第四十三話 ぐうたら三男、王城へ呼び出される
『管理者権限接続率51%』
「増えてるぅ!?」
「なんで働くほど増えるんだよ!」
『高評価処理です』
「いらねぇ!!」
レイの悲鳴が地下水路へ響く。
避難民たちは「すごい魔術師だ……」みたいな目で見ていた。
違う。
本人は全力で嫌がっている。
セシリアが深いため息を吐いた。
「……とりあえず地上へ戻りましょう」
「賛成」
本気だった。
もう地下は嫌だ。
侵食だの管理権限だの聞きたくない。
エミリーが小さく笑う。
「レイ様、顔に疲労が出ていますよ」
「精神的に疲れた」
「いつものことでは?」
「否定できない」
アルベルトは相変わらず興味深そうに周囲を見ていた。
「しかし、地下にあれほどの古代施設が存在していたとは……」
「先生、絶対後で研究院泊まり込みする顔してる」
「否定はしない」
「だと思った」
そうして一行は地下水路を後にした。
◇
地上へ戻る頃には、王都北東区域は軽い騒ぎになっていた。
騎士団。
魔術師。
野次馬。
あちこちで人が動いている。
「うわ面倒そう」
レイは即座に踵を返しかけた。
だが。
「逃がしません」
セシリアが肩を掴む。
「なんで!?」
「今回の件、あなた中心でしょう」
「不本意!」
本気で不本意だった。
その時。
騎士団の一人がセシリアへ駆け寄る。
「セシリア宮廷魔導士殿!」
「状況は?」
「侵食反応は急速に消失しています!」
「負傷者は?」
「軽傷多数、死者は確認されておりません!」
セシリアは僅かに安堵した。
「そうですか……」
レイも内心ホッとする。
王都爆発ルートは回避できたらしい。
すると騎士が続けた。
「なお、陛下より至急招集命令が」
「でしょうねぇ……」
レイが遠い目をした。
嫌な予感しかしない。
騎士はそこで初めてレイへ気づく。
「……そちらは?」
「ゴールド地方領主家三男、レイ・ゴールド殿です」
セシリアが紹介した瞬間。
騎士の顔が微妙になった。
「あ、あのぐうたら三男……?」
「そうです」
レイは素直に肯定した。
だが。
次の瞬間。
騎士は地下水路の惨状を見る。
侵食残骸。
消えかけた古代術式。
そしてセシリアたちの反応。
「……まさか」
「察しが良いな」
「レイ殿が解決を?」
「まあ色々」
騎士の顔が引きつる。
「報告と噂が一致しない……」
「よく言われる」
アルベルトが笑った。
「彼は非常に面白い人物だよ」
「先生その紹介やめてもらっていい?」
すると。
セシリアが真面目な顔でレイを見る。
「レイ殿」
「なんでしょう」
「王城へ同行してください」
「帰りたい」
「却下です」
「知ってた」
レイは盛大にため息を吐いた。
絶対面倒な話になる。
王。
貴族。
研究院。
全部揃っている。
「最悪だ……」
エミリーが小さく笑う。
「諦めましょう、レイ様」
「最近みんな俺に優しくない」
「慣れましたので」
「酷い」
その時。
脳内へ球体の声が響く。
『王城地下に追加侵食反応を確認』
レイの笑顔が消えた。
「……は?」
『中程度脅威判定』
「増えるなよぉ!?」
心の底からの叫びだった。




