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ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
2章

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第十九話 ぐうたら三男、出発前に働かされる

「あと三日……」


 レイは机へ突っ伏していた。


「あと三日で平穏が終わる……」


「元から平穏ではありません」


 エミリーが即座に否定する。


 現在、レイの部屋には旅支度用の荷物が並べられていた。


 王都行きの準備である。


 主にエミリーが進めている。


 本人は現実逃避中だった。


「王都とか絶対疲れる……」


「諦めてください」


「貴族いっぱい居るんだぞ」


「レイ様も貴族です」


「地方のぐうたら三男だからセーフ」


「どこがです」


 その時。


 コンコン、と扉が叩かれる。


「レイ様」


 執事が静かに入室した。


「探索者ギルドより緊急依頼です」


「断る」


「即答ですね」


「出発前に働きたくない」


 だが執事は困ったように続けた。


「灰喰らいの洞第四層で確認された変異種の生き残りが、第三層付近まで移動したそうです」


 レイの目が少し細くなる。


「……まだ残ってたのか」


 灰喰らいの洞。


 そして第四層異変。


 アストラ遺跡事件へ繋がった、あの暴走実験の名残だ。


 研究所は崩壊した。


 黒幕も撤退した。


 だが変異した魔物すべてが消えたわけではない。


 今もなお、一部がダンジョン内部を彷徨っている。


「放置すると?」


 レイが聞く。


「第三層探索者への被害が出る可能性があります」


「だよなぁ……」


 レイは盛大にため息を吐いた。


「レイ様」


 エミリーが静かに言う。


「出発前に片付けた方が安心では?」


「わかってる」


 だから嫌なのだ。


 理解しているから断れない。


「……はぁ。行くか」


「結局行くんですね」


「寝覚め悪いし」


 それがレイだった。


 ◇


 灰喰らいの洞・第三層。


 レイ、エミリー、そしてセシリア・レインの三人は薄暗い洞窟を進んでいた。


 セシリアが周囲を見回す。


「やはり普通のダンジョン魔素とは違いますね」


「第四層の影響残ってるからな」


 レイは壁面へ触れる。


 黒ずんだ魔素汚染。


 人工干渉痕。


 アストラ由来の暴走魔素だ。


「黒幕が撤退しても残滓は残る」


「厄介ですね」


「ほんとになぁ」


 レイは嫌そうな顔をした。


 すると。


 奥から低い唸り声。


「グルルル……」


 現れたのは巨大な蜥蜴型魔物だった。


 だが異様だった。


 全身が結晶化している。


 黒い魔素が脈打ち、皮膚が崩壊と再生を繰り返していた。


「うわぁ……」


 レイが露骨に顔をしかめる。


「まだこんな状態で生きてたのか」


「かなり苦しんでいますね」


 エミリーが静かに呟く。


 魔物は正常ではなかった。


 暴走魔素によって無理やり生かされている。


 半ば死体のような状態だ。


「……助からないですね」


 セシリアも険しい顔になる。


 レイは少し黙った。


 そして。


「せめて終わらせる」


 静かに前へ出る。


 魔物が咆哮した。


 同時に突進。


 だが。


『停止』


 古代魔語が発動する。


 巨大な身体が空中で静止した。


「ギァ……ッ」


 苦しげな声。


 レイは眉をひそめた。


「……ほんと趣味悪い実験しやがる」


 そして右手を掲げる。


『還元』


 青白い光が魔物を包み込んだ。


 黒い暴走魔素が霧散する。


 結晶化した身体が崩れ。


 最後には静かな光だけが残った。


 セシリアが小さく息を吐く。


「破壊ではなく、魔素そのものを解体したんですか」


「暴走魔素だけ抜いた」


「相変わらず無茶苦茶ですね」


 レイは疲れた顔で肩を回す。


「これで残党は終わりか?」


「確認されているのは最後ですね」


 セシリアが答える。


 つまり。


 ゴールド領で起きたアストラ関連の異変は、これで一旦収束となる。


「……やっと終わった」


 レイは心底疲れた顔をした。


 だが。


 エミリーがにこやかに言う。


「では安心して王都へ行けますね」


「行きたくない」


「まだ言いますか」


 レイは本気で帰りたそうだった。


 だが王都行きは、もう避けられない。


 アストラの資料。


 中央研究院。


 そして“読める者”。


 すべての謎は、王都へ繋がっているのだから。

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