第018話 後ろでも似たようなことで盛り上がっている
車は門から離れ、街道を進んでいく。
そこまでスピードは出ていないし、揺れも少ない。
「快適だな」
「ギルバード、もうちょっとスピードが出ないのか?」
エルがギルバードに聞く。
「出せるが、段差があったら後ろの女子2人が落ちるな」
確かにな。
というか、危ない。
前世だったら警察に捕まる。
まあ、そもそも免許もないみたいだが。
「ギルバード、安全運転で頼む」
「ああ」
ギルバードが頷く。
「お前さー、受付のジェーンと付き合ってるのか?」
これまでずっと黙っていたエルがよくしゃべる。
結構、おしゃべりな本なのに黙っていた鬱憤を晴らすかのようだ。
「んー? まあな」
ギルバードがあっさり頷いた。
「やっぱりか。俺もレオンも気付いたし、フィリスは知っているみたいだな。アリアは知らないっぽいが」
「フィリスとは近所だから何回も顔を合わせているからな。というか、別に隠してない。アリアが鈍いだけ。それにしても、レオンも気付いたんだな。アリア側の人間かと思っていた」
失礼とは思わないな。
俺もそう思うし。
「職業病かな……人をよく観察するんだ」
会ったらその人がどういう人間か、危険度はあるかなどをよく見るようにしている。
「警邏でもそんな感じだったな」
「そういうことだ」
前世と比べると、遥かに物騒な世界だ。
やりすぎるくらいがちょうどいい。
「いつからそういう関係なんだ?」
エルはよく聞くなー。
「下世話な本だな」
「暇なんだ。聞かせろ。女子連中も聞いてないだろ」
窓を閉めているので声は漏れない。
実際、後ろではアリアとフィリスが盛り上がっているように見えるが、声はまったく聞こえないのだ。
「別になー……王都に来て、暇してたんだが、散歩してたら良い女が歩いていたんだよ。それで声をかけただけだ」
それ、ナンパでは?
「それだけか?」
「飯食って、色々話したな。それで」
へ、へー……ギルバードって積極的なんだな。
「それで向こうの家に転がり込んでいるわけだ」
「あー、フィリスのヒモ発言か。俺も稼いでいるんだぜ?」
それはわかる。
「お前はモテそうだな。ウチの30歳にレクチャーしてくれや」
こっちに飛び火してきた……
「いや、レオンはモテるだろ。騎士様じゃん」
「それがそうでもないんだな。奥手だし、そもそも社交的じゃない」
それはそう。
「ふーん……まあ、真面目っていう感じはするな。レオンはアリアとフィリスだったらどっちが良いんだ?」
「アリア……いや、あまりそういう話をしないし、同僚をそういう目では見ないんだ」
同僚と言えるジェーンとそういう関係のギルバードに言うのもなんだが……
「即答しておいて何言ってんだ?」
「こういう男だ」
どういう男だよ。
「ふーん……アリアは悪くないと思うがな。相性が良さそう」
「そうか?」
いや、他意はない。
「ちょっと抜けてるところがあるが、アリアも根本的には真面目だからな。それに好感度は高そうだし、いけそうだぞ」
へ、へー……
「俺はあまりそういうのを考えたことがないんだ」
「仕事一筋ってやつか?」
「そんなところだ」
それでクビなんだから笑えない。
「真面目だねー。もうちょっと気楽に生きろよ」
「そうだぜ? ギルバードは良いことを言うな」
まあ、ギルバードはそんな感じだ。
「これからはそうしようと思っている。違う環境になったし、エルにももう少し、欲を出して、自分の好きなように生きるように言われたしな」
「良いと思うぞ。俺と楽しいところでも行くか? 娼館とは別のお姉ちゃんと飲めるところ。そういう健全な店も多いんだぜ?」
お姉ちゃん……
「ジェーンは良いのか?」
「良くはねーけど、付き合いだよ、付き合い」
お姉ちゃんと飲む……初対面でいったい何を話したら良いんだろう?
「遠慮しとく……普通に飲みに行かないか?」
「それでも良いな。おっ、分かれ道だ。一旦、止まるぞ」
ギルバードが言うように斜め右と左に進む分かれ道と看板が見えた。
その分かれ道の手前まで行くと、車が止まったのでギルバードと共に降りる。
「右がエルトナ村で左がフォードの町か」
「どっちも知らないんだよな。北の方ならわかるんだが」
ギルバードは北部の出身だったな。
「エルトナ村は普通の農村ね。フォードはそこそこ大きいわよ。ちょっと遠いけど」
荷台にいるアリアが教えてくれる。
「エルトナ村はここからどのくらいだ?」
「これまでのスピードなら10分程度で着くと思うわよ。そんなに遠くないし」
すぐだな。
確かにこれなら午後からでも十分な時間がある。
「レオン、ちょっと運転してみろよ」
ギルバードが勧めてくる。
「そうだな。ちょっとやってみたい」
興味もあるし、何十年ぶりの運転だ。
「スピードは出さないでね」
「ハンドルを握ったら人が変わったりして」
「あるかも……レオン、剣を抜いたら雰囲気が変わったし」
さすがにスピード狂ではなかったし、それはない。
「大丈夫だよ。安全運転でいく」
「ま、レオンなら大丈夫か」
「騎士様だもんね」
騎士は関係ないなと思いながら運転席の方に行き、車に乗り込む。
ギルバードも助手席に乗った。
「な? 好感度は高そうだろ」
うーむ……
「俺、経験もないし、詳しくもないんだが、好感度が高いと逆にマズくないか? 下心が見えたら引きそうなイメージがある」
元々、悪い奴が悪いことをするより、イメージの良い人間が悪いことをする方が反発は大きい気がする。
「大丈夫だよ。別に下心は悪いことじゃない。それに女は割り切る。建前さえあれば良いんだ。あとは流れ」
ふーむ……わからん。
ただ、ギルバードはすごいんだなとだけ思った。
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