第022話 討伐
俺達はさらに奥に進む。
かなりの頻度で魔物が出てきたのだが、それをギルバードの槍、アリアとフィリスの魔法で倒していった。
3人共、安定感があるし、落ち着いている。
体力も魔力もありそうだし、やはり魔物退治の方が得意そうだと思った。
「しかし、多いな……」
ゴブリンを槍で貫いたギルバードがつぶやいた。
「レオン、こういうケースは何が原因なの?」
アリアが聞いてくる。
「俺もそこまでは詳しくない。魔物退治もするが、やはり戦場や町での活動がメインだったからな」
「そっかー。うーん……」
アリアが悩む。
「こういうケースは2パターンだな」
飛んでいるエルが口を開く。
口はないけど。
「どんなの?」
「1つは単純に数が増えたことで浅いところにも出てくるパターンだ。これは獣でもあるが、エサ不足とかで人里に下りてくるっていうのは定期的にある。もう1つは森の奥に何かがあり、それから逃げてきているパターンだな」
ちょっとわかる。
前世でも熊被害とかあった。
「へー……エルって博識ね。さすがは本」
「まあな。魔法のことだけじゃないんだぜ?」
本に博識って言うのもちょっと変だ。
「となると、このまま魔物を狩りつつ、奥に行ってみるか。アリアとフィリスは魔力はどうだ?」
ギルバードが2人に聞く。
「威力の低い魔法しか使ってないから大丈夫よ」
「うん。このペースなら全然いける」
問題ないか。
「よし、行こう」
俺達は引き続き、ギルバードを先頭に道を進む。
出てくる魔物は近い場合はギルバードが倒し、距離があれば、アリアとフィリスの魔法を使って倒した。
俺は後ろから来る魔物を担当し、この隊列で危なげなく、進んでいった。
「悪くないチームよね。ちゃんと皆が皆、役割をまっとうしているし、バランスが良い」
「だね。私達も前後に戦える人がいるから安心」
「ハンターのパーティーって考えたらかなり稼げそうだぜ」
それは俺も思う。
そういう風にメンバーを集めたのかもしれないが、上手く回っている。
これが今日で初めてなのにすごいことだと思う。
もちろん、3人が明るく、人柄が良いのも大きい。
揉める空気が一切ないのだ。
「でもさー、お互いの実力を確認しようってこともあったのにレオンが全然、わかんない。気が付いたら後ろに魔物の死体があるだけだし」
「それだけで十分に実力があるのはわかるがな」
「レオンが強いのはわかるよ。見ただけで雰囲気があるし、クラークも倒してるんでしょ? でも、見てみたい」
ふむ……
「この人、ヤッバいわよ。部長が引いてたもん」
アリアがちょっと興奮している。
「それを見たい」
「レオン、代わるか?」
ギルバードが聞いてくる。
「そうだな。代わろう」
役割的に俺がアリアやフィリスを守ることも多いだろう。
そうなると、守られる側は守る人間の力を知っておくことは大事だ。
それにより、自分がどう動くかも変わってくるし。
「後衛で気を付けることは?」
前衛と後衛を替えると、ギルバードが聞いてくる。
「全体を見ることと後方警戒だな。シャドウウルフがいたからそこは特に気を付けてくれ」
「了解」
ギルバードなら大丈夫だろうと思い、後ろを任せると、俺を先頭に歩いていく。
すると、何かの気配がしたので右手を上げ、足を止めた。
「また魔物?」
アリアが聞いてくる。
「ああ。だが、ちょっと様子が変だ。来る気配がない」
気配的にウルフだと思うが、こちらを様子見しているような……
「ん?」
「何だ?」
俺とギルバードが反応する。
「どしたの?」
「何かあった?」
女子2人が聞いてくるが……
「いや、気配が消えた。というよりも走って、立ち去った」
「俺もそう感じたな。あっちだ」
ギルバードが右の森を指差した。
「散々、倒したし、逃げたんじゃない? わからせ成功」
「え? 終わり? レオンの活躍は?」
いや……
「逃げたような感じはしなかった」
「レオン、さっきのは偵察だぜ?」
エルが教えてくれる。
「偵察……群れか」
ウルフは狼の魔物だ。
群れてもおかしくない。
「どうするの? 原因っぽいけど」
アリアが聞いてくる。
「行く。ギルバード、2人を頼むぞ」
「任せておけ」
俺達は右の森に入る。
枝や雑草なんかは剣で払い、後ろの3人が歩きやすいようにする。
「枝払いですら剣筋が見えない……」
「ね? すごいわよね」
それは本当にたいしたことじゃない。
それよりも……
「ギルバード、気配を感じるか?」
「何も。さっきまでとは大違いだ」
これは当たりだな。
「森の奥に何かがあり、それから逃げてきているパターンの方だな」
「ああ。間違いなさそうだな」
さらに奥に進んでいく。
すると、複数の魔物の気配がした。
「アリア、フィリス、気を付けろ。本命だ。それも20はいる」
「よーし」
「任せて」
2人が頷いたのを見て、さらに進む。
すると、開けた場所に出た。
そして、そこにはウルフの群れがおり、その中には他のウルフよりも一回りも大きい種もいた。
「ありゃ特別種だぜ?」
特別種とは魔物の中にたまにいる異常個体のことだ。
通常種より強く、ボスのようなもの。
「来るぞ……」
ウルフ達は完全に俺達を視認しており、『グルルル……』と唸っていた。
「ガウッ!」
特別種が吠えた瞬間、ウルフ達が一斉に駆けてきた。
「アリア! フィリス!」
「「アイスニードルッ!!」」
俺の合図で2人が杖を掲げると、三十本近い氷の矢がウルフ達を襲う。
氷の矢で半分ほどは倒れたが、残りは躱して距離を詰めてきた。
そして、一匹のウルフが飛びかかってきたので、剣を一閃させる。
「ギャンッ!」
ウルフは真っ二つになって、落ちると、地面を赤く染めた。
他のウルフがそれを見て、足を止めたので剣を立て、残っているウルフと対峙する。
「来い」
剣を握って構えると、心が冷たくなり、神経が研ぎ澄まされてきた。
動かずにその場でじっとし、ウルフ達を気で圧倒する。
すると、ウルフ達が後ずさりし始めた。
「ガウッ!」
特別種が吠えたのだが、ウルフ達は動かない。
いや、動けないのだ。
賢いウルフは無理だというのがわかっている。
「お前が来い」
特別種に向かってそう言うと、睨んできた。
そして、じわりじわりと前に出てくる。
飛びかかるタイミングを計っているのがわかる。
ちょっと前足を右に動かしたりしながらフェイントをかけようとしているのもわかる。
しかし、こちらはすべて見えているし、動くことはない。
「グゥゥ……!」
特別種の焦りも動揺も伝わってくる。
しかし、まだ攻撃寄りだ。
来るな……
そう思っていると、特別種が上体を屈めた。
「ガッ!」
特別種は一気に駆けてくると、牙を向けて飛びかかってくる。
かなりのスピードだ。
これまでのウルフとは一線を画している。
しかし、俺には何もかも見えているので冷静に一歩踏み込み、特別種を叩き斬った。
「ギャウッ!」
特別種は見るも無残な姿で地面に伏し、息絶えた。
俺はさらに残っているウルフ達を見る。
「キャンッ!」
「クゥン……」
ウルフ達は一斉にバラバラに逃げだした。
それを見て、剣についた血を振り払うと、鞘に納める。
「追わなくていいの?」
アリアが聞いてくる。
「大丈夫だ。ボスを倒され、完全に戦意を失っている。ウルフは賢いからもう人里には来ない」
「特別種を倒せば問題ないぜ。森も落ち着くだろ」
仕事は終わりだな。
「そう。なら良かったわ」
「レオン、すごいね……私、途中からウルフに同情しちゃった」
「特別種、逃げたかっただろうなーって思ったな」
群れのボスは逃げられないから挑んできたな。
「これで十分だろう。お互いの力もわかったと思う」
「ええ。仕事もしたし、完璧ね」
「良い初日だった。何よりも安心できるメンツ」
「ああ。良いと思う。じゃあ、村長さんに報告して帰ろうぜ」
俺達は引き返し、道まで戻った。
そして、出口に向かって歩いていく。
「……レオン、良いだろ?」
エルが耳元で声をかけてきた。
「……ああ。そう思う」
頷くと、エルは少しだけ黙る。
「……頑張んな」
正直、ヴァルテンブルクの騎士団にいた時よりも頑張ろうと思える。
それは仕事内容というより、この3人と仕事ができるからだと強く思った。
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