第016話 チーム
商業街を見ながら警邏をしていく。
すると、店の前で言い合っている男性2人がいた。
「ふざけんな! この前も言ったじゃねーか!」
「聞いてねーっての」
結構な声量であり、周りの人も遠巻きに見ていた。
「あれはどうするんだ?」
ギルバードが聞いてくる。
「当然、止める。俺が行こう」
そう言って、2人に近づく。
「てめーはいつも……チッ」
怒鳴っている男が俺に気付き、舌打ちをした。
それを見て、もう1人の男も俺に視線を移し、嫌な顔をする。
「何をしている?」
「うるせーよ。関係ねーだろ」
男が拳を握ったのでそれをじーっと見る。
「関係あるから聞いている。トラブルか? 2人では冷静に話し合いをできないだろうし、署で聞こう」
「べ、別に揉めてるわけじゃねーよ。ちょっと熱くなっただけだ」
男が拳を開いた。
反射的に握っただけで暴力を振るう気はないことがわかる。
「次は冷静に話し合え」
「わ、わかったよ」
男達が路地に入っていき、姿を消したので3人のもとに戻る。
「捕まえなくてもいいのか?」
「何の罪で? さすがに街中で大声を出しただけで捕まる法はこの国にもないだろ」
「でも、殴る気配があったぜ?」
それがわかるか。
やはりギルバードは荒事にも慣れてるな。
「拳を握っただけ。あれを上げたら考えたが、それだけなら問題ない」
「多分、レオンだから上げなかったんだぜ?」
「私達なら殴られてたかな?」
「その前に魔法で拘束だけど、行動は起こすかもね」
起こしてほしくないんだがな。
「ギルバード、フィリス、アリア。犯罪者を捕まえるのは確かに大事な仕事だが、犯罪者を出さないことはもっと優先される。相手に行動を起こさせないことが大事なんだ。警察や軍隊が犯罪を助長してはいけない」
まあ、これに関してはヴァルテンブルクはあまり言えないがな。
騎士団も治安維持隊も軍も皆、血の気は多かったし。
「ふーん……この人を引っ張ってきたルーファスは英断だったね」
「ね? ホント、騎士様」
騎士様ってよく言われるが、そんな物語に出てくるようなかっこいいものじゃないんだがな。
「行こう」
俺達はこの場を離れ、さらに通りを歩いていく。
商業街は色んな店があったし、アリアに丸を描いてもらった本屋もあり、休みの日にも行こうと思った。
さらに進んでいくと、飲食の店が増えてくる。
そして、右に入る通りの前で立ち止まった。
その通りは異様な雰囲気がある。
「わかるか? そこを行けば歓楽街だ」
ギルバードが教えてくれる。
「ああ。何度も感じた嫌な気配だ」
まだ昼間なので人通りは少ないが、歓楽街特有の欲望と闇を感じる。
全体的にどよーんとしている感じだ。
「嫌なんか? 男の夢だぜ?」
「嫌ねー」
「まあまあ。お母様も言ってたけど、それは仕方がないこと」
お母様……苦労してるのかな?
「ヴァルテンブルクの王都には大陸最大の歓楽街がある。確かに楽しそうにしている者も多いし、賑わっている。一方で犯罪の温床でもあった」
「ま、わかるな」
「色んな利権が絡み、権力者もそれに噛んだりしていた。そのおかげで取り締まろうにも動きを制限された。暴力、薬、金……良い思い出はない」
本当に大変だった。
まだ戦場の方があっさりしている。
「ヴァルテンブルクねー……俺も聞いたことはあるが、行ったことはないな」
「いや……すまん。関係のない話だった。ここも何かあるだろうが、ひとまずは置いておこう」
ここはアルケイン王国。
ヴァルテンブルクはもう戻らない国だし、忘れよう。
「それが良いかもな。行こうぜ」
「ああ」
さらに歩いていくと、繁華街も抜け、広場に出た。
広場はかなり広く、真ん中に噴水がある。
多くの人がおり、屋台なんかの出店も多い。
ベンチに腰かけて談笑している人や飲食をしている人が楽しそうにしていた。
さっきとは違い、かなり明るく、平和な感じだ。
「ここが街の中央広場。待ち合わせとかに使う場所ね」
街の中央だからだろうな。
繫華街や商業街にも行けるから利便性が良い。
確かに待ち合わせるならここにする。
「なあ、もう昼になるんじゃね? あとは西の通りを進んで街の外だし、ここら辺で昼食にしようや」
「賛成」
噴水のところには時計があるのだが、今は11時半だ。
「俺とアリアは弁当があるな」
「そうね」
「チビ、買いに行こうぜ」
「そだね、ヒモ。騎士様とおっちょこちょいは座れるところを確保しておいて」
ギルバードとフィリスが屋台の方に行く。
「あの2人はいつもあんな感じか?」
「うん。悪口は流して。別に仲が悪いわけじゃないから」
わかるな。
「むしろ、仲が良いんだろうなって感じがする。アリアもだが、気心が知れているというか、良い意味でお互いに遠慮がない」
正直、羨ましいと思う。
「楽で良いじゃないの」
「そうだな。良いチームだと思う」
「あなたもね」
そう言ってもらえると嬉しいな。
俺とアリアは空いているベンチに腰かける。
すると、ギルバードとフィリスが戻ってきて、俺とアリアの左右に腰かけた。
そして、4人で並んで昼食を食べる。
「2人はいつも昼食はどうしてるんだ?」
「出前」
「便利」
そういうのもあるのか。
「栄養が偏るわよ?」
「だからたまにアリアの家で食べてる」
「俺は夕食が充実している」
だいたいこの2人の生活もわかってきたな。
「ギルバードって自炊するの? 料理はできないって言ってなかった?」
作ってくれる受付嬢がいる。
「できなくても何とかなるものだ」
「ふーん……謎ねー」
わかってないのはアリアだけか。
知ったらどういう反応をするんだろう?
「ってかさ、レオンとアリア、同じ弁当箱で同じ料理じゃん。作ってる人が同じだからわかるんだけど、夫婦みたい」
「ホントな」
弁当を受け取った時に同じ籠かとは思ったな。
「ウチを利用している人達は皆、そうよ」
「実は2人の弁当だけはアリアが作ったとかない? 指、ケガしてない? ラブの匂い?」
「ご期待に沿えないわね。普通に寝てた」
だったな。
眠そうにしてたし。
「そういやさ、今夜はどうする? 魔法対策チームが始動したわけだし、決起会とレオンの歓迎会でもやるか?」
歓迎会……
「おっ、良いわね」
「ナイスアイディア」
女子2人も乗り気のようだ。
「レオンはどうだ?」
「あ、いや……そうだな。良いと思う」
昔、そういうのはいいですって答えたことがある。
でも、今はそうならなかった。
「じゃあ、決まりな。店は? アリアの家か?」
「ウチじゃ日常よ。別のところが良い」
「そだね。西駅の近くに美味しい店があるよ? そこにしよう」
正直、飲みの場は得意じゃない。
一人で飲み食いする方が多いし、上手くしゃべれず、気を使うことが多かったからだ。
でも、このメンツならそこまで気にすることはないかもなと思った。
またもや、転職して良かったなと思えた。
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