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ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
2章

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第二十一話 ぐうたら三男、王城へ行きたくない

「行きたくない」


 翌朝。


 レイは高級寝台へしがみついていた。


「離してください」


 エミリーが布団を引っ張る。


「嫌だ」


「今日は謁見の日です」


「熱出た」


「五分前まで元気に朝食食べてましたよね?」


「精神的発熱」


「便利な言葉ですね」


 王都到着翌日。


 本日は国王との正式謁見である。


 当然ながらレイは全力で嫌がっていた。


「なんで王様と会わなきゃいけないんだよ……」


「国家案件の中心人物だからです」


 セシリア・レインが淡々と告げる。


 現在、彼女は完全に連行係だった。


「俺ただの地方貴族三男なんだけど」


「封鎖遺跡を攻略して古代魔語を扱う“ただの”ですか?」


「うぐっ」


 反論できない。


 エミリーが服を整えながらため息を吐く。


「ほら、ちゃんとしてください」


「貴族服窮屈……」


「今日は最低限まともにしてください」


「普段まともじゃないみたいな」


 二人が無言になった。


「なんで?」


 レイ本人だけが納得していない。


 ◇


 一時間後。


 王城。


「でっか……」


 レイは素直に感想を漏らした。


 白亜の巨大城郭。


 幾重にも重なる尖塔。


 魔導結界。


 警備騎士。


 地方領主館とは規模が違う。


「完全にファンタジー王城だ」


「ふぁんたじー?」


「いやこっちの話」


 セシリアが苦笑する。


「レイ様、あまりキョロキョロしないでください」


「無理。気になる」


 廊下を進むたび、豪華な装飾が目に入る。


 巨大絵画。


 古代魔道具。


 魔導照明。


「うわあれ高そう」


「値踏みしないでください」


「職業病」


「ぐうたら貴族では?」


「ドルーゴ的視点」


 エミリーが呆れた顔になる。


 だが。


 周囲の貴族たちはもっと騒がしかった。


「……あれがゴールド家三男?」


「アストラ遺跡の……」


「宮廷魔導士殿と一緒だぞ」


「聞いたか? 古代魔語を――」


「うわめっちゃ見られてる」


 レイは露骨に嫌そうな顔をした。


「帰りたい」


「まだ入城五分です」


「もう疲れた」


 その時。


 前方から数人の若い貴族が歩いてきた。


 派手な装飾。


 高そうな服。


 典型的王都貴族。


 その中央にいた金髪青年が、レイたちを見て立ち止まる。


「ほう」


 上から下まで値踏みするような視線。


「君が例の地方貴族か」


「違います」


「違わないですよね?」


 エミリーが即座に訂正する。


 青年は口元を歪めた。


「随分と噂になっているな。“古代魔語使い”」


「人違いでは?」


「アストラ遺跡を攻略したそうじゃないか」


「偶然開いただけ」


「変異種も討伐したとか」


「通りすがり」


「ドルーゴと繋がりがあるとも」


「知らない人ですね」


 エミリーとセシリアが同時に視線を逸らした。


 レイだけが気づいていない。


 青年貴族は若干引いていた。


「……随分と変わった男だな」


「よく言われます」


「褒めてない」


 そこへ。


「おやおや」


 別方向から声が響いた。


 ゆっくり現れたのは、柔和な笑みを浮かべた壮年男性。


 深い紺色のローブ。


 胸元には宮廷魔導士紋章。


 セシリアが小さく目を見開く。


「……教授」


「久しぶりだね、セシリア」


 男は穏やかに微笑む。


「彼がレイ・ゴールド君かな?」


 レイは少し目を細めた。


 この男。


 かなり強い。


 しかも。


 魔素の流れが妙に洗練されている。


「初めまして。私はアルベルト・クロイツ」


 男は一礼した。


「中央研究院・古代魔術学部門の責任者だ」


 空気が変わった。


 レイの目が僅かに鋭くなる。


 中央研究院。


 アストラ資料にあった名前。


 そして。


 黒幕が関わっている可能性が高い場所。


 アルベルトは穏やかな笑みのまま続ける。


「ぜひ一度、君と話してみたかった」


 その言葉に。


 レイは本能的な違和感を覚えていた。

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