表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/101

第七十八話 ぐうたら三男、腐敗貴族を追い詰める

 ラウフェン伯爵は静かに笑っていた。


 地下研究室の薄暗い光が、その痩せた顔を不気味に照らしている。


 右腕は侵食によって黒く変色し、皮膚の下で何かが脈動していた。


 もはや正常な人間には見えない。


「いやはや」


 伯爵はゆっくり拍手する。


「まさかここまで辿り着くとは」


 レイは半目になった。


「褒められても嬉しくねぇな」


「ドルーゴ様」


 エミリーが小さく警戒を促す。


 レイも分かっていた。


 この男。


 既にかなり侵食されている。


 空気が妙に重い。


 魔素が淀んでいた。


     ◇


「貴様か」


 伯爵の濁った瞳がレイを見つめる。


「最近、我々の計画を邪魔しているのは」


「そっちが勝手に問題起こしてるだけだろ」


 レイは肩を竦めた。


「子供攫って人体実験とか趣味悪すぎ」


「必要な犠牲だ」


 即答だった。


「新たな世界のためには選別が必要なのだよ」


「あーはいはい」


 レイは露骨に嫌そうな顔をした。


「そういうの聞き飽きた」


 本当にうんざりしていた。


 世界再構築。


 選別。


 進化。


 侵食側の連中は似たようなことばかり言う。


 だが結局。


 犠牲になるのは弱い立場の人間だ。


     ◇


「貴様には分からん」


 伯爵の声が低くなる。


「古代文明は正しかった」


「侵食による進化こそ人類の到達点――」


「失敗して滅びた文明の真似してる時点で説得力ゼロだろ」


 レイが真顔で返した。


 伯爵の顔が引き攣る。


 エミリーが思わず吹き出しそうになるのを堪えていた。


「き、貴様……!」


「しかも子供利用してる時点で論外」


 レイの声が静かになる。


「お前、自分の子供でも実験材料にできんの?」


 伯爵が黙った。


 図星だった。


 レイは冷えた目を向ける。


「できねぇんだろ」


 だったら。


 最初から間違っている。


     ◇


 空気が変わった。


 伯爵の右腕が膨張する。


 黒い魔素が噴き出した。


「ならば!!」


 侵食が進行する。


 皮膚が裂ける。


 骨が軋む。


 異形化。


 もはや半分以上人間ではない。


「我らの理想の礎となれ!!」


「うわ気持ち悪っ」


 レイは本音を漏らした。


 伯爵が激昂する。


 黒い腕が巨大化し、そのまま振り下ろされた。


 轟音。


 床が砕ける。


 だが。


「遅い」


 レイは既に横へ避けていた。


「ドルーゴ様、後方!」


「分かってる」


 別方向から侵食個体が飛び込む。


 培養槽の残骸から這い出してきたらしい。


「はいはい面倒面倒」


 レイは片手を上げる。


 古代魔語術式展開。


「――『焼却』」


 蒼白い炎。


 一瞬で侵食個体を飲み込む。


 黒い肉塊が燃え落ちた。


 だが伯爵は止まらない。


「侵食こそ完全なる進化!!」


「その姿で言われてもなぁ……」


 説得力が皆無だった。


     ◇


 伯爵の身体がさらに変異する。


 右半身が完全に侵食体化。


 黒い結晶が露出した。


 レイの目が細まる。


「……核か」


 オーブ。


 いや、侵食型擬似核。


 あれが動力源だ。


「ドルーゴ様、破壊できますか?」


「できるけど」


 レイは嫌そうに顔をしかめた。


「あれ周囲と直結してる」


「……地下施設全体?」


「たぶんな」


 雑に破壊すると施設ごと吹き飛ぶ。


 しかも侵食拡散の危険付き。


「最後まで迷惑な奴ですね」


「ほんとそれ」


 レイは深く溜息を吐いた。


     ◇


 伯爵が咆哮する。


 地下研究室全体が揺れた。


 侵食魔素が暴走を始める。


 壁面の術式が黒く染まる。


 まずい。


 かなりまずい。


「ドルーゴ様」


「分かってる」


 レイは前へ出る。


 そして。


 空中へ巨大な古代魔語術式を展開した。


 幾重にも重なる文字列。


 地下空間そのものを覆う規模。


 伯爵の顔が歪む。


「な……っ」


「悪いけど」


 レイの目が冷える。


「子供泣かせる奴、嫌いなんだよ」


 古代魔語が発光した。


「――『侵食分離』」


 空間が震える。


 侵食魔素と地下施設構造が強制分断され始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ