第024話 報告
部署に戻ると、受付のジェーンのもとに向かう。
「あ、おかえりなさい」
ジェーンが俺達に気付き、笑顔で声をかけてきた。
「ただいまー。いやー、疲れたわ」
アリアがやれやれと首を振る。
「お疲れ様。それでどうでした?」
ジェーンが聞いてくる。
「特別種のウルフがいたので討伐した。報告は部長にすればいいか?」
「特別種ですか……そうですね。4階におられますのでお願いします」
「わかった」
俺達は近くの階段を上がり、4階までやってくる。
「あ、部長室は奥ね。こっち」
アリアが案内してくれ、通路の奥にある部長室にやってきた。
「頼むぞ」
ギルバードが肩をポンッと叩いてきたので前に出て、扉をノックする。
「部長、魔法対策チームです」
『入ってくれ』
中から部長の声が聞こえてきたので扉を開け、中に入る。
部長はデスクにつき、書類を見ていたのでその前に並んだ。
「部長、本日の任務を終えたので報告します」
「ああ。どうだった?」
「午前中の警邏は問題ありませんでした。私としても街を見て回れて良かったです」
さすがにケンカのことは報告するまでもない。
あんなのは事件とも呼ばない。
「そうか。街を見て、どう思った? 他所から来たお前の率直な感想を聞きたい」
中にいる人間はそれが当たり前だから問題に気付きにくいというのはある。
俺が勧誘された理由の一つにそういうのもありそうだ。
「良い街だと思いました。人も店も多いですし、充実しています。街の中に列車が通っているのも便利ですし、ヴァルテンブルクの王都とは雰囲気が違ったので、新鮮でもありました。休みの日にまた見て回りたいと思いましたね」
まずは良いことを言う。
「それは良かった。他には?」
「良い街だと思ったのは本当です。ですが、問題も多く見えました」
「ほう? 聞いてみたい」
部長が書類を置き、両肘をつく。
「街の急速な発展に人がついてきてないと聞いていましたが、まさしくその通りだなと。スラム問題、他の街との格差……魔道具や魔法犯罪が増えているのも納得です。ここは犯罪が育ちやすい環境が揃っています」
「そうなのだ。この数年で犯罪数が倍以上に増えている。良くない組織も流入してきていると聞く」
マフィアか。
「表向きは平和だからこそ、問題は根深く見えます」
犯罪者が街に溶け込んでいるということだ。
「ああ。この国は多くの問題を抱えている。国としても対処しようと色々な手を打っているところだ。その1つがこの治安部であり、お前達魔法対策チームである。今日は研修の延長のようなものであり、これからもっと難しい問題に当たってもらうこともある。しかし、それを乗り越え、解決できる4人だと思っている。頑張ってほしい」
「はっ!」
敬礼すると、他の3人も敬礼する。
「それで午後は?」
「エルトナ村に行き、話を聞いたあとに南東の森に向かいました。確かに魔物が多かったですので退治しながら奥に向かい、ウルフの群れとそれを統率する特別種に遭遇しました。そして、これを討伐し、帰還しました。おそらく大丈夫だと思いますが、念のために経過観察は必要だと思います」
まだ問題の解決に至ってはいない。
経過観察をし、何もなかった時に初めて、解決となる。
「わかった。軍部の調査部隊に報告しよう。4人での活動はどうだった?」
「問題ありません。揉めるようなこともトラブルもありませんでした。お互いの能力もわかりましたし、動きの確認もできました。これからも上手くやれると思います」
そう言うと、他の3人も頷く。
それを横目で見て、ちょっとほっとした。
「わかった。本日はご苦労だった。任務完了として処理をするからそれぞれ報告書を提出するように」
「報告書……」
フィリスの表情があからさまに曇った。
「自分で書けよ。アリアを頼らないように」
「はーい」
部長の言葉にフィリスが渋々頷く。
「部長、それで明日からは?」
「また明日、指示しよう。チーム室で待機しておいてくれ」
今日と同じ流れか。
「わかりました。それでは戻ります」
「ああ。ご苦労だった」
部長がそう言って頷いたので一礼し、部屋から出た。
「報告書かー……」
やっぱりフィリスは書類仕事が苦手っぽい。
「手伝うからさっさと書くわよ。決起会兼歓迎会があるんだから残業は嫌よ」
「アリア、好き」
「はいはい」
俺達は階段を下り、2階の廊下を歩く。
すると、特殊捜査チームから複数の怒鳴り声が聞こえてきた。
「何だ?」
さすがに足を止めて、特殊捜査チームの扉を見る。
「揉めてるって感じじゃないな。何かあったか?」
「事件かしら?」
「さあ? まあ、いいじゃん。ウチらはウチらの仕事」
それもそうだなと思い、チーム室に入ると、席についた。
すると、アリアがお茶の準備をする。
「あ、手伝おう」
「大丈夫。2人は疲れたでしょ。私達でやるから」
アリアがそう言うと、座っていたフィリスが俺達とアリアを見比べてから立ち上がった。
そして、てくてくとお茶コーナーに向かう。
「悪いな」
「いーえ」
アリアとフィリスがお茶を用意してくれ、それぞれのデスクに置いたので一口飲んだ。
「さて、報告書か……」
「あ、レオン、報告書はここね」
アリアが立ち上がり、扉の近くにある棚から紙を取り出した。
「どういうことを書くんだ?」
俺も立ち上がり、アリアのもとに向かうと、紙を見る。
「普通に今日あったことを書くわけ。さっきレオンが部長に報告したことね。具体的に倒した魔物の数なんかも書くわ」
なるほどな。
普通の報告書だ。
「じゃあ、書いていくか」
俺達は席につき、報告書を書き始めた。
俺とギルバードは黙々と書いているのだが、フィリスとアリアは同じデスクで一緒に書いている。
なんか姉妹みたいだなと思った。
まあ、妹っぽいフィリスの方が実は年上なんだが。
「これ、毎日書くのか? 前の騎士団ではこんなものはなかっただろ」
飛んでいるエルが聞いてくる。
「新設された部署だし、成果の確認とかをしたいのだろう。これから改善していくようだし、問題点なんかの確認も含んでいる」
「じゃあ、不満なんかも書いていいわけだ」
「今日に限って言えば、不満はなかったがな。一番心配だった人間関係も良かった」
この3人で良かったって思う。
「おっ、良いこと言うな、レオン」
「照れるね」
「私もリーダーがレオンで良かったわよ。頼りになるし、ちゃんとした人だもの」
なるほど……確かに照れるな。
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