第三十三話 ぐうたら三男、強制接続される
『管理者権限接続開始』
「待て待て待て!」
『接続率12%』
「聞けぇ!!」
レイの悲鳴が第零管理区画へ響き渡る。
だが古代文明側は止まらない。
水晶柱から溢れる光。
右手紋様の発光。
空中へ展開される古代術式。
「レイ様!?」
エミリーが駆け寄る。
セシリアも剣呑な魔力を展開した。
「何が起きています!?」
「知らん! 勝手に始まった!」
半分本当だった。
脳内へ情報が流れ込んでくる。
膨大な術式。
管理権限。
施設構造。
魔素循環。
「ぐっ……!」
レイが頭を押さえる。
『接続率18%』
「だからやめろって!」
すると球体が淡々と告げる。
『継承者の拒否反応を確認』
『精神保護処理を実行』
「そんな機能あるなら最初からやれ!」
一瞬。
頭痛が軽くなった。
「……あ、楽になった」
『当然である』
「なんか腹立つ」
アルベルトが真剣な顔でレイを見る。
「何が起きている?」
「……施設側が俺を管理者認定し始めた」
沈黙。
「はい?」
セシリアが聞き返す。
「だから管理者権限を渡すとかなんとか」
「そんな重要なことをさらっと!?」
「俺も嫌なんだよ!」
レイは本気で叫んだ。
働きたくない。
責任負いたくない。
なのに。
古代文明側が全力で押し付けてくる。
『適合率・極高』
「嬉しくない」
『現管理者不在期間・長期化』
「何年放置されてたんだよ」
『約一七四二年』
「長ぇな!?」
セシリアたちは意味がわからず困惑している。
だがレイの反応だけで、かなり深刻な内容なのは伝わっていた。
その時。
水晶柱の赤い点滅が強くなる。
ピコン、ピコン――。
『警告』
『外部侵食増加』
レイの顔が真面目になる。
「……来たか」
「何です?」
セシリアが構える。
次の瞬間。
巨大空間の奥。
暗闇の中から黒い魔素が滲み出した。
ドロリ、と。
「うわ」
レイが露骨に嫌そうな声を出す。
「見覚えあるなこれ」
アストラ遺跡。
変異種。
暴走魔素。
全部同じ系統。
「黒幕側の侵食か」
アルベルトが目を細める。
黒い魔素は徐々に人型を形成していく。
不安定。
歪。
まるで失敗した実験体。
『侵食端末を確認』
「端末扱いなんだ」
『低脅威判定』
「そうなの?」
その瞬間。
黒い人影が咆哮した。
轟ッ!!
爆発的な魔力。
研究院上層なら壊滅しているレベル。
だが。
『訂正』
『中脅威判定』
「雑!」
レイは即座に前へ出た。
「エミリー、後衛」
「はい」
「セシリア、右」
「了解!」
「アルベルト先生」
「なんだい?」
「死なない程度にお願いします」
「私は研究者なんだが?」
「嘘だぁ」
レイは右手を掲げる。
青白い古代魔語が展開。
『固定』
空間が震える。
黒い人影の動きが止まった。
セシリアが目を見開く。
「また無詠唱で……!」
「詠唱はしてる」
「それですか!?」
周囲には理解不能な音にしか聞こえない。
だが術式そのものは発動している。
レイは眉をひそめた。
「……やっぱ人じゃないなこれ」
「どう見ても魔物ですが」
「いや、中身」
侵食端末。
つまり。
誰かが遠隔干渉している。
「黒幕本人は別にいる」
その瞬間。
黒い人影の顔部分が歪んだ。
そして。
レイへ向かって笑った。
明確に。
「うわキモ」
直後。
黒い魔素が一気に膨れ上がる。
『高脅威判定へ更新』
「判定遅ぇ!!」
爆発的な黒い魔素が、第零管理区画を覆い尽くした。




