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SF短編集 人間は元気ですか  作者: 月極典


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6/8

ノイド配信者


 ノイド配信者『オカドール』のライブ配信が始まった。

『現在、某県の廃集落にある廃校に、管理者の許可を得て撮影に来ています』

 自律型AIヒューマノイドの配信者はメインとなるビデオカメラは持たない。自らの視界をそのまま映像として録画や配信が可能だからだ。額に内蔵されたライトで前方を照らしながら山道を進んでいる。


 ライブ視聴者のコメントが流れる。

 

 ・1コメ

 ・オカドールさん、応援してます

 ・今回は幽霊期待してます

 ・おでこライト明るすぎ、昼間みたくて草

 

『前回は最恐心霊スポットと呼ばれる馬頸ダムを訪れました。多くの方にご覧いただきありがとうございました。ただ前回は身投げしようとしていた女性を発見しまして。その方を引きずり降ろし、担いで警察に運び保護してもらう事案が発生しまして、心霊どころではなかったですね』


 ・人助けチャンネルw

 ・アレはアレで面白かったですよ

 ・オカドールさん良い人……

 ・人じゃなくて草


『それと前回は、警察に着いたら私自身のバッテリーが切れてしまいまして、警察で充電させてもらうという失態がありました。今回は本体フル充電に加え、予備のバッテリーも持っての撮影となります』

 画面には充電のインジケーターが表示されている。背中には予備のバッテリーが入ったバックパックを背負っている。


 ・本体フル充電w

 ・前回、充電しながら警察に事情聞かれててワロタ

 ・廃墟で充電切れたらただの不法投棄

 ・それなww


 『そうです。こんなひとけのない廃墟で停止したら、本当に粗大ゴミになってしまいますからね。気をつけます……』

 オカドールは山道とも言えない、落ち葉と倒木だらけの道を廃校に向かって進んでいく。ヒューマノイドは人間よりはるかに体重がある。一歩踏み出すごとに地面が沈んでいく。


 ザザァーー……

 カッカッカッ……

 コッコッコッ……

 パキッ……パキッ……

 

 周辺の竹林から、不気味な異音が聞こえてくる。視聴者からのコメントが恐怖を煽る。

 

 ・何の音?

 ・怖い。足音じゃない?

 ・オカドールさん、気をつけて


『この音は、竹の成長音や笹鳴りです。ただの環境音ですね……』

 

 ・知ってたw

 ・怖がらせる気ゼロで草

 ・正直w

 ・こういうとこ好き


 『到着しました。木造二階建ての校舎のようです。それでは突入します……』

 正面玄関の扉を管理者から預かった鍵で開けて侵入する。


 『ここは下駄箱ですね。在りし日の学校の営みが、そのまま残されています。当時の上履きや、傘などがありますね。……ん?』


 ウウウ〜……

 アアアア〜……


 人の呻き声のような音が聞こえてくる。視聴者のコメントでも不気味な声が聞こえるとの指摘が相次いで盛り上がっている。


『風の音がします。木造ですから、窓や扉の隙間を空気が抜ける音です。皆さんの家でも、窓や扉を少しだけ開けると似たような音がすると思います』


 ・バッサリw

 ・演出ゼロでお届けしています

 ・なんか騒いでるこっちが恥ずかしくなってきたw


 正直なオカドールの実況に視聴者はしらけそうだが、実はこのチャンネル、心霊番組と言いながらまったく怖がらせる気のない天然気味のオカドールをツッコミながら楽しむことで人気となっている。


 視聴者がいくら幽霊が映ったと主張しても、シミュラクラだパレイドリアだ気のせいだと、オカドールは否定するのだ。かと言って心霊現象を否定するわけではなく、本気で幽霊の姿を捉えたいと思っているところが良いという。


 ⸻しかし。


 オカドールが横に伸びる長い板張りの廊下を額のライトで照らしたその時、遠くに明らかな人の姿を捉えた。


 白いワンピースに長い髪の女。


 ・こわっ

 ・キタァーーッ

 ・コレは完全に幽霊!!!

 ・オカドールさん、逃げて!


『これは……』

 絶句するオカドール。電気の通ってない灯りひとつない廃校で、ライトなしで人が行動できるわけがないのだ。


 ライトに照らされオカドールに気がついた白いワンピースの女は、俯きながらフラフラとゆっくりこちらに近づいてきた。


 ゴッ……ゴッ……ゴッ……ゴッゴッゴッゴッ!


 徐々に足を早めた女はほとんど走るようにオカドールに迫る。髪を振り乱し、顔は隠れている。視線と同期する映像は真っ直ぐにその姿を捉えていた。


 ・オカドールさん、どした!

 ・フリーズ?

 ・逃げろって!


 とうとう目の前まで迫った白いワンピースの女、見ると服は薄汚れ、履いている白いパンプスも泥だらけだ。

 

 そして、息も切らさずに言った。

 

『助けてください。充電が……切れそうなんです』


 ・え、え?

 ・ノイド?

 

 オカドールは黙ってバックパックの予備バッテリーを出して、女性に繋いでやった。


 事情を聞くと、彼女は廃棄された旧式のヒューマノイドだった。この辺りを彷徨っているうちに、この廃校に辿り着いた。電気の通ってないこの場所で、暗視機能を頼りに途方に暮れていたところに、オカドールが現れたという。


『というわけで、今回も幽霊の姿を捉えることはできませんでした。これでライブ配信を終了します。また次回にご期待ください』


 ・というわけで、じゃない

 ・そのノイド、どうすんだ?

 ・今回も人助けチャンネルで吹いたw

 ・助けたの人じゃなくて草

 

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