第019話 かっけー
ギルバードに代わり、運転していく。
最初はちょっと怖かったのでゆっくりと進んだが、数分もかからないうちに慣れたので、ある程度のスピードを出す。
「良いじゃん。さすがに慣れるのも早いな」
ギルバードはそう言ってくれるが、正直、慣れるより思い出したという方が正しい。
ほとんど前世の車と変わらないのだ。
むしろ、他の車がないし、道も広いので運転しやすかった。
「街中では見なかったが、さすがに走ってないのか?」
「そりゃ無理だ。死人が何人出るかわからん」
それはそうか。
人も多かったし、歩道と車道なんて概念もなかったから危なすぎる。
「普及率は?」
「軍や警察だけだと思う。貴族でも許可されてないんじゃないか? 詳しくは知らないが、見たことはないな」
公的機関だけっぽいな。
しかし、この発展具合からすると、時間の問題な気がする。
何故ならさっきアリアが話していた列車が主要な都市しか通っていない問題は車で解決できるからだ。
「一応、聞いていいか? アリアはともかく、フィリスは運転できるのか? 結構、高いんだが……」
「できるはできるみたいだぞ。前から見たら生首だけど」
それは運転を嫌がるだろうな。
俺達が話をしていると、前方に集落が見えてきた。
「あれか」
「だろうな。さすがに村には入れないし、門の近くで止めてくれ」
ギルバードにそう言われたので徐々にスピードを落とし、門から10メートルくらい離れたところにある道端の木陰に車を止めた。
「見てるな……」
村は簡易な木製の柵で覆われている程度だが、門もあり、そこに30代くらいの男性が門番をしている。
そんな門番が警戒した様子でこちらを見ているのだ。
「いきなり軍用車で来たからな。さっさと降りようぜ」
エルを持つと、ギルバードと共に車から降りる。
すると、荷台の女子2人も降りてきたので門番のところに向かった。
「失礼。エルトナ村の者かな?」
なるべく警戒させないように明るい感じで声をかける。
自分なりにだが……
「そうだが……あんたは?」
警戒は解けてないようだ。
こういうのは苦手だ。
「王都の治安部だ。新設された部署だから知らないかもしれないが、この村に魔物が出ているので対処してほしいという要請があったから来た。村長殿はおられるか?」
「あ、魔物の方か。俺達が何かしたのかと思ったぜ。村長な。呼んでくるからちょっと待っててくれ」
門番はほっとした様子で頷くと、村の中に走っていった。
「今回はギルバードが話してくれた方が良かったかもな。俺では警戒させる」
「あんまり変わらないと思うぞ」
「そうね。それにあれでもマシな方だと思うわ。私達、私服だし」
確かに制服だったらもっと警戒してたかもな。
「アドバイスすると、レオンは変に何かをしない方が良いよ。普通にしていれば真面目な騎士って感じがするし」
フィリスがアドバイスをくれる。
貴族だし、社交には強いのかもしれない。
「そうか?」
「村の人はあの車で来た時点で警戒する。それで女子供の私達や軽薄そうなギルバードが話しても逆効果だよ。だったら正当なレオンが良い」
まあ、正直に言えば、確かに3人は軍人っぽくないと思うな。
「わかった。村長とは俺が話す」
「そうして」
俺達が待っていると、さっきの門番が50代くらいの白髪交じりの男性を連れて戻ってきた。
「村長殿ですか?」
「はい。王都からいらしたと聞きました。治安部とか……」
「ええ。新設された部署です。今回は魔物退治に参りました」
「そうですか。ありがたいことですが、軍の方が動くのは珍しいですね。いつもはハンターなのですが」
口には出せないが、どうしても優先順位というのはある。
小さな農村よりも大きな町での事件が優先されるものだし、人員問題もあるから外注で処理できるならそうすることが多いのだ。
「人々の生活を守るのが軍人です。人員が限られておりますので民間のハンターにお願いすることが多いですが、国のため、何よりも人々の安寧のために尽力致します」
正確に言うと、軍人ではないが、否定をするところでもない。
まずは村の人を安心させることが大事だ。
「ご立派な方ですな」
「いえ、皆、同じ気持ちで職務に当たっておりますよ。それで魔物とは?」
本題に入る。
「ええ。ご覧のように我が村は柵も弱く、魔物や獣が村に侵入してくるというのはよく起きます。それでもゴブリンやコボルトといった弱い魔物が多いので私達でも対処できるのですが、最近は数が多く、さらにはウルフも来ます。それで王都に要請をしたのです」
ゴブリンは小さな鬼の魔物であり、コボルトは二足歩行の犬の魔物だ。
どちらもそこまで強くなく、成人男性なら倒せる。
しかし、ウルフは狼の魔物であり、危険だ。
「私達にお任せください。すぐに対処します。ウルフはどこから来ますか?」
「村の南東の方です。あそこの森から来ます」
村長さんが左後ろを見る。
確かに村の向こうに森が見える。
「わかりました。ウルフは賢い魔物です。一度襲い、成功したら味を占めてまた来ます。ですが、賢いがゆえに痛い目を見ればもう来ません。私達が退治し、わからせますのでご安心ください」
そう言って、左手で自分の胸を叩いた。
「ありがとうございます……あなたのような方がいればこの国も安泰ですな」
3日前までは敵国でしたけど……
「では、早速、行って参ります……行こうか」
俺達は村沿いを進み、南東の森に向かった。
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