第五十話 ぐうたら三男、フラグ回収の速さにキレる
「やったか!?」
「その台詞やめろ!」
レイが叫んだ直後。
黒穴の奥から、さらに巨大な魔力反応が溢れ出した。
ゴォォォ……。
空気が震える。
地下広間の温度まで変わった。
「ほらぁ!!」
レイは頭を抱える。
本当に嫌だった。
なぜ毎回フラグ回収が異様に早いのか。
『超大型侵食反応を確認』
「もう嫌な予感しかしねぇ」
球体の声は相変わらず淡々としている。
『危険度更新』
『特級脅威判定』
「ランクアップした!?」
近衛騎士たちの顔色が変わる。
「特級……!?」
「そんなもの王都地下に存在していいのか!?」
「よくない」
レイが即答した。
その時。
黒穴が拡大する。
空間そのものが裂けるように歪み。
巨大な“目”が覗いた。
「……うわ」
レイの顔が引きつる。
赤黒い巨大眼球。
黒穴の向こう側からこちらを見ている。
しかも。
知性を感じる。
『観測完了』
低い声。
また日本語。
『継承者個体を確認』
「増えたぁ……」
レイは心底嫌そうな声を出した。
仮面の男だけでも面倒なのに。
さらに上位存在追加。
最悪である。
セシリアが険しい顔になる。
「レイ殿、何を言っているのですか!?」
「もっと面倒なの来た」
「それは見ればわかります!」
ごもっともだった。
その瞬間。
巨大眼球の周囲から黒い触手が伸びる。
ズドォン!!
地下広間へ叩きつけられた。
「防げ!」
騎士団が防壁展開。
だが。
一撃で砕け散る。
「ぐああっ!?」
数人が吹き飛ばされた。
「うわ火力高っ!」
レイは即座に術式展開。
『多重固定』
青白い光鎖が触手へ絡みつく。
空中停止。
だが。
ミシミシと軋む。
「止めきれない!?」
『出力差を確認』
「最悪!」
仮面の男が静かに言う。
『上位侵食端末です』
「説明ありがとう!」
『管理者権限保有個体への対抗用』
「対俺専用兵器かよ!」
嫌すぎる。
すると。
巨大眼球がゆっくり開く。
次の瞬間。
黒い波動が放たれた。
「っ!!」
レイは反射的に右手を振る。
『遮断』
青白い壁が展開。
黒波動と激突した。
轟音。
地下広間が揺れる。
「ぐっ……!」
レイの足が床を削る。
重い。
今までより圧倒的に。
仮面の男が静かに告げる。
『お前一人では限界だ』
「だからって侵食側行かねぇよ」
『非合理』
「うるさい」
その時だった。
アルベルトが何かに気づく。
「レイ君!」
「なんですか先生!」
「あの黒穴……!」
レイも見る。
黒穴。
その周囲。
古代術式。
しかも。
「……制御式?」
侵食だけではない。
召喚。
接続。
維持。
複数術式が混ざっている。
「誰かが維持してる?」
『肯定』
球体が答える。
『外部制御を確認』
「やっぱりか」
つまり。
仮面の男だけではない。
さらに上。
黒幕本体がいる。
「ほんと碌でもねぇ……」
その時。
巨大眼球が再び動いた。
今度は。
広間全体へ黒い光が広がる。
『侵食同期を開始』
「は?」
嫌な予感。
次の瞬間。
侵食個体たちが一斉に変形を始めた。
「うわ合体し始めた!?」




