表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/112

第十八話 ぐうたら三男、最後の抵抗をする

「というわけで、王都へ向かう準備をしましょう」


「嫌だ」


 翌朝。


 エミリーの言葉へ、レイは即答した。


 現在、ソファへ寝転がっている。


 完全にやる気ゼロである。


「昨日、行かないとダメって言ってましたよね?」


「言った」


「では?」


「気持ちの整理期間が必要」


「どれくらいです?」


「二年」


「長すぎます」


 エミリーは慣れた手つきで旅支度を進めていた。


 王都までは馬車で十日前後。


 長旅になる。


「そもそも王都とか疲れるんだよ……」


「人が多いですからね」


「貴族も多い」


「ああ」


 エミリーが納得した顔になる。


 レイは貴族社会が嫌いだ。


 社交界。


 派閥争い。


 腹芸。


 権力闘争。


 全部面倒だからである。


「俺は領地でのんびり魔道具作ってたいだけなのに」


「でも毎回、自分から事件へ突っ込んでいきますよね」


「不本意」


「説得力がありません」


 その時。


 コンコン、と扉が叩かれた。


「レイ様」


 執事が静かに一礼する。


「セシリア様がお見えです」


「帰ったって言っといて」


「既に玄関まで入っておられます」


「はやい」


 次の瞬間。


 ガチャリ。


「失礼します」


 銀髪の女性――セシリア・レインが当然のように入室してきた。


 宮廷魔術師。


 王都から派遣された監視役兼護衛。


 そして現在。


 レイを王都へ連行する責任者である。


「おはようございます、レイ様」


「帰れ」


「嫌です」


 即答だった。


 セシリアはにこやかな笑顔のままソファへ腰掛ける。


「準備は進んでいますか?」


「進んでない」


「でしょうね」


 完全に読まれていた。


 エミリーが紅茶を置く。


「セシリア様、王都側はどうなっています?」


「かなり慌ただしいですね」


 セシリアの表情が少し真面目になる。


「中央研究院周辺で変異事件が複数発生しています」


 レイが片目を開けた。


「やっぱりか」


「はい。さらに古代魔語研究資料の一部紛失も確認されました」


 アストラ遺跡の資料と一致する。


 つまり。


 黒幕は王都側でも活動している。


「……面倒だなぁ」


「しかもかなり深刻です」


 セシリアは続ける。


「研究員の一部が消息不明。地下研究区画では魔物化事故も発生」


「うわぁ」


 レイが露骨に嫌そうな顔をした。


 完全に人体実験案件である。


「なお陛下は、レイ様の知識が必要と判断されています」


「過大評価では?」


「アストラ遺跡を半壊させながら踏破した方が何を今さら」


「言い方」


 セシリアは小さく笑った。


 だが次の瞬間。


 スッ――と一枚の封書を取り出す。


 王家紋章入り。


「こちら、国王陛下直筆の王命書です」


 レイの顔が引きつる。


「うわ重いやつ」


「今回は正式な召喚になります」


「拒否権は?」


「ありません」


「横暴だ」


「国家案件ですので」


 レイは本気で項垂れた。


 エミリーが少し苦笑する。


「諦めましょう、レイ様」


「まだだ……まだ方法はある……」


「どんなです?」


「病弱設定」


「レイ様、昨日普通にダンジョンで暴れてましたよね?」


「精神が病弱」


「それは否定できませんね」


 セシリアまで頷いた。


「味方がいない」


 レイは天を仰ぐ。


 本当に行きたくない。


 絶対面倒だ。


 だが。


 アストラ遺跡の資料。


 王都研究院。


 変異事件。


 全部が繋がり始めている。


 放置すれば確実に被害が広がる。


「……はぁ」


 深いため息。


 そして。


「いつ出発?」


 ようやく観念したように聞く。


 セシリアが微笑んだ。


「三日後です」


「急すぎない?」


「既に一ヶ月ほど先延ばしされています」


「そんなに経ってた?」


「レイ様、毎回うまく逃げますからね」


「才能かもしれん」


「そこは誇らないでください」


 エミリーが呆れたように言った。


 こうして。


 ぐうたら三男坊レイ・ゴールドは。


 ついに王都行きを避けられなくなったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ