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ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
2章

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第二十五話 ぐうたら三男、研究院へ行きたくない

「行きたくない」


 レイは招待状を机へ置いた。


 まるで呪いの手紙を見る目だった。


「またですか」


 エミリーが紅茶を置く。


「だって絶対面倒じゃん」


「中央研究院ですからね」


「研究者の集まりだろ?」


「はい」


「怖い」


 レイは真顔だった。


 研究者。


 それも古代魔術研究者。


 絶対に厄介な人種である。


「レイ様も似たようなものでは?」


「俺は趣味で魔道具作ってるだけ」


「国家級技術を量産しながら?」


「不本意」


 エミリーはもう慣れていた。


 本人だけが自覚していない。


 その時。


 ソファへ座っていたセシリア・レインが封書を開く。


「正式招待ですね」


「断れない?」


「断ると向こうから来ます」


「うわぁ……」


 レイは頭を抱えた。


「しかも教授直々ですね」


「アルベルト・クロイツかぁ……」


 昨日の違和感を思い出す。


 柔和。


 理知的。


 だが底が見えない。


 ああいうタイプは苦手だ。


「絶対いろいろ見抜いてる」


「たぶんかなり気づいてますね」


 セシリアがさらりと言った。


「何に?」


「古代魔語関連です」


「やめて」


 レイは即答した。


 古代魔語――つまり日本語。


 それを完全理解していることは、できる限り隠したい。


 今は“少し読める程度”という扱いだ。


「研究院で下手に話すと危険ですよ」


 セシリアが真面目な顔になる。


「中央研究院には派閥があります」


「うわ出た」


「純粋研究派。国家利用派。軍事転用派」


「最後絶対ダメなやつ」


「かなり危険視されています」


 レイは深くため息を吐いた。


 嫌な予感しかしない。


「なんで俺こんな場所来ちゃったんだろ……」


「レイ様がアストラ遺跡壊したからでは?」


「言い方」


 だが否定できない。


 ◇


 その日の午後。


 レイたちは王都中央研究院へ向かっていた。


「……でか」


 レイは建物を見上げる。


 巨大だった。


 白い塔群。


 複数棟構造。


 至る所へ魔術式が刻まれている。


「大学と研究所混ぜた感じだな」


「かなり近いですね」


 セシリアが頷く。


「王国最大の研究機関です」


 周囲には研究者らしき人々。


 魔導士。


 学者。


 貴族。


 様々な人種が行き交っている。


「うわ知識欲の塊みたいなのいっぱいいる」


「レイ様、偏見です」


「でもだいたい合ってる」


 すると。


「あっ」


 一人の研究員がレイを見た瞬間、固まった。


「えっ、あれ……」


 次々と視線が集まる。


「……なんか増えてない?」


「レイ様、有名ですから」


「なんでぇ……」


 ざわざわと周囲が騒ぎ始める。


「アストラ遺跡の……」


「古代魔語使い?」


「セシリア殿と一緒だ」


「ドルーゴとも繋がりが――」


「最後誰だ今」


 レイがぎょっとした。


 エミリーとセシリアが静かに視線を逸らす。


 本人だけが気づいていない。


 その時。


「ようこそ」


 奥からアルベルト・クロイツが現れた。


 相変わらず柔和な笑み。


「待っていたよ、レイ君」


「帰っていい?」


「ダメだよ」


 即答だった。


 アルベルトは少し楽しそうに笑う。


「安心したまえ。今日は雑談程度だ」


「研究者の“雑談”信用できない」


「偏見だなぁ」


「たぶん合ってる」


 アルベルトは否定しなかった。


 そして。


 彼はレイをじっと見る。


 観察するように。


 試すように。


「君にはぜひ見てもらいたい物がある」


「嫌な予感しかしない」


「古代遺物だ」


 レイの動きが止まる。


「……どんな?」


「アストラ遺跡と同系統のものだよ」


 空気が変わった。


 エミリーも表情を引き締める。


 セシリアが静かに周囲を警戒した。


「場所は地下研究区画」


 アルベルトは穏やかに微笑む。


「現在、王都で最も危険な場所のひとつだ」


 レイは数秒黙り込み。


 そして。


「やっぱ帰りたい」


 本日最大級に本音が漏れた。

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