表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/101

第七十一話 ぐうたら三男、教授に相談する

 結論から言うと。


「俺は帰って寝たい」


 それがレイの本音だった。


 地下研究施設から押収した資料。


 灰冠派。


 未到達地帯。


 仮面の男。


 話がどんどん大きくなっている。


 レイは基本的に面倒事が嫌いだ。


 本当に嫌いだ。


 できることなら自室でゴロゴロしながら美味い飯を食べていたい。


 だが。


「放置すると絶対もっと面倒になりますよね」


 エミリーの冷静な一言が刺さった。


「……だよなぁ」


 レイは机へ突っ伏す。


 完全にやる気を失っていた。


 現在、王都拠点。


 地下施設の後処理は匿名通報済み。


 衛兵や宮廷側が慌ただしく動き始めている頃だろう。


 なおレイたちは既に撤収済みである。


 面倒だから。


「とりあえず」


 レイは顔だけ上げた。


「教授呼ぶか」


     ◇


 数時間後。


「素晴らしいねぇ!!!!」


 アルベルト・クロイツは全力で目を輝かせていた。


 机へ広げられた研究資料。


 古代術式。


 侵食関連記録。


 地下研究施設から回収したデータ。


 それらを見た瞬間、教授は完全に研究者モードへ突入していた。


「いやぁ!! これは貴重だ!! 実に貴重!!」


「声でかい」


「研究者だからね!」


 万能免罪符が出た。


 レイは頭を抱える。


 予想通りである。


「ほら見てくれたまえレイ君!! この術式構造!! 無理矢理古代術式を現代魔法へ接続している!! 発想自体は面白い!! 危険極まりないが!!」


「危険なら駄目だろ」


「危険と浪漫は隣り合わせだからね!!」


「駄目研究者だこれ」


 エミリーも呆れ顔だった。


 だが教授は止まらない。


「しかも侵食因子との接続まで試みている!! 再現性は低いが理論だけなら非常に興味深――」


「教授」


 レイが真顔で遮る。


「子供実験してた」


 教授の口が止まった。


 一瞬で空気が変わる。


 先ほどまで楽しそうだった表情が消える。


「……なるほど」


 静かな声だった。


「それは許容できないね」


 アルベルトは研究者だ。


 危険領域へ踏み込むこともある。


 だが。


 人命軽視はしない。


 そこだけは徹底していた。


     ◇


「灰冠派、か」


 アルベルトは資料を読みながら呟く。


「聞いたことはあるよ」


「マジで?」


「都市伝説程度だけどね。古代文明復活思想の秘密結社……と言われていた」


 教授は顎へ手を当てる。


「まさか実在していたとは」


「しかも未到達地帯に本部あるらしい」


「ははは」


 教授が乾いた笑いを漏らした。


「最高に面倒だね」


「だろ?」


「うん」


 珍しく意見が一致した。


     ◇


 アリアは静かに紅茶を飲んでいた。


 最初の頃は食事すら不要と言わんばかりだった彼女だが、最近は普通に飲食している。


 特に甘い菓子を覚えた。


 レイのせいである。


「アリア君」


 教授が視線を向ける。


「灰冠派について他に記録は?」


「一部存在」


「ぜひ教えてほしい」


「研究者適性・危険」


「褒め言葉かな?」


「警戒評価」


「辛辣だねぇ!?」


 教授が笑う。


 だが割と楽しそうだった。


 レイはその様子を見て溜息を吐く。


「なんで仲良くなってんだよ」


「同系統」


 アリアが即答した。


「どこが」


「未知への探究優先」


「やめろ俺まで巻き込むな」


 レイは全力で否定した。


 教授は笑う。


「いや君も十分研究者気質だと思うけどね?」


「違う。俺は快適生活追求型」


「結果が文明発展級なんだよなぁ」


「不本意」


 本気である。


     ◇


 その後。


 回収資料の解析が進むにつれ、状況はさらに悪化した。


「……あー」


 レイが死んだ目になる。


「未到達地帯周辺で侵食反応増加?」


「らしいねぇ」


 教授は資料をめくる。


「しかも灰冠派が古代施設を複数確保している可能性が高い」


「最悪では?」


「最悪だね」


 即答だった。


 エミリーも頭痛を堪える顔をしている。


「これ、王国上層部案件では……」


「まあそうなんだけどねぇ」


 教授は困ったように笑う。


「ただ問題は、王国側にも灰冠派関係者がいる可能性が高いことかな」


 空気が重くなった。


 内部汚染。


 つまり下手に情報を流せない。


「……だから裏で動いてたのか」


 レイは納得する。


 仮面の男。


 違法研究。


 人身売買。


 全部妙に動きが良すぎた。


 王国内部に協力者がいるなら説明がつく。


     ◇


 沈黙。


 しばらく誰も喋らなかった。


 そして。


「未到達地帯へ行く必要性、高」


 アリアが静かに言った。


 レイは盛大に嫌そうな顔をした。


「行きたくねぇ……」


「でも放置できませんよね?」


 エミリーが優しく微笑む。


 逃げ道を塞ぐ笑顔だった。


「レイ君」


 教授まで笑顔になる。


「大発見の予感がするよ?」


「教授は黙ってろ」


 本当に碌でもない。


 だが。


 レイは小さく息を吐いた。


 結局。


 放っておけないのだ。


 スラム街の子供たち。


 侵食被害。


 仮面の男。


 未到達地帯。


 全部繋がっている。


「……準備だけはするか」


 その呟きに。


 エミリーが少しだけ安心したように笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ