第三十七話 ぐうたら三男、世界の重さにうんざりする
『どうか、この世界を壊さないでください』
静かな声だった。
感情は薄い。
だが。
その言葉だけは異様に重かった。
「……は?」
レイは眉をひそめる。
「いや待て」
情報量が多すぎる。
古代文明。
管理施設。
管理AI。
その上で。
“世界を壊す”などという単語。
「俺、そんな危険人物扱い?」
『継承者は世界基盤へ直接干渉可能です』
「さらっと怖いこと言うな」
アリアは淡々としていた。
『現在、継承率45%』
「まだ進んでるの!?」
『停止要請を受理できません』
「クソ仕様!」
レイは頭を抱えた。
エミリーたちは、レイが誰かと会話していることしかわからない。
「レイ様、何を言われているんですか?」
「世界壊せる側らしい」
「はい?」
セシリアが真顔になる。
「冗談ではなく?」
「俺も冗談であってほしい」
アルベルトが静かに水晶を見る。
「……この施設、そこまで危険なのか」
レイは少し悩み。
そして答えた。
「たぶん王都どころじゃない」
空気が変わる。
「中央地脈制御施設ってことは、この国全体に干渉できる可能性がある」
「っ……」
セシリアが息を呑む。
「そんなものが地下に……」
「しかもたぶん現役」
最悪だった。
アリアが静かに続ける。
『本施設は大陸中央地脈安定化補助システムです』
「規模がデカすぎる」
『世界維持機構の一部』
「世界単位!?」
レイは叫んだ。
もう嫌だった。
本当に帰りたい。
『古代文明崩壊後、管理権限喪失』
『現在まで最低維持運転を継続』
「一七〇〇年ずっと?」
『肯定』
「働かせすぎだろ……」
レイは本気で同情した。
ブラックどころではない。
文明滅亡後も無人運営。
狂気である。
すると。
アリアがレイを見つめる。
『継承者は適合率が極めて高い』
「嬉しくない」
『旧管理者群との適性一致率97.2%』
「嫌すぎる」
つまり。
古代文明側から見れば、レイは完全に“後継者候補”だった。
日本語理解。
術式適性。
管理権限。
全部条件一致。
「転生しただけなんだが?」
『詳細不明』
「だろうな」
その時。
水晶の一部が赤く点滅した。
ピコン――。
『侵食反応再上昇』
レイの顔が真面目になる。
「またか」
『外部管理権限による干渉を確認』
「……黒幕」
アリアが初めて少しだけ表情を変えた。
『旧管理者権限の不正使用を確認しています』
レイは目を細める。
「旧管理者?」
『現在侵食を行っている個体は、旧時代管理権限保有者の可能性が高い』
沈黙。
つまり。
「……古代文明関係者?」
『推定』
レイは深く息を吐いた。
転生者。
ではない可能性。
あるいは。
古代文明時代から生き延びている存在。
「最悪だな」
『肯定』
「そこは否定しろよ」
するとアリアは続ける。
『現在、中枢侵食率13%』
『このまま侵食が進行した場合、地脈暴走確率上昇』
「ちなみに暴走したら?」
『アルデバラン王国消滅確率72%』
「重い!!」
レイが叫ぶ。
セシリアたちは意味はわからないが、レイの反応だけで十分察した。
「レイ様」
エミリーが静かに呼ぶ。
「……かなり危険なんですね?」
「非常に」
本気だった。
レイは頭を掻く。
完全に巻き込まれている。
だが。
放置はできない。
何より。
このままではゴールド地方も消える。
「……はぁ」
盛大なため息。
「なんで俺がこんなことに」
『継承者であるため』
「その設定まだ受け入れてないからな?」
アリアは静かに一礼した。
『ご安心ください』
「嫌な前振り」
『継承完了後、業務量は適切に分配されます』
「仕事増える前提!?」




