第014話 意外と敏いレオン
「ふーむ……」
部長が退室すると、もう一度、書類を確認する。
すると、ギルバードが覗いてきた。
「マジで警邏とエルトナ村の魔物退治ってあるな」
フィリスがこちらに来て、背伸びして書類を覗こうとしてきたので見やすいように下ろす。
「ありがと。ボーナスは?」
フィリスが礼を言い、ギルバードに聞く。
「1万だと。まあ、内容から考えたら悪くないな」
「警邏にボーナスは出ないだろうし、魔物退治分か。魔物って何だろ? ゴブリン?」
「ゴブリンならこっちに回ってこないでしょ」
アリアもやってきた。
「すまん。ボーナスって何だ?」
確かに1万ロットとは書いてあるが。
「ん? レオン、仕事のことを聞いてないの?」
フィリスが首を傾げる。
「詳しくは聞いてない」
「転職する際は聞くべきだよ。えーっとね、私達は基本給とは別に歩合があるんだよ。要は働けば働くほど給料が増える」
あー……
「それは聞いたかも。ルーファスからもらった条件に書いてあったな」
50万だけに注目がいっていた。
前職と変わらない値段というのが嬉しかったのだ。
「それがこれ。今回の仕事を達成すれば、今月の給料は基本給に1万プラスされるってこと」
確かに歩合だな。
騎士団でも似たような夜勤手当て、危険手当てはあったが、こんなにダイレクトに値段を書いてあるということはなかった。
「ちょっとやる気が上がるな」
「俺はこういうのが良いって思ったから話を受けたな」
「私も」
「私はそこまで考えなかったけど、良いとは思ったわね」
俺も良いと思う。
モチベーションが違う。
「ボーナスについてはわかった。エルトナ村は?」
「俺も知らないな」
ギルバードも知らないらしい。
知名度の低い村なのか?
「エルトナ村は東ね。列車で東の駅に行けば街から出られるけど……」
東ってことはここの逆側ってことか。
「警邏のルートの指定がある。ここから南に行き、住宅街。そこから街の中央に行き、東の繁華街や商業街だな。このルートなら列車を使わなくてもいいだろう」
「ルートの指定まであるんだ……あ、ホントだ」
アリアがフィリスをどかし、書類を見る。
「他のチームや警察も警邏はするし、ルートがダブらないようにしているんじゃないか? 前の騎士団でもそういうのはあった」
王都は広いから分担して、効率良くやるんだ。
「なるほどね。まあ、スラムに行かなくて良かったわ」
「まったくね」
部長がその辺を考慮したんだろうな。
「ちなみに聞くんだが、皆は警邏をしたことがあるか?」
「ないな」
「ない」
「ないわね」
うん……新人に毛が生えた集まりだったな。
「わかった。今日は歩くだけにしよう」
案内をしてもらえればいいや。
「散歩じゃん」
フィリスがツッコむ。
「それでいい。軍や警察が街を歩くことに意味があるんだ」
そう言って、腕章を指差した。
もちろん、3人共、左腕に治安部の腕章を付けている。
「抑止力?」
「ああ。軍や警察の前で犯罪をする奴はいないし、街の人も安心する」
「なるほど。散歩だけで仕事か」
散歩って言うのはやめないかな?
「逆に襲ってくるとかないの?」
アリアが聞いてくる。
「ないこともない。だが、その場合は斬るか捕らえるだけだ。問題ない」
「あなたははっきり言えるわよね……」
「私達は急に来られると弱いよ?」
これだけ発展した魔導国家アルケインと旧時代と言っていいヴァルテンブルクの力がほぼ互角なのはこの辺だ。
魔法使いは魔法が強力ではあるが、戦士じゃないから戦場では弱いし、士気も低い。
一方でヴァルテンブルクの戦士は死を恐れない猛者が揃っている。
「そこは俺とギルバードが守るから安心してくれ。このチームはそういうバランスも考えられている」
ギルバードも接近戦には強いはずだ。
「ギルバードはともかく、レオンは騎士だしね。守ってくれそう」
「指一本触れさせないどころか、近づきもさせないことを約束しよう。俺の剣に守れなかったものはない。それが騎士の誇りだ」
これは断言できる。
「ウチのリーダー、すんごいかっこよくない?」
「騎士様だもの」
「一度でいいから言ってみたいもんだな」
変かな?
本当にこのままで良いんだろうか?
「そういうわけだから仕事を始めよう。俺も街を知りたい」
「そうね。じゃあ、案内するわ。行きましょう」
俺達は準備をすると、部屋を出る。
そして、階段を下りると、受付のジェーンのもとに向かった。
「ジェーン、警邏に出てくる。午後からはエルトナ村だから帰りは夕方になると思う」
「わかりました。気を付けてくださいね」
「ああ」
頷くと、意気揚々と歩いていくアリアを追う。
ちらっと後ろを見ると、ギルバードがジェーンに手を上げていたのだが、やっぱりジェーンも笑顔で小さく手を振っていた。
それを見たあとに視線を外すと、フィリスと目が合う。
「レオンの想像通り」
フィリスがそう言って、小指を立てた。
「ヒモ男ってのは?」
「それも想像通り」
そうか……
俺の想像ではギルバードとジェーンは同じ早い時間に出勤している。
住んでいるところが同じなのかなと思ったのだ。
さらにヒモ男という言葉でジェーンの家に転がり込んでいるのではと思った。
「何してんのー? 行くわよー」
玄関で立ち止まっているアリアが急かしてくる。
「ああ。行く」
「ついでにアリアだけが気付いてないのも想像通り」
そうかい。
本当に想像通りだなと思いながら部署を出た。
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