第028話 2日目
翌日、この日も早起きをし、日課の素振りをする。
心なしか、昨日より剣の振りが良い気がする。
そうやって、気持ちよく振っていると、後ろの扉が開いた。
「おはよー……ホントにやってるのね」
後ろを振り向くと、部屋着姿で眠そうなアリアが立っていた。
「ああ。毎日だ。雨の日でもやる」
「風邪引くわよ……」
今の時期は暑いくらいだから大丈夫だ。
冬はさすがに部屋でやるが。
「運動には良いぞ」
「私は体操をやっているからそれでいいや。お酒はどう? 残ってないの?」
「アリアに言われた通り、水を飲んだし、残ってないな。そっちは?」
「私も大丈夫。じゃあ、また受付の前でね」
アリアがそう言って、建物の中に入っていった。
その後も素振りを続け、いい時間になったので部屋に戻り、シャワーを浴びる。
そして、エルを持って、1階の食堂に向かうと、カウンターについた。
すると、すぐに昨日の筋肉質の男性が奥から出てくる。
「おっす。今日はどうする?」
「昨日と同じハムエッグセットで頼む。あ、俺は一昨日から世話になっているレオンだ」
「おう! 俺はレックスだ。アリアと同僚なんだってな。頼むぜ!」
レックスはそう言って、肩をポンッと叩き、厨房の方に戻っていった。
「ホント、明るい家族だな」
「まったくな」
そのまま待っていると、昨日と同じ朝食が出てきたので食べる。
やはり美味いし、朝から力が湧いてくる気がした。
朝食を食べ終えると、部屋に戻り、準備をする。
そして、最後に腕章を取り付けると、1階に下りた。
「あ、来た、来た。行きましょう」
アリアが先にいて、待っていたのでハンナに声をかけ、アパートを出る。
そして、一緒に歩いて出勤すると、昨日と同じく、受付でジェーンと話すギルバードがいた。
「まーたちょっかいかけてる……ジェーンも仕事中なのに」
アリアが呆れている。
なんか素直に話した方が良くないだろうかって思えてきた。
「おはよう」
受付に行き、2人に声をかける。
「あ、おはようございます」
「よう。体調はどうだ?」
ギルバードが聞いてくる。
「大丈夫だ。そっちはどうだ?」
「俺も大丈夫だ。ただ、フィリスはまだ来てないな」
「本当に今日はゆっくりなのね……」
アリアがまたもや呆れた表情になった。
「ま、いつものことだろ。行こうぜ」
俺達は2階に上がり、奥のチーム室に入る。
そして、お茶の準備をしたりしながら待っていると、扉が開き、フィリスが部屋に入ってきた。
「5分前出勤。セーフ」
フィリスがそう言って、席につき、置いてあるお茶を飲む。
「もうちょっと早く来たら?」
「無理。眠い。子供は寝るもの」
「あなた、私より上でしょ」
アリアが20歳でフィリスが21歳だ。
「年齢だけ。それ以外は何もかもアリアが上」
フィリスがそう言って、視線を落とした。
「どこ見てるの?」
「気のせい。背が低いから視線が自然とそこに行くだけ」
「はいはい。それよりも体調はどう?」
「私はそもそも一杯しか飲んでいないから問題ない」
それはそうだな。
あとはジュースだったし。
「じゃあ、大丈夫ね。あとは部長が……ん?」
ノックの音が聞こえてきたので皆が扉を見る。
「はい?」
『特殊捜査チームだ。入るぞ』
男性の声が聞こえ、扉が開くと、30代くらいの無精ひげの男性が書類を持って、中に入ってきた。
先日、特殊捜査チームの部屋にいた一人だ。
「ライナスじゃん」
フィリスが指差す。
「お前さんに敬語を使えとも言わんし、態度を改めろとも言わんが、指を差すのはやめとけ」
「失礼」
「あいよ。レオンは一昨日ぶりだが、自己紹介をしてなかったな。俺は特殊捜査チームのライナス・アークライトだ」
ライナスが自己紹介してきたので立ち上がる。
「レオン・ヘルフェリヒです。改めて、よろしくお願い致します」
「ああ。お前さんは何一つ、言うことがねーな……でも、敬語はいらない。お前さんはリーダーだろ」
本人がこう言っているのだからそうした方が良いか。
「わかった。それで用件は?」
「今日の仕事についてだ。部長が急遽、軍本部に呼ばれてな。それで俺が代わりだ。というのもウチに関係する話なんだよ」
特殊捜査チームに関係する仕事……
「雑用? お茶汲み? 書類? 雑務?」
「そればっかりだったわよねー……」
雑用係だな。
「そりゃお前さん達がまだ始動してなかったからだ。今回はちゃんとした仕事だ。昨日の殺人事件は知ってるか?」
「知ってるわよ。おたくが騒がしかったし、ジェーンに聞いた。ウチの親も知ってたわね」
「情報規制をしたんだが、白昼堂々と街中で起きた事件だからすぐに漏れちまったんだ」
規制は難しいだろうな。
「ライナス、どういう事件なんだ?」
ライナスに近づきながら聞く。
「こいつだ」
ライナスが書類を渡してきたので見てみる。
そこには事件をまとめたものがあるのだが、被害者の遺体の写真まであった。
「写真か……」
「あ、ヴァルテンブルクだったな。写真は知ってるのか?」
「ああ。知っている」
正確には前世で。
「そうか。じゃあ、話は早いな。見てわかる通り、真っ二つだ」
被害者の男性は上半身と下半身が分かれ、部屋の中だと思うが、床が血の海だ。
「魔法か……剣か……」
「剣でこんなことにはならねーよ……いや、お前はできそうだな……」
できるな……
「レオンじゃないわよ。昨日はずっと私達といたし」
アリアが庇ってくれる。
「いや、微塵も疑ってねーよ。まあ、剣でこんな芸当ができる人間は限られる。やっぱり魔法って思った方が良いだろう」
そう思う。
昨日のアリアのエアカッターで斬られたゴブリンやコボルトがこんな感じだったし。
「この捜査を俺達がするってことか? そっちの管轄では?」
「初動捜査はウチが担当したが、魔法犯罪ならそっちだ。いや、別に決まっているわけじゃないし、ウチでも良いんだが、別件があってな……そこで部長がお前さん達に振ったわけだ」
なるほどな。
まんま警察の仕事だが、魔法が関わっているから治安部に回り、そこからウチか。
特殊捜査チームは忙しそうだし、まだ何も案件を持っていないウチに回すのも理解できる。
「わかった。仕事だし、やろう」
「頼むわ。とはいえ、新設チームだ。わからないことや応援がいるならいつでも言ってくれ。じゃあな」
ライナスがそう言って、部屋から出ていった。
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