第017話 戦車があったらヤバかったな……
昼食を終えると、広場をあとにし、東の通りを進む。
やはり人が多いが、特にトラブルはなく、警邏を行った。
そして、正面に駅が見えてくる。
「あれが東の駅ね。そこからさらに東の町に行ける」
アリアが教えてくれる。
「エルトナ村は?」
「そっち方面には行けないわね。エルトナ村は南東だから街道を進むことになるわ。実はこれもウチの国が抱える問題の一つ。主要な都市は列車が通っているけど、それ以外は不便で住民の不満が大きいわね。でも、列車を通すってかなりのお金がかかるから難しいところ」
急速な発展は貧富の差を生む。
この国はそうなのかもな。
「となると、歩きか? 馬か?」
どれくらい離れてるのだろうか?
「車じゃない?」
「さすがに用意してくれるだろ」
「運転、好きじゃないんだよね」
この国には車があるのか……
いや、列車があるレベルの技術力ならあってもおかしくないか。
「皆は運転できるのか?」
「昔、乗ったことがあるな」
「研修でやった」
「右に同じ」
俺も何十年も前だが、免許は持っていたし、普通に乗れたが……今はどうだろう?
それに前世の車とは仕組みが違うのかもしれない。
「俺はその辺の研修を受けてないからな……」
本当に昨日の今日だ。
「そんなに難しいものじゃないぞ」
うーむ……
「まあ、東門に行ってみよう」
俺達は駅を右に曲がり、歩いていく。
すると、正面に門が見えてきたのだが、これまでとは雰囲気が違い、兵が多い。
さらには武器を持った民間人の姿も見える。
魔物退治を生業とするハンターである。
「えーっと……あ、ちょっといい?」
アリアが歩いていた兵に声をかけた。
「ん? 何だ?」
兵が足を止めて、俺達を見る。
「私ら、治安部の魔法対策チームなんだけど、車を貸してくれない?」
「あー、はいはい。アーロン部長に聞いてる。外に用意してるから使ってくれ。終わったらそのまま置いておいてくれればいいから」
話を通しておいてくれたのはありがたいが、そういうことは事前に言ってほしかったな……あ、いや、この国では車が前提なのかもしれない。
となると、慣れるにはまだ時間がかかりそうだ。
「どうも。エルトナ村の魔物退治って聞いてるけど、何か知ってる?」
「魔物が増えたって話だ。民間に発注しようかと思ったらアーロン部長が手を上げたって話だな。まあ、頑張れ」
兵はそう言って、歩いていった。
「たいした仕事ではなさそうだな」
「ただの魔物退治でしょ。余裕、余裕」
「こら。油断しないの」
皆、魔物退治の経験はありそうだな。
逆に警邏よりもこっちの方が安全かもしれない。
歩いていくと、門番の兵士に止められることはなく、門を抜ける。
すると、広大な平野が広がっており、遠くには森や山が見えた。
左の方に列車が走る線路も見えるし、右の方には街道も見える。
さっきまで都会の街並みだったのに一転して、自然だ。
「へー……なんか良いな」
「この辺はヴァルテンブルクと変わんねーな」
住民がいなくなったのでエルが飛ぶ。
まあ、門番の兵士が驚いているが。
「自然はそうだろうな。ギルバード、それが車か?」
門の近くには茶色の迷彩色をしたトラックが置かれていた。
大きさは一般的な乗用車より一回り大きく、見た目は装甲車に近い。
ただ、荷台があるのだが、代わりに運転席と助手席しかないように見える。
「ああ。これから乗ることも多いだろうし、運転の仕方を教える。助手席に乗れよ」
ギルバードがそう言うと、アリアとフィリスが荷台に乗り込んだ。
「運転、よろしくー」
「お願い」
2人は腰かけ、運転席の方に背を預ける。
「見張りは頼むぜ」
ギルバードがそう言って、運転席の方に回ったので俺とエルも助手席の方に向かう。
そして、乗り込んだのだが、思ったより車高が高く、見晴らしは良い。
「へー……こういう感じか」
「悪くはねーな。あとはスピードだ」
どのくらい出るんだろうか?
「レオン、車は初めてか?」
ギルバードが聞いてきたが、どう言おうか……
「初めてだが、存在は知ってる」
「へー……お前って魔法関係にも詳しいよな」
「好きだからな」
これは本当。
「ヴァルテンブルクの騎士だから毛嫌いしているかと思った」
そういう人間も少なからずいるのは確かだ。
「俺は魔法使いになりたかったんだよ」
「なるほどね。そりゃこの国の話にも乗るわな」
実際、そこも大きかった。
金だけじゃないのだ。
「ああ。来て良かったな」
「それは良かった。じゃあ、車の運転について軽く説明するぞ。まずはスイッチを押し、起動させる」
ギルバードがそう言って、スイッチを押すと、エンジンがかかり、車が振動し始めた。
「それはわかる」
「ああ。あとはこのハンドルで方向を操作し、右のペダルを踏めば進む。止まりたい時は左のペダルだな。あと後ろに下がる機能もあるからそれはこのスイッチだ」
ふむふむ。
ほぼ俺が知っている車だな。
「それなら運転できそうだな」
「ホントか? じゃあ、途中で代わろう」
「それはいいが、村の場所を知らんな」
「俺もだ……おーい、アリア。エルトナ村ってどこだ?」
ギルバードが後ろの小窓を開けて、アリアに聞く。
「そこの街道を進んでいけばいいわよ。途中で分かれ道があるけど、そこを右。まあ、看板があるからわかると思う」
「了解。じゃあ、出発だ」
ギルバードがハンドルを回しながらアクセルを踏むと、車が動き始めた。
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