表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/112

第八十話 ぐうたら三男、後始末を押し付ける

 地下研究施設は半壊していた。


 侵食魔素はほぼ浄化完了。


 培養槽も研究設備も焼失。


 残っているのは崩れた石壁と、押収した大量の証拠資料くらいだった。


「……疲れた」


 レイは本音を漏らした。


 かなり働いた。


 今日はもう帰って寝たい。


 本当に。


「お疲れ様です、ドルーゴ様」


 エミリーが苦笑する。


 黒衣姿のまま、回収資料を魔法袋へ整理していた。


「被害状況は?」


「子供たちは全員避難完了。侵食拡散も止まっています」


「ならもう帰ろう」


「後始末は?」


「セシリアに投げる」


 即答だった。


 エミリーが呆れ顔になる。


「またですか」


「俺、報告書とか嫌い」


「知ってます」


 むしろ書けと言われると逃げる。


 ゴールド地方でも散々やらかしていた。


     ◇


 地下通路を戻る。


 途中、拘束した研究員や警備兵たちが転がっていた。


 全員気絶済み。


 レイが雑に無力化した結果である。


「これ衛兵隊驚きますよね」


「頑張ってほしい」


「他人事ですねぇ……」


 実際他人事だった。


 レイは権力争いにも政治にも興味がない。


 だが。


 今回ばかりは王国側も本格的に動かざるを得ないだろう。


 貴族による人身売買。


 侵食研究。


 古代文明技術違法使用。


 しかも灰冠派との繋がりまである。


 かなり大事だ。


     ◇


 地上へ戻ると、夜風が肌を撫でた。


 地下の淀んだ空気とは違う。


 レイは小さく息を吐く。


「やっぱ地上いいな……」


「生還した実感ありますね」


「地下嫌い」


「ダンジョン潜る人の台詞じゃないですよ」


「素材欲しい時だけ」


 レイは本気で言っていた。


 基本的に引きこもっていたい。


     ◇


 その時。


 少し離れた場所から慌ただしい足音が聞こえた。


「こっちです!!」


「侵食反応が消えたぞ!」


「急げ!!」


 衛兵隊。


 そして。


「……やっぱり来たか」


 レイがげんなりする。


 先頭にはセシリアがいた。


 宮廷魔導士装束。


 雷光を纏いながらこちらへ駆けてくる。


 そして。


 崩れた屋敷。


 地下入口。


 気絶した大量の関係者。


 それを見て。


「……何をしたんですか」


 セシリアが頭痛を堪える顔になった。


「いやぁ」


 レイ――ドルーゴは視線を逸らした。


「ちょっと掃除?」


「ちょっとで屋敷半壊しません!!」


 即ツッコミだった。


 安心する。


 いつもの空気である。


     ◇


「侵食研究施設」


「人身売買」


「違法古代術式」


「灰冠派関連資料」


 レイは次々と証拠を渡す。


 セシリアの顔色がどんどん悪くなった。


「……これ全部ですか?」


「たぶん」


「たぶんって……」


 エミリーが小さく咳払いする。


「なお地下施設奥には侵食型擬似核までありました」


「は?」


「浄化済みです」


「……は?」


 セシリアが完全に処理落ちした。


 情報量が多すぎる。


     ◇


 さらに。


「あと灰冠派、多分王国内部かなり食い込んでる」


「…………」


「未到達地帯とも繋がってるっぽい」


「………………」


 セシリアが無言になった。


 現実逃避しかけている。


 レイは少し同情した。


 押し付ける側だけど。


     ◇


「教授呼びます?」


 エミリーがぼそりと言う。


 セシリアの顔が引き攣った。


「……増えるんですよね?」


「はい」


「面倒が?」


「かなり」


 セシリアが天を仰ぐ。


 可哀想だった。


 だが教授は必要だ。


 古代術式関連は間違いなくアルベルト案件である。


「……分かりました」


 セシリアは疲れた顔で頷いた。


「ですがドルーゴ」


「ん?」


「あなたも逃がしませんからね」


「えぇ……」


 レイは露骨に嫌そうな顔になった。


「俺もう働いたじゃん」


「その“働いた結果”の規模が問題なんです!!」


 正論だった。


     ◇


 その後。


 衛兵隊が屋敷を封鎖。


 地下施設調査開始。


 貴族街は大騒ぎになった。


 ラウフェン伯爵失踪。


 違法研究発覚。


 子供誘拐事件。


 侵食研究。


 王都へ衝撃が走ることになる。


 そして。


 その混乱を遠目に見ながら。


「……帰って飯食いたい」


 レイは心底疲れた声で呟いた。


 エミリーが小さく笑う。


「今日は頑張りましたからね」


「美味い飯希望」


「ちゃんと用意してますよ」


 その言葉に。


 レイは少しだけ機嫌を直した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ