表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぐうたら三男は古代魔語で悠々自適生活を目指す  作者: シロネル
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/112

第百四話 ぐうたら三男、立ち上がる

『中央管理権限接続率上昇』


『領域同期開始』


『未到達地帯制御領域展開』


     ◇


 無数の古代魔語が視界を埋め尽くす。


     ◇


 白い光。


 空間座標。


 魔素流路。


 侵食汚染率。


 古代施設稼働状況。


     ◇


 情報量が異常だった。


     ◇


「うっわ……」


 レイは心底嫌そうな声を漏らす。


「仕事量多すぎるだろこれ……」


     ◇


 教授が呆れた顔をする。


「君は世界規模管理権限を前にして第一声がそれなのか」


「だって嫌だろ普通」


     ◇


 だが。


 レイの周囲へ展開された術式は、さらに拡大していく。


     ◇


 白銀都市全域が反応した。


 停止していた古代機構が順次起動していく。


     ◇


 空中へ巨大な古代魔法陣。


 都市各所へ光の柱。


 崩壊していた領域が修復されていく。


     ◇


 騎士たちが呆然と見上げていた。


「街が……」


     ◇


 侵食されていた白銀構造が浄化される。


 黒く染まった街路が白へ戻る。


     ◇


 空間断裂すら閉じ始めていた。


     ◇


 セシリアが小さく息を呑む。


「本当に制御している……」


     ◇


 レイ自身も驚いていた。


     ◇


 分かるのだ。


 都市構造が。


 空間制御が。


 管理機構の術式構造が。


     ◇


 まるで最初から知っていたように理解できる。


     ◇


 日本語だからだ。


     ◇


 古代文明は、完全に“こちら側”の言語体系で作られている。


     ◇


「ほんと迷惑仕様……」


 レイはぼやく。


     ◇


 その時。


 侵食中枢が動いた。


     ◇


 黒い巨体。


 巨大な目。


 都市全域へ広がる侵食。


     ◇


 そして。


 初めて“敵意”が明確になった。


     ◇


『管理者権限確認』


『排除対象へ変更』


     ◇


「うわぁ急に敵認定された」


     ◇


 次の瞬間。


 黒い月から大量の侵食体が降り注いだ。


     ◇


 黒い影。


 異形。


 空間を歪ませながら現れる侵食個体群。


     ◇


 都市全域へ降下してくる。


     ◇


「数が多すぎます!」


 セシリアが叫ぶ。


     ◇


 教授も結界を展開した。


「完全に防衛戦だねこれは」


     ◇


 騎士団も即座に迎撃へ動く。


 だが。


 侵食個体の数が異常だった。


     ◇


 その時。


 レイの視界へ、新しい制御項目が表示される。


     ◇


『領域防衛機構』


『起動しますか?』


     ◇


「……嫌な予感しかしない名前」


     ◇


 アリアが静かに言う。


「都市防衛用管理兵装」


     ◇


「兵器じゃん」


「はい」


     ◇


 レイは嫌そうに顔をしかめた。


 だが選択肢がない。


     ◇


「……起動」


     ◇


 瞬間。


 白銀都市全域が震えた。


     ◇


 地面が開く。


 塔が変形する。


 街路へ巨大術式が展開される。


     ◇


 そして。


 無数の白い機体が浮上した。


     ◇


 人型。


 白銀装甲。


 管理機構兵。


     ◇


 騎士たちが目を見開く。


「なっ……!?」


     ◇


 数百。


 いや数千。


 都市内部から次々出現する。


     ◇


『領域防衛機構起動』


『侵食排除開始』


     ◇


 白い機兵群が一斉に空へ飛翔した。


     ◇


 轟音。


 閃光。


 侵食個体群と激突する。


     ◇


 空中戦。


 都市防衛戦。


 白と黒の大軍勢が未到達地帯上空で激突していた。


     ◇


 セシリアが呆然と呟く。


「規模がもう戦争じゃない……」


     ◇


 教授は逆に冷静だった。


「いや、古代文明にとってはこれが通常防衛だったんだろう」


     ◇


 その言葉に、全員が背筋を冷やした。


     ◇


 こんな規模の戦闘を前提にしていた文明。


 そんなものが滅びた理由。


     ◇


 侵食。


     ◇


 空の巨大な目が再び開く。


 世界が軋む。


     ◇


『管理者』


『何故抵抗する』


     ◇


 レイは管理座へ座ったまま、嫌そうに答えた。


「いや普通に侵略者だからだろ」


     ◇


『世界は既に限界』


『再構築は必要』


     ◇


「だからって全部壊していい理由にはなんねぇよ」


     ◇


 その瞬間。


 侵食中枢の圧力が変わった。


     ◇


 怒気。


     ◇


 空間そのものが震える。


 黒い目が大きく開かれる。


     ◇


『旧世界は不要』


『管理者は更新されるべき』


     ◇


「断る」


 レイは即答した。


     ◇


 そして。


 ゆっくりと右手を上げる。


     ◇


 都市全域の術式が共鳴した。


 白銀都市が光る。


 管理機構兵群が一斉に停止する。


     ◇


 次の瞬間。


 レイの周囲へ、超巨大術式が展開された。


     ◇


 日本語。


 古代魔語。


 世界法則級術式。


     ◇


 教授が息を呑む。


「……まさか」


     ◇


 レイは心底面倒臭そうな顔でぼやいた。


     ◇


「さっさと終わらせて飯食いたいんだけど」


 その一言と共に。


 都市全域へ展開された超巨大術式が起動した。


     ◇


 白銀の光が世界を覆う。


 空間そのものへ刻み込まれる日本語術式。


     ◇


 侵食。


 空間断裂。


 黒い魔素。


 その全てへ干渉していく。


     ◇


 教授が呆然と呟いた。


「術式規模が……桁違いだ」


     ◇


 レイ自身も、今まで感じたことのない感覚に顔をしかめていた。


     ◇


 分かる。


 都市の構造が。


 侵食の流れが。


 未到達地帯の地脈が。


     ◇


 そして。


 侵食中枢本体の位置すら。


     ◇


「……あそこか」


 レイは空を見上げる。


     ◇


 黒い月。


 その奥。


 空間のさらに深部。


     ◇


 侵食中枢は、“向こう側”へ半分沈んでいる。


     ◇


 だから完全に消せない。


 こちらの世界と別領域へ跨って存在している。


     ◇


「めちゃくちゃ厄介じゃん……」


     ◇


 アリアが静かに頷く。


「侵食中枢は高次領域接続型」


「分かりやすく」


「別空間へ逃げている」


「うわ面倒」


     ◇


 その時。


 空の巨大な目が開く。


     ◇


 侵食波動。


 黒い閃光。


 都市全域へ降り注ぐ。


     ◇


 だが。


 レイの術式がそれを迎え撃った。


     ◇


『領域分離』


     ◇


 世界が裂ける。


     ◇


 黒い侵食波動だけが空間ごと切り離された。


 都市側へ届かない。


     ◇


 セシリアが目を見開く。


「空間そのものを……」


     ◇


 教授が低く呟く。


「完全に管理者権限だね」


     ◇


 しかし。


 侵食中枢は止まらない。


     ◇


 黒い月からさらに侵食個体が溢れる。


 都市防衛機構と激突する。


     ◇


 白い管理兵器が次々破壊されていく。


 侵食は学習し、適応し、増殖する。


     ◇


 長引けば押し切られる。


     ◇


 レイもそれを理解していた。


     ◇


「やっぱ本体叩くしかないか……」


     ◇


 エミリーが静かに問う。


「行くんですか?」


     ◇


「行きたくない」


 即答だった。


     ◇


 だが。


 レイは立ち上がる。


     ◇


 中央管理座周囲の術式が変化した。


 白銀の光がレイの周囲へ収束する。


     ◇


『管理者権限・限定解放』


『高次領域接続開始』


     ◇


「嫌な名前しかないなほんと」


     ◇


 教授が苦笑する。


「今さらじゃないかね」


     ◇


 その時だった。


 アリアが静かに前へ出る。


     ◇


「レイ」


「ん?」


     ◇


 アリアは少しだけ迷うように視線を伏せた。


 珍しい反応だった。


     ◇


「……危険」


     ◇


 一瞬。


 レイは少し驚いた。


     ◇


 アリアがこんな言い方をするのは珍しい。


     ◇


「戻れる保証、低」


     ◇


 空気が静まる。


     ◇


 セシリアも顔を曇らせた。


 教授も黙る。


     ◇


 高次領域。


 侵食中枢本体。


 完全未知領域。


     ◇


 何が起きるか分からない。


     ◇


 レイは少しだけ困ったように笑った。


「そんな顔すんなって」


     ◇


 エミリーが小さく息を吐く。


「レイ様は、いつもそう言います」


     ◇


 レイは頭を掻いた。


     ◇


「だって仕方ないだろ」


     ◇


 本当に。


 面倒臭そうだった。


     ◇


「放っといたら世界壊れるし」


     ◇


 静かな沈黙。


     ◇


 そして。


 エミリーがいつものように微笑む。


「では、帰ってきたら美味しいものを食べましょう」


     ◇


 その言葉に。


 レイの表情が少しだけ明るくなった。


     ◇


「お、いいな」


「何が食べたいですか?」


「肉」


「予想通りです」


     ◇


 セシリアが思わず吹き出した。


 教授も肩を揺らしている。


     ◇


 こんな状況なのに。


 不思議と空気が少し軽くなる。


     ◇


 レイはゆっくりと空を見上げた。


 黒い月。


 侵食中枢。


 世界の敵。


     ◇


「……はぁ」


 深いため息。


     ◇


「ほんと、昼寝だけして生きていきたかったんだけどなぁ」


     ◇


 そして。


 右手を上げる。


     ◇


 古代魔語術式が起動した。


 白銀都市全域が共鳴する。


     ◇


『高次領域接続』


『座標転移』


     ◇


 空間が開く。


     ◇


 黒い月の中心へ続く道が現れた。


     ◇


 侵食中枢本体への直通経路。


     ◇


 アリアが静かに言う。


「道、固定完了」


     ◇


 レイはその黒い道を見て。


 本気で嫌そうな顔をした。


     ◇


「うわ絶対嫌なダンジョンだこれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ