第二十話 ぐうたら三男、王都へ到着する
「……人多」
王都正門を前にして、レイはげんなりした顔になった。
アルデバラン王国王都――ルクスリア。
大陸有数の巨大都市。
白亜の外壁。
幾重にも連なる城壁。
中央にそびえる王城。
そして何より。
人、人、人。
「すげぇ……」
レイは馬車窓から身を乗り出した。
行きたくない。
面倒。
働きたくない。
そう散々言っていたが。
それはそれとして。
「めっちゃ都会だな」
少しテンションは上がっていた。
「完全にお上りさんですね」
向かい席のエミリーが苦笑する。
「いやだって見ろよあれ」
レイが指差す。
巨大な魔導照明。
空中広告魔道具。
自動搬送用の浮遊荷車。
「思ったより発展してる」
「王都ですから」
セシリア・レインが説明する。
「王国中の技術と人材が集まっていますので」
「へぇー」
レイは素直に感心していた。
地方都市ラグナベルクも栄えてはいる。
だが規模が違う。
流通量も人口も桁違いだ。
特に魔道具関連市場は凄まじかった。
「……あれ俺の魔道具じゃね?」
「ですね」
「しかも値段盛られてる」
「王都価格です」
ドルーゴ製魔道具は、既に王都でも高級品扱いされている。
当然レイ本人は知らない。
「ぼったくりでは?」
「需要と供給ですね」
エミリーは冷静だった。
馬車が街道を進む。
窓の外では大道芸。
露店。
冒険者。
魔導士。
様々な人種が行き交っていた。
「おー……」
レイは少し楽しそうだった。
「こういうの見るの好きなんだよな」
「珍しく素直ですね」
「祭り感ある」
だが。
次の瞬間。
遠くに見えた王城を見て。
レイの表情が一気に死んだ。
「……あそこ行くのか」
「行きます」
「嫌だぁ……」
即座にテンションが落ちる。
エミリーが苦笑する。
「さっきまで楽しそうだったのに」
「庶民エリアは好き」
「貴族エリアが嫌いなんですね」
「人間関係が重い」
セシリアが小さく笑った。
「まあ、わからなくはありません」
「セシリアも大変なの?」
「宮廷は色々ありますので」
遠い目だった。
王都貴族社会。
そこは陰謀と派閥と権力争いの魔境である。
レイが嫌がるのも無理はない。
「俺、絶対浮くぞ」
「既に地方で浮いてます」
「ひどくない?」
「事実です」
馬車はやがて貴族区画へ入る。
空気が変わった。
豪華な屋敷。
整備された石畳。
静かな街並み。
そして。
「うわ貴族多っ」
レイが露骨に嫌そうな顔をした。
すれ違う貴族たちがこちらを見る。
理由は単純。
セシリアが同乗しているからだ。
宮廷魔導士は目立つ。
さらに。
「……なんか視線多くない?」
「レイ様、今かなり有名ですから」
エミリーがさらりと言った。
「なんで?」
「アストラ遺跡関連ですね」
セシリアも頷く。
「“封鎖遺跡を単独攻略した地方貴族”として話題になっています」
「やめて」
「あとドルーゴ関連も」
「やめて!?」
レイは頭を抱えた。
嫌な予感しかしない。
「絶対面倒事増えるじゃん……」
「安心してください」
セシリアが微笑む。
「もう増えてます」
「安心できねぇ」
やがて馬車は巨大な屋敷前へ到着した。
王都滞在中、レイたちへ与えられた宿泊先である。
「到着しました」
セシリアが告げる。
レイは馬車から降りる。
そして。
王都の空を見上げた。
巨大都市。
王国の中心。
そして。
黒幕が潜む可能性の高い場所。
「……はぁ」
レイは盛大にため息を吐いた。
「帰りたい」
「まだ来たばかりですよ」
エミリーが呆れる。
ちなみに。
王都へ来る道中でも色々あった。
盗賊退治とか。
変異魔物襲撃とか。
なぜか温泉街で騒動に巻き込まれたりとか。
セシリアがキレたりとか。慎ましいのはステータスでもあるのに。
色々あった。
だが。
それはまた、いつか語られるだろう。
王都に到着しちゃいました。
最初は地方から出ることなく日常系でのんびりしてようと思ったのに…
どうしてこうなった…
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