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ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
1章

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第四話 ぐうたら三男、尾行される

「……つまり、ベルモンド男爵は黒寄り」


 朝食後。


 自室のソファへ転がりながら、レイはぼんやり天井を眺めていた。


 机には食べ終えた皿。


 高級肉は非常に美味だった。


「“寄り”じゃなくて真っ黒です」


 向かい側で紅茶を淹れていたエミリーが即答する。


「ギルドの調査でも、違法流通品との繋がりが出ています」


「ふーん」


「興味薄くないです?」


「いや悪党なのはわかったけど、まだ確定じゃないし」


「だから調べるんでしょう?」


「まあな」


 レイは身体を起こした。


 するとエミリーがじっと見つめてくる。


「……なんだ?」


「いえ」


「その顔やめろ」


「どうせ今夜、ドルーゴとして動くんだろうなって」


「なんでわかった?」


「産まれた時からの付き合いですので」


 エミリーは呆れたように肩をすくめた。


「それにレイ様、“面倒くさい”って言いながら困ってる人を放置できないじゃないですか」


「そんな善人みたいな言い方はやめろ」


「違うんですか?」


「俺はただ、自分の生活圏が荒れるの嫌なだけ」


「はいはい」


 完全に流された。


 レイはむっとしながら魔導雑誌を手に取る。


 だが数秒後。


「……エミリー」


「はい?」


「監視されてる」


「やっぱりですか」


 即答だった。


「気づいてたのか?」


「朝からずっと」


「教えろよ」


「レイ様も気づいてましたよね?」


「まあ」


 レイの視界には魔素の流れが見える。


 自分専用魔道具のコンタクトには『魔眼』を刻印してある。


 だから隠密行動など大抵見破れる。


 現在、屋敷の外に三人。


 一定距離を保ちながら監視していた。


「ベルモンドの手の者かな」


「たぶん」


「雑だなぁ」


「素人寄りですね」


 エミリーは紅茶を置く。


「どうします?」


「んー……」


 レイは少し考えた。


 そしてニヤリと笑う。


「遊ぶか」


「その顔、ろくでもないこと考えてますね?」


「失礼な」


 十分後。


 レイは珍しく外出用の服へ着替えていた。


 貴族らしい上等な服装。


 ただし本人はやる気ゼロである。


「では行ってくる」


「お気をつけて」


 エミリーは微笑みながら見送った。


 なお、その五分後。


 エミリー自身も黒装束へ着替えて別ルートから出発した。


 完全に共犯である。


 ◇


 ラグナベルク中央街。


 レイは適当に店を巡っていた。


「おっ、新作菓子」


「レイ坊ちゃん、毎度!」


「これ十個」


「ありがとうございます!」


 普通に買い食いしている。


 尾行側からすると非常にやりづらい。


「おい……本当にあいつか?」


「ただのボンボンじゃねぇのか?」


「だが旦那が見張れと……」


 三人組の男たちは物陰から監視する。


 すると突然。


 レイが細い路地へ入っていった。


「行くぞ!」


 男たちは慌てて追う。


 だが。


「……あれ?」


 誰もいない。


 袋小路だった。


「消えた!?」


「馬鹿な!」


 その瞬間。


 上から声が降ってきた。


「おーい」


 三人が見上げる。


 屋根の上。


 そこにレイが座っていた。


 菓子を食べながら。


「尾行ってもっと上手くやるもんじゃないのか?」


「なっ――!?」


「お前、いつから気づいて……!」


「最初から」


 レイはぽりぽり菓子を食べる。


 余裕の態度だった。


「で? 誰の差し金?」


「……っ!」


 三人は剣を抜いた。


 レイはため息をつく。


「はぁ。平和的にいこうぜ」


「うるせぇ!」


 一人が飛び出した瞬間。


 レイは指を軽く振った。


『滑る』


 ベシャァッ!!


「ぎゃあっ!?」


 石畳が突然ローションを撒いたように滑り始め、男が盛大に転倒した。


「な、なんだこれ!?」


「生活便利魔法」


「絶対戦闘用だろ!?」


「違う。滑って移動するときに便利」


 本当に便利だった。


 レイは真面目に実用性を語っている。


 残る二人が左右から襲いかかる。


 するとレイは軽く息を吐いた。


『干す』


 ボンッ!!


 洗濯紐のような魔力糸が出現。


 二人を壁に固定した。


「ぐえっ!?」


「動けねぇ!?」


「洗濯物固定術式応用版。干すときに便利」


「だからなんでそうなる!?」


「応用力だよ」


 レイは屋根から飛び降りる。


 そして三人を見下ろした。


「で、誰に頼まれた?」


「……」


「言わないなら…」


 手には魔素凝縮した短剣を生成…


「ま、待て!」


 男の一人が叫ぶ。


「ベルモンド男爵だ!」


「やっぱりか」


「お前がドルーゴ・イレか調べろって……!」


「違う違う」


「でも古代魔語使ってた!」


「あ」


 しまった、という顔になる。


 男たちがジト目になった。


「……わかりやすすぎだろ」


「隠す気あるのか?」


「…言葉の綾だ」


 その時。


 パチパチ、と拍手が響いた。


「お見事です、レイ様」


「エミリー」


 黒装束姿のエミリーが路地奥から現れる。


 男たちは絶望した。


 もう一人いた。


 しかも美人。


 なのに怖い。


「さて」


 エミリーは笑顔で男たちを見る。


「ベルモンド男爵について、色々聞かせてもらえますよね?」


「ひっ」


 笑顔なのに圧が凄かった。


 レイはそんな様子を見ながら呟く。


「エミリー、悪役向いてるよなぁ」


「誰のせいです?」


「俺か」


「あなたです」


 今日もまた。


 ラグナベルクの裏側では、ぐうたら貴族による平和維持活動が行われていた。

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