第021話 戦闘
ギルバードが槍を肩に担ぎ、先行する。
その後ろを杖を持ったアリアとフィリスだ。
俺は一番後ろからその3人を視界に入れつつ、周囲を観察する。
明るく、そこまでうっそうとした森ではないし、嫌な気配も感じない。
道もしっかり管理され、よく人が通っていると思われる。
この森なら強い魔物は出てこないだろう。
「アリア、フィリス、火魔法は避けてくれ」
「燃えちゃうものね。了解」
「さすがにわかってる」
ならいいか。
そう思った瞬間、右の方に気配を感じた。
すると、ギルバードが足を止め、俺が感じた気配の方を見る。
「どうしたの?」
「何かいる?」
アリアとフィリスは気付いていないようだ。
「来るぞ」
そう言うと、草むらががさがさと動き、80センチくらいの二足歩行の犬が現れた。
コボルトである。
「やっていいか?」
ギルバードが余裕そうな感じで聞いてくる。
「やってくれ」
「あいよ」
ギルバードは担いでいる槍を回転させて構える。
すると、コボルトがこちらを見て、襲いかかってきたのだが、一歩前に出た瞬間にギルバードの槍が素早く貫いた。
「ギャンッ!」
コボルトはあっという間に死んだ。
「おー! ギルバード、すごいじゃないの!」
「すごい! すごい!」
アリアとフィリスが拍手する。
確かにすごかった。
速さもすばらしいが、正確性だ。
コボルトの心臓を的確に貫いている。
腕は確かだし、経験もかなりのものだろう。
やはりギルバードに関しては心配はいらないと思う。
「コボルトで褒められてもな……」
ギルバードが槍を払い、苦笑いを浮かべた。
「いや、相手は関係ない。動きを見れば一級品の戦士であることがわかる。強いな」
「どうも。また来るぜ」
ギルバードが道の奥を見る。
確かに何かいる。
まあ、小さな鬼だし、ゴブリンだ。
「多いな。まだ森の浅いところなのに」
「何か異常でもあったかね?」
はて……いや、今はいい。
「アリア、距離があるし、魔法でやってくれないか?」
ゴブリンとは30メートル以上も離れてる。
「おっけー」
アリアが杖をゴブリンに向ける。
すると、ゴブリンがこちらに気付き、走ってきた。
距離があるとはいえ、アリアに焦った様子はない。
「火はダメだから……よし、エアカッター!」
アリアが魔法を使うと、見えない刃が空気を切り裂き、飛んでいった。
すると、一瞬にして、まだ20メートル以上は離れていたゴブリンが両断された。
「すごいな……」
魔法自体は何度も見たことがある。
しかし、この威力は何度見てもすごいと思ってしまう。
どんな武器を使おうともああはならない。
まさしく、未知の力だ。
「そう? まあ、このくらいはね」
アリアが照れながら頭をかく。
「詠唱はいらないのか?」
「杖もあるし、このレベルなら大丈夫。大きい魔法はさすがに詠唱して、魔力を紡がないと無理」
「私もそんな感じ」
詠唱が不要なのは良いな。
詠唱なんて、攻撃してくれと言っているようなものだし。
「わかった。奥に行ってみよう。ギルバード、引き続き、前衛を頼む」
「ん? 良いぞ」
俺達はさらに奥に進んでいく。
「……レオン、どうだ?」
宙を飛んでいるエルが耳元で聞いてきたので歩く速度を緩め、3人と距離を取った。
しかし、3人が俺の動きに気付く様子はない。
「……悪くない。個人としては思うところもあるが、チームで考えたら良いと思う」
「……魔法に詳しい俺が教えてやるが、アリアもフィリスも魔法使いとしての素質は良いぞ。ただ、経験が足りねーな。鍛え方次第だ」
俺は魔法使いのことはわからないから助かる意見だ。
「……わかった」
魔法使いとしては上の方か。
しかし、戦士としてはな……
まあ、当たり前と言えば当たり前なんだが……
ちょっと考えながら歩くスピードを早め、3人に合流する。
すると、またもや気配を感じた。
「来るな。本当に多いぞ」
ギルバードも気配に気付く。
「ウルフだな……フィリス、やれるか?」
20メートル先の草むらが動いているのだ。
「任せて」
フィリスが頷き、杖を構えると、草むらからウルフが飛び出してきた。
そして、そのままこちらに向かって駆けてくる。
「速いぞ」
「大丈夫。アイスニードル」
フィリスが魔法を使うと、杖の先から十数本の氷の矢が飛び出し、ウルフとその周囲を襲う。
ウルフは1本目を躱したのだが、数が多すぎたので2本目は躱せずに命中した。
「キャン!」
さらに動きが止まったウルフに氷の矢が突き刺さっていき、ついには息絶えた。
「オーバーキルじゃない?」
「動きが速い相手には拡散攻撃が一番」
「悪くはないけど、確かにレオンの言うとおりだな。これを街中で使われたらぞっとする」
被害がすごいことになるな。
「わかってる。街中用の魔法もちゃんとあるし、今後はそういうのを増やしていく」
「私もね。さっきのエアカッターも火魔法も危ないもの」
3人が前方のウルフを見ながら話しているので剣を抜き、振り抜いた。
そして、すぐに剣を鞘に納める。
「俺も槍をちょっと考えるかなー? まあ、体術もできるし、そっちでいくかな?」
「こうやって実践をすると良い気付きになるね」
「部長もそんな風に思ったんじゃないかしら? レオン、次はあなた? 私はクラークとの戦いを…………何それ?」
アリアが振り向くと、俺の後ろを凝視する。
「ん?」
「え? ウルフ?」
ギルバードとフィリスも俺の後ろで息絶えている狼の魔物を見た。
「シャドウウルフだ。気配を消すことに長けている。さっき来たから斬った」
「いつの間に……」
「全然、わからなかった」
「レオンが斬ったのもわからなかったぞ。そっちがすげーよ」
3人は前方に注意がいっていたからな。
わからないでもない。
「守るって言っただろ。騎士が剣に誓ったのならそれは絶対だ」
「……レオン、ヴァルテンブルクで彼女が何人いた?」
フィリスが聞いてくる。
「いなかったな」
「嘘だー。かっこつけすぎ」
フィリスが言ったからだろ……
「社交的ではないし、仕事ばっかりだったんだよ」
ということにしたい。
だから仕方がないのだ。
「ふーん……だってさ」
フィリスがアリアを見る。
「私に振らないでよ」
「顔赤いじゃん」
「もう! やめてよー!」
アリア、そればっかりだな。
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