表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/109

第八十七話 ぐうたら三男、黒幕の臭いを嗅ぎつける

「……ドルーゴ」


 箱の中の子供は震えていた。


 まだ幼い。


 十歳にも満たないだろう。


 顔色も悪い。


「大丈夫か?」


 レイがしゃがみ込む。


 子供は小さく頷いた。


「う、うん……」


「怪我は?」


「ない……と、おもう」


 隣の子供も怯えながらレイを見ている。


 エミリーはすぐに水筒を取り出した。


「ゆっくり飲んでください」


 優しい声だった。


 子供たちは少しだけ落ち着きを取り戻す。


     ◇


「どこから攫われた?」


 レイが静かに聞く。


「……市場の近く」


「夜?」


「うん……」


 やはりだ。


 外縁地区周辺で人攫いが続いている。


 しかも。


 スラム街の子供を狙っている。


 レイの機嫌がどんどん悪くなった。


     ◇


「ドルーゴ様」


 エミリーが小声で呼ぶ。


 レイも気付いていた。


 荷箱の内部。


 底面に刻まれた魔術式。


「これ……」


「輸送用術式ですね」


 しかも。


 かなり嫌な構造だった。


 黒い魔素が染み込んでいる。


 侵食反応あり。


 レイは術式を見つめる。


「……にほんご混ざってるな」


 エミリーの目が細まる。


「古代魔語ですか?」


「断片だけ」


 完全な術式ではない。


 だが。


 以前の地下研究施設と類似している。


 誰かが古代文明術式を無理矢理再現しているのだ。


     ◇


「アリア」


「解析中」


 アリアが荷箱へ触れる。


 淡い蒼光。


 しばらくして。


「侵食補助術式確認」


「やっぱりか」


「未到達地帯系統術式と類似」


 レイは盛大に嫌そうな顔になった。


 どこまで繋がっているのか。


 本当に面倒だ。


     ◇


「ドルーゴ様」


 エミリーが周囲を警戒する。


「ここ、長居しない方が」


「だな」


 倒れた男たちもいつ起きるか分からない。


 しかも。


 荷物の搬送先があるなら、仲間が来る可能性も高い。


「子供たち連れて一旦戻るか」


「はい」


     ◇


 その時だった。


 アリアが空を見上げる。


「……反応増加」


「は?」


「上方」


 次の瞬間。


 ゾワリ、と空気が変わった。


 レイの目が細まる。


 屋根の上。


 黒いフード姿が立っていた。


 顔は見えない。


 だが。


 異様な圧だけが伝わる。


「……お前」


 レイが低く呟く。


 黒フードの男は静かにこちらを見下ろしていた。


 そして。


「継承者」


 聞き覚えのある声。


 レイの顔が露骨に歪む。


「またお前かよ……」


 仮面の男だった。


     ◇


 ただし以前とは違う。


 今回は仮面を付けていない。


 代わりに。


 顔半分が侵食結晶へ変質していた。


 人間と侵食存在の中間。


 そんな異様な姿だった。


「侵食進んでんな」


「適応だ」


「気持ち悪」


 即答だった。


 エミリーが若干引いている。


 だが仮面の男は気にしない。


     ◇


「継承者」


 男は再び言う。


「何故抵抗する」


「平和にダラダラしたいから」


「……」


 一瞬。


 本当に一瞬だけ。


 仮面の男が言葉に詰まった。


 たぶん理解できなかった。


     ◇


「世界は既に限界だ」


 男は静かに言う。


「侵食による再構築以外に未来はない」


「はいはい」


 レイは聞き流す。


「でも子供攫う理由にはならんだろ」


「必要な素体だ」


「その時点で却下」


 空気が冷える。


     ◇


 男の周囲へ黒い魔素が漂い始めた。


 侵食反応。


 かなり強い。


 だが。


 レイは一歩前へ出る。


「悪いけど」


 静かな声だった。


「俺、お前ら嫌いなんだよ」


 仮面の男がレイを見る。


「継承者」


「その呼び方やめろ」


「お前はいずれ理解する」


「しない」


 即答だった。


     ◇


 次の瞬間。


 仮面の男の周囲に黒い術式が展開される。


 転移術式。


「待て」


 レイが古代魔語を展開しかける。


 だが。


 男は消える直前、静かに告げた。


「中央は近い」


 そして。


 黒い粒子となって消失した。


     ◇


 静寂。


 夜風だけが吹く。


 レイは頭を押さえた。


「……絶対面倒な流れだこれ」


 エミリーも深く溜息を吐く。


「未到達地帯絡み、ほぼ確定ですね」


「帰りたい」


「まだ帰れません」


 レイは心底嫌そうな顔をした。


 だが。


 王都の闇は、さらに深い場所へ繋がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ