデスクに置くと、アリアの後ろ姿を見る。
「本当に4人なんだな」
「ええ。ちなみに、正面が私でその隣がフィリス。あなたの隣はギルバードね。また明日、紹介するわ」
名前からして、女性と男性だ。
「ああ」
「はい。どうぞ」
アリアがお茶を置いてくれる。
「ありがとう」
「いえいえ。ウチは8時半から始業で17時半に終わるから。あ、残業代も出るらしい」
普通だな。
「夜勤は?」
「ある時はあると思う。やったことないけど」
大丈夫かね?
「レオンよー、まったりお茶も悪くないが、さっさと家を探した方が良いぜ? いくら貯金があるって言ったって、いつまでも宿屋暮らしだと、すぐに尽きちまう」
エルがパタパタと飛び、忠告してきた。
「わかってる。しかし、来たばかりで街を知らないからな……アリア、不動産屋とか知らないか?」
「レオンはアパート?」
「家を買う余裕はないな」
買っても一人で住む気にもなれない。
「じゃあ、アパートね。5万ロットで風呂トイレ付きの1Kなら紹介できるわよ」
うーむ……わからん。
よく考えたら俺は孤児院を出てからはずっと寮だったのでアパートの相場がわからん。
いや、わかったとしてもそれはヴァルテンブルクだ。
となると、前世から考えた方が良いかもしれん。
そうすると、首都で5万は安いな。
「相場的に良いのか?」
結局は聞くことにした。
なんかこの子は聞きやすいのだ。
「安いと思うわよ。普通に8万とかするしね。フィリスなんて10万超えのところに住んでる。ギルバードは知らないけど」
悪くなさそうだな。
「エル、どう思う?」
「とりあえず、内見したらどうだ? それで決めろよ。実際に見ないと、隣が飲み屋でうるさいとかあるぞ」
それはそうだ。
「アリア、紹介してくれるか?」
「ええ。うるさいってことはないけど、紹介する。行きましょうか」
俺達はお茶を飲み干すと、片付けをし、チーム室を出た。
そして、1階に下りると、受付に向かう。
「ジェーン、私達、これで上がりだから。レオンに部屋を紹介してくる」
「それが良いと思うわ。あ、レオンさん、こちらを」
ジェーンが腕章を渡してきた。
「これは?」
「治安部の腕章です。特に制服はないですが、明日からはそれを付けてください」
なるほど。
よく見たらアリアの左腕にも同じ腕章が付いている。
「わかった。では、明日から頼む」
「はい。それではお疲れ様でした」
軽く頭を下げると、アリアと共に部署を出た。
「こっち、こっち」
アリアについていく。
すると、5分ぐらいで大通りから右に曲がると、2階建ての建物の前にやってきた。
「ここか?」
宿屋のように見えるんだが……
「ええ。まあ、入ってちょうだい。ただいまー」
ただいま?
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