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ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
3章

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第七十三話 ぐうたら三男、スラム街へ顔を出す

 未到達地帯への準備が進む中。


 レイは王都のスラム街を歩いていた。


「……なんで俺こんな忙しいんだろ」


 ぼやきながら路地を進む。


 空は薄曇り。


 昼前だというのに、石造りの路地はどこか薄暗い。


 だが以前より空気は悪くなかった。


 汚水の臭いが減っている。


 道端に倒れている人間も減った。


 簡易浄水魔道具。


 共同炊事設備。


 小型保温器。


 簡易工房。


 ドルーゴとして投入した魔道具群が、少しずつこの辺りの環境を改善していた。


「旦那ー!」


 子供たちが駆け寄ってくる。


 もちろん今のレイはドルーゴ姿だ。


 黒衣。


 仮面。


 完全に怪しい。


 だが子供たちは慣れていた。


「おう」


「パン焼けたぞ!」


「今日はスープもある!」


「いい匂い!」


 路地裏の空気が少しだけ明るい。


 レイは仮面の奥で苦笑した。


 最初は警戒されていた。


 突然現れた黒衣の仮面男。


 どう見ても怪しい。


 だが。


 井戸を直し。


 浄水設備を作り。


 壊れた家屋を補強し。


 仕事を増やし。


 子供へ飯を配り。


 病人へ薬を回した。


 そんなことを続けているうちに、いつの間にか受け入れられていた。


 本人としては「快適な環境作り」の延長なのだが。


 周囲から見れば善人だった。


     ◇


「ドルーゴ様」


 声をかけてきたのは中年の女性だった。


 以前、病気の娘を助けた相手だ。


「例の工房、順調です」


「そりゃよかった」


「働ける人が増えて……皆、感謝してます」


「別に大したことしてない」


 本気だった。


 レイとしては余っていた技術を流用しただけだ。


 だが女性は頭を下げる。


「それでも、救われた人は多いんです」


 レイは困ったように頭を掻いた。


 こういう反応は苦手だった。


「……まあ、働けるなら働いた方が気楽だしな」


 施しだけでは長続きしない。


 だからレイは“仕事”を作る。


 簡易工房で作られる生活用品。


 補修用金具。


 魔石加工補助具。


 それらをエミリー経由で流通させることで、スラム街に金が回るようにしていた。


 ゴールド地方でやってきたことの応用だ。


     ◇


「ドルーゴ様」


 隣を歩いていたエミリー――ではなく、今はミリーエ姿の彼女が小声で話しかける。


「例の件ですが」


「あー」


 レイの声が低くなる。


 最近増えている失踪事件。


 特に子供。


 数日前にも二人消えた。


「まだ足取りは?」


「ありません。ただ……」


 エミリーは周囲を確認してから続けた。


「貴族街側で動いている商会が関係している可能性があります」


「やっぱそっちか」


 レイは小さく舌打ちした。


 最近妙に臭う。


 裏で誰かが動いている。


 人身売買。


 違法研究。


 侵食実験。


 地下研究施設を潰したことで、一部が焦っている気配もあった。


「ほんと面倒だなぁ……」


「でも放置しませんよね?」


「まあな」


 結局それだった。


     ◇


 その時だった。


「ドルーゴ!!」


 慌てた声。


 振り向くと、見覚えのある少年が走ってきていた。


 スラム街の子供だ。


 息を切らしている。


「どうした」


「リコがいない!!」


 空気が変わった。


 レイの目が細まる。


「いつから?」


「朝から……! 仕事行くって出て、それっきり……!」


 ミリーエの表情も険しくなる。


 リコ。


 十歳くらいの少女だ。


 最近、簡易工房の仕事を手伝っていた。


 真面目で大人しい子だったはず。


「最後にどこ行った」


「わ、分かんない……でも、変な馬車見たって……」


「特徴」


「貴族の紋章があった……!」


 レイの雰囲気が変わる。


 静かに。


 だが確実に冷えた。


     ◇


 その頃。


 路地裏の奥。


 薄暗い倉庫。


「今回の商品は状態がいいな」


「侵食適性も高いそうだ」


「貴族様方も喜ぶ」


 下卑た笑い。


 檻。


 怯える子供たち。


 そして。


 倉庫の奥。


 黒いローブを纏った男が静かに立っていた。


「次の搬送先は?」


「地下区画は潰れましたので、別ルートへ」


「……継承者の動きは」


「現在確認中です」


 男はゆっくり頷く。


 仮面の奥の瞳が淡く光った。


「問題ない」


 静かな声。


「いずれ、未到達地帯へ辿り着く」


 黒い魔素が揺らめく。


「継承者は、必ずこちらへ来る」

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