第五十五話 ぐうたら三男、崩落から逃げる
ミシ……ミシミシ……。
地下広間の天井が悲鳴を上げる。
巨大侵食体との戦闘。
管理領域の衝突。
極大雷撃。
地下施設側が耐え切れていなかった。
「地下構造が限界だ!」
アルベルトが叫ぶ。
次の瞬間。
ドゴォン!!
天井の一部が崩落した。
「うわ始まった!」
レイが即座に立ち上がる。
大量の瓦礫。
黒い粉塵。
地下広間が完全に崩れ始めていた。
「全員退避です!」
セシリアが声を張る。
近衛騎士たちも一斉に動き出した。
「負傷者を優先しろ!」
「通路確保!」
だが。
崩壊速度が速い。
封鎖区画全体が連鎖的に壊れている。
「レイ君!」
アルベルトが叫ぶ。
「出口まで持たせられるか!?」
「やりたくないけどやるしかない!」
レイは盛大にため息を吐いた。
右手紋様が発光する。
『構造固定』
青白い光が地下広間を駆け抜ける。
崩落速度が一瞬鈍った。
「おおっ!?」
騎士たちが驚く。
崩れかけた天井が無理やり止まっていた。
完全に物理法則へ喧嘩売っている。
「ほんと何なんですかその能力……」
セシリアが若干遠い目になった。
「俺も知りたい」
本音だった。
その時。
さらに奥側で爆音。
ドォォン!!
「まだ崩れるの!?」
『地下魔素流の乱れを確認』
アリアが淡々と告げる。
『連鎖崩壊が進行中です』
「説明が終末なんだよ!」
レイは頭を抱えた。
だが。
止まれない。
「エミリー!」
「こちらです!」
エミリーが避難経路を指示していた。
混乱した騎士たちを冷静に誘導している。
「第三通路側がまだ生きています!」
「ナイス!」
レイたちは崩壊する地下通路を走り出した。
後方では天井が次々崩れていく。
ズドォン!!
「近っ!?」
レイが飛び退く。
巨石が直撃寸前で落下した。
しかも。
通路側にも残留侵食魔素が漂っている。
「ほんと最後まで嫌がらせしてくるな!」
その時。
前方通路が崩れた。
轟音。
完全閉塞。
「うわ最悪!」
騎士たちの顔色が変わる。
「道が!」
「塞がれた!?」
セシリアが即座に前へ出た。
『雷断』
青白い雷刃が走る。
瓦礫をまとめて吹き飛ばした。
「進んでください!」
「セシリア強っ……」
「今更ですか!?」
その通りだった。
王国宮廷魔導士筆頭、普通に強い。
アルベルトも後方崩落を抑えている。
『重力偏向』
落下瓦礫の軌道が逸れた。
「教授もなんで戦闘慣れてるんだよ……」
「研究者だからね」
「その理論まだ擦るの!?」
そんなやり取りをしながらも全員必死だった。
崩壊速度がどんどん上がっている。
レイは舌打ちした。
「アリア!」
『はい、レイ』
「最短脱出ルート!」
『右前方通路を推奨します』
「了解!」
レイが先導する。
その時。
背後から巨大崩落音。
振り返る。
「……うわ」
地下広間そのものが潰れていた。
あと少し遅れていたら飲み込まれていた。
セシリアが小さく息を呑む。
「本当に危なかったですね……」
「今日はもう働きたくない……」
本気だった。
しかし。
アリアの次の言葉で全員固まる。
『お知らせします』
「嫌な予感」
『地上出口まで残り八百メートルです』
「遠っ!!」




