第006話 特殊捜査チーム
中はいくつものデスクがあり、軍服やスーツの男性が10人くらいいた。
年齢層的には20代くらいもいるが、30代、40代ばかりだ。
タバコを吸っている者もいるし、無精ひげの者もいる。
いかにもって感じのメンツが揃っていた。
「部長、ウチのチームのリーダーが来ましたよ」
アリアがそう言うと、奥の管理職席にいる男性と話していた男性がこちらを振り向く。
40代くらいの男性であり、身体が厚い。
他の連中もこっちを見ているのだが、そいつらも素人ではないことがすぐにわかった。
そして、そんな連中は皆、いぶかしげな表情だ。
「おう。来たか」
部長がこちらにやってきた。
「レオンです。さっき来ました」
アリアが俺を紹介してくれる。
「ああ。俺は治安部の部長、アーロンだ」
「レオン・ヘルフェリヒです」
部長と握手をする。
硬く、強い手だ。
確実に剣を使える。
というか、ここの連中、全員使えるな。
「よく来てくれたな。こんなに早く来るとは思ってなかったが」
「色々ありまして……」
俺の言葉にアリアが斜め下を見る。
「何にせよ、歓迎しよう。他国から来たわけだし、わからないことも多いだろう。慣れるまで時間がかかるかもしれんが、ゆっくりやってくれ」
良い上司だな。
騎士団なら死ぬ気で覚えろの一言だ。
「ありがとうございます。拾ってもらった恩に報いるため、身命を賭して、尽くします。何なりとお申し付けください」
左手で胸を叩く。
「騎士だったな……そう固くなるな」
別に固くはないんだが……固いのかな?
「固いでしょうか?」
「何から何までな。姿勢が良すぎる」
それはきっちり教育されてるから……
「直します」
「別に直さなくても良くない? そっちの方がかっこいいわよ」
…………このままで良いかな。
「ははは。とにかく、新設するチームを頼んだぞ」
「はっ! お任せください!」
ちょっと調子に乗った。
「部長、いいんですか?」
左の方で立っている20代くらいの男が聞く。
「クラーク、何がだ?」
「いや、来たばかりの奴にチームリーダーはないでしょ。ましてや、そいつ、ヴァルテンブルクでしょ」
おー……上が決めたことに逆らうとは。
倒れるまで走らされる懲罰ものだ。
「それがどうした? わざわざ引き抜いてきたわけだし、それ相応の待遇で迎えるものだ」
「つまり裏切ったんでしょ? 信用できますか? ウチは犯罪だけじゃなく、スパイも取り締まる組織ですよ」
クラークがそう言うと、アリアが心配そうな顔で背中をさすってくれた。
良い子なんだが、やっぱりちょっと抜けている。
場面を考えてほしい。
「こう言ってるが?」
部長が俺を見てくる。
「来たばかりの奴にチームリーダーはない、というのには同意します。私も正直、そう思っていますので」
ただまあ、他のメンツがねー……
「裏切った云々は?」
えーっと……言うの?
「裏切るも何も……クビになったところを拾ってもらったもので……」
アリアがハンカチを差し出してきたが、手で制した。
「部長、こいつ、使えるんですか?」
そう言われても仕方がない。
「そう言われてもな……では、せっかくだし、模擬試合でもするか」
模擬試合?
「私がでしょうか?」
「当たり前だろう。誰かやるか? いないなら俺がやるが……」
部長か。
かなり強そうだ。
「俺がやりますよ」
文句を言った張本人のクラークが出てきた。
「ふむ……よし。レオン、来たばかりで悪いが、ちょっとやってくれ。殺しても構わないぞ」
へー……
「部長さんよー。発言には気を付けろよー」
エルが飛び、部長を制する。
「…………本?」
さすがに全員がエルを凝視する。
やっぱり珍しいらしい。
「あ、昔、古本屋で買った魔導書です。しゃべるんですよ」
「そ、そうか……発言には気を付けろとは?」
気を取り直した部長がエルに聞く。
「殺してもいいって言ったらこいつはマジで殺すぜ? 騎士はそういうもんだ」
エルがそう言うと、部長がこちらを見てくる。
「殺しませんよ」
嘘。
騎士はやらなければならない。
騎士は味方を守り、敵を討たなければならない。
少しでもリスクを減らすためには相手を完全に無力化するのが一番なのだ。
つまり、殺していいとは、殺せという意味となる。
と思ったのが、もう俺は騎士ではなく、ここは警察っぽいところだ。
ましてや、相手は味方の同僚であり、やるのも決闘ではなく、ただの模擬試合。
殺すなんてありえない。
「……殺しは厳禁とする。とにかく、味方の実力を知っておくのも大事なことだし、交流とでも思え」
「はい。わかりました」
殺したらダメ、っと。
「それでは下に行こう。この建物の裏が訓練場になっているのだ」
部長がそう言って出ていくと、俺とクラークだけでなく、アリアも他の人間も一緒に部屋を出る。
そして、階段の奥にある通路から非常階段に出ると、裏の敷地に出る。
「へー……」
そこは確かに訓練場のようで広い敷地に藁でできた人形などが置いてあるし、屋根付きの物置場には様々な武器が置いてある。
ただし、武器には保護用の布が巻いてあったり、刃引きが施されているのが一目でわかった。
「お前の得物は……まあ、剣だな」
部長が俺の腰を見る。
「ええ。一通りは使えますが、やはり剣ですね」
「木剣があるからそれを使え。クラークは?」
「私も木剣でいいです」
木剣でいい?
いや、やめよう。
「アリア、悪いが、エルと剣を頼む」
腰の剣を抜くと、エルと共に渡す。
「うん。頑張ってね。あなたはウチのリーダーなんだから鼻を明かすのよ」
「努力しよう」
クラークと共に倉庫の方に行き、木剣を見る。
どれもしっかりとした作りで丈夫そうだったので適当に取り、部長のもとに戻った。
そのまま待っていると、クラークも木剣を選び、戻ってくる。
「では、始めよう。あまり手荒なことはしないように。クラーク、魔法も禁じる」
「ええ。問題ありません」
クラークはやはり魔法使いか。
「では、位置につけ」
部長がそう言うので俺とクラークは距離を取り、対峙した。
俺は一礼すると、利き手である右手で木剣の柄を握る。
すると、意識がすーっと冷たくなり、同時に全身に熱い血が巡っていくのを感じた。
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