第四十八話 ぐうたら三男、仕事量の増加に絶望する
「……仕事量増えた」
レイは本気でげんなりしていた。
地下広間を埋め尽くす侵食個体群。
三十どころではない。
裂けた黒穴から次々と湧き出している。
「多っ!?」
近衛騎士の誰かが叫ぶ。
「こんなのどう止めろと……!」
恐怖は当然だった。
普通の魔物ですら厄介なのだ。
侵食個体はさらに危険。
魔素汚染。
再生。
侵食拡大。
全部付き。
「ほんと最低性能してるな……」
レイは盛大にため息を吐いた。
だが。
放置すると広がる。
王城内で増殖されたら最悪だ。
「セシリア!」
「はい!」
「騎士団の防衛優先!」
「承知しました!」
セシリアは即座に魔法陣を多重展開する。
『雷散陣』
青白い雷撃が広間を走った。
侵食個体数体が吹き飛ぶ。
だが。
焼けても再生し始める。
「再生速度が速い……!」
「核残ってるからな!」
アルベルトが即座に補助術式を展開。
『拘束結界』
青い光鎖が侵食個体群を縛り上げる。
「レイ君!」
「わかってる!」
エミリーも避難誘導を終えて戻ってきた。
「一般人は退避完了しました!」
「よし!」
レイは前へ出る。
仮面の男が静かにこちらを見ていた。
『抵抗を確認』
「そりゃするだろ」
『非効率』
「うるせぇ」
レイの右手紋様が強く発光する。
青白い古代術式が空間を埋め尽くした。
『領域圧縮』
瞬間。
侵食個体群の動きが鈍る。
空間そのものが重くなる。
「なっ……」
近衛騎士たちが目を見開いた。
侵食個体が押し潰されるように地へ沈む。
「また意味わからんことを……」
「俺もそう思う」
本音だった。
管理権限、やりたい放題である。
だが。
仮面の男は冷静だった。
『出力上昇を確認』
「分析やめろ」
すると。
黒穴の奥からさらに魔素反応。
「まだ増えるの!?」
『増援継続』
「帰りたいぃ……」
レイが叫ぶ。
本当に帰りたい。
その時。
仮面の男が右手をかざした。
黒い術式展開。
『侵食転換』
「っ!」
侵食個体群が急速変異する。
身体が膨張。
硬質化。
魔力量増大。
「強化個体化!?」
セシリアが驚愕する。
大型化した侵食個体が騎士団へ突撃した。
ドォォン!!
「防壁が!」
騎士たちが吹き飛ぶ。
かなり危険だった。
「ちっ」
レイの表情が変わる。
右手を振り下ろした。
『停止』
青白い光が走る。
大型侵食個体の動きが止まる。
完全静止。
「……え?」
騎士たちが固まった。
大型化した個体まで止めた。
しかも一瞬。
レイは自分でも若干引いていた。
「便利すぎるだろこれ……」
だが。
仮面の男は静かに言う。
『理解したか』
「何を」
『お前は既に管理者側だ』
レイの顔が歪む。
「違う」
『否定しても変わらない』
「俺はぐうたら貴族だ」
『現実逃避を確認』
「うるせぇ!」
本当にうるさい。
すると。
脳内へ球体の声。
『侵食領域拡大』
『王城上層への到達予測、七分後』
「時間制限付き!?」
レイは頭を抱えた。
「なんで毎回イベント進行早いんだよ!」




