第012話 同僚
治安部の部署にやってくると、中に入る。
すると、受付にいるジェーンと話す長い茶髪の男性がいた。
男性は背が高く、カウンターに肘をついて、身を乗り出しながらジェーンと親しげに話している。
「あ、ギルバード! またジェーンにちょっかいをかけてる!」
アリアがそう言うと、ジェーンとギルバードと呼ばれた男性がこちらを見た。
「アリアちゃん、おはよう」
「よう、アリア。今日も可愛いな」
「うっさい。あなた、仕事中でしょ。それにジェーンに迷惑よ」
「はは。それでそいつは?」
ギルバードが軽く流し、俺を見てくる。
「レオン。ウチのリーダー」
「ああ。なるほどな。レオン、俺は魔法対策チームのギルバード・ウェールズだ。よろしくな」
「レオン・ヘルフェリヒだ」
ギルバードと握手をする。
強い手だし、使える人間だと思う。
だが、少し特殊だ。
「へー……強そうだな」
ギルバードが俺の肩や腰を叩いて、確認してきた。
「レオンは強いわよ。すごいんだから」
アリアが胸を張る。
「……何? もう懐いたのか?」
「犬みたいに言わないで」
タイプ的には少なくとも、猫ではないかな。
「まあいいや。とにかく、よろしくな。本当にヴァルテンブルクの騎士様か?」
「一応は」
この話題になると、アリアが俯くんだよな……
「そうかい。何にせよ、頼りにしてるぜ。じゃあ、チーム室に行くか。フィリスももう来てるぜ? 後ろを通っていたし」
「そうなの? こんなに早く来るなんて珍しいわね」
早くって言っても8時15分だ。
始業が8時半なら別に早いってことはないと思う。
「今日から始動だろ? 気合が入ってるんじゃないか?」
「それなら良いわね。よし、行きましょう」
アリアがそう言って、階段の方に向かうと、ギルバードがジェーンに手を振る。
すると、ジェーンが微笑み、小さく手を振り返した。
「……間違ってるのはアリアだぜ?」
黙ってなさい。
さすがに俺もわかった。
俺達は階段を上がると、通路を進み、奥の魔法対策チームのチーム室に入る。
すると、左手前のデスクにつく銀髪の女の子がいた。
女の子は品のある姿勢で座っており、入ってきた俺達をぼーっと見てくる。
座っていても、背が高くなく、小柄な女性だとわかった。
「フィリス、おはよう」
「おはよ」
「おはよう。お揃いで。気合を入れて、1時間前にやってきた私がバカみたい」
1時間前……
すごいなと思ったが、それ以上に気になることがあった。
さっきギルバードは自分の後ろをフィリスが通っていったと言った。
つまりギルバードはさらにそれより前に来たことになる。
そして、ジェーンと親しげに……あっ、受付業務は始業が早い……これ以上はやめよ。
「下で会ったのよ。それに早く来ることは良いことじゃないの」
「明日からは来ない」
「頑張りなさい」
「努力はする……その人がウチのリーダー?」
フィリスが俺を見てくる。
「ええ。そうよ。レオン」
「レオン・ヘルフェリヒだ」
「ふむふむ……私はフィリス・フォン・フィンドレイ」
ん?
「フォン?」
「フォン。貴族である。頭が高いぞ」
そう言われたのでフィリスのもとに向かうと、片膝をついた。
「失礼しました」
貴族令嬢がいるとは思わなかった……
「え? あ、うん……あれ?」
フィリスが困惑したようにアリアを見る。
「フィリス、その人、騎士様だからその冗談は通じないわよ」
「ご、ごめん。嘘だから……あ、いや、嘘じゃないけど、そんなに偉くないから。大丈夫だから」
フィリスが慌てて立ち上がり、俺の脇を持って、立たせようとする。
たいした力じゃなかったが、拒否することもないのでそのまま立ち上がった。
立って、フィリスを見ると、やはり小さく、150センチあるだろうかと思った。
「貴族のご令嬢では?」
「えーっと、令嬢と言われればそうなんだけど、ヴァルテンブルクと違って、貴族はそんなに偉くないの。ウチの国は王も貴族もいるけど、議会制民主主義なの」
ふーむ……ヴァルテンブルクの貴族と同じように考えないようにしろってことか。
「普通に接すればよろしいと?」
「そう、そう。敬語もやめて」
本人がそう言っているならそうするか。
「この国の政治はわからないが、普通に貴族も働くって感じか?」
「そう思ってくれていい。まあ、ウチの父は政治家だけど」
ほう?
「レオン、気にするなってことだよ。その辺は複雑なんだ」
ギルバードが肩を組んでくる。
「まあ、わかった。フィリス、よろしく」
「うん、よろしく」
フィリスと手を握る。
小さな手であり、やはり武器を使える人間じゃない。
まあ、魔法使いと聞いているし、実際、デスクには杖が立てかけられている。
「すまない。よく冗談が通じないとは言われる」
「こっちこそごめんね。あ、お茶を淹れるから座って」
フィリスがお茶コーナーに向かった。
「あ、私も手伝う」
アリアもついていく。
「おっちょこちょいはいらない。座ってて」
「あなたも人のこと言えないでしょうが」
2人はそう言いながらお茶の準備をし始めたのでギルバードと共に席につく。
すると、ギルバードが椅子ごと俺のそばに来て、肩を組んできた。
「ジェーンに聞いたんだけど、クラークをやったってマジ?」
「昨日、模擬試合をしたな。まあ、勝ったのはそうだ」
「すげーな。クラークって生意気だけど、実力あるエリートだぜ?」
強いのはそうだった。
「ギルバードでも勝てそうだがな」
「へー……」
ギルバードの声が少し冷たくなる。
少し警戒の目にもなっている。
「研修に行っていたと聞いたが、どんな内容だ? 俺はその研修を受けてないんだが」
「たいした研修じゃねーよ。警察や軍の規律や行動、倫理なんかだ。騎士のあんたは受けなくてもいいだろ」
大事なことだと思うんだが……
「ギルバードは26歳だったか? これまでは何を?」
「ふらふらとしてただけだぜ。そういやレオンは何歳なんだよ?」
ふらふら、か……だいたいわかった。
「30歳だな」
「へー……もっと若く見えるぜ。20代かと思った」
「ちょっと前までは20代だからな」
「ははっ。違いない」
ギルバードはかなり陽気な人間のようだ。
「30歳だって。知ってた?」
「ルーファスに聞いた」
「年上だよ? アリア、好きじゃん。やったね」
「もう! やめてよー!」
向こうは向こうで盛り上がっている。
仲が良いようだ。
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