第327話 1541年 11歳 上杉龍義、将軍を怒らせすぎて京が凍る
<堺港に漂う不穏>
堺港に着くと、松永達が出迎えてくれた。
松永「兄貴、やっちゃいましたね。将軍、大激怒ですよ」
うーむ。
やっぱりか。
小西商店の小西は、俺が琉球王国を手に入れた事が嬉しい半面、将軍を怒らせているので困り顔半面だ。
小西「若様は、どうされるおつもりで?」
俺「二人とも、俺は大丈夫だ。ちゃんとお土産も用意してある」
次に、俺は松永と細川晴元に会いに行く。
細川晴元は無料で使える松永を大変気に入ったらしく、松永を便利に使っているようだ。
松永「細川様も兄貴の事を心配していましたよ」
俺と松永は細川晴元の家臣に呼ばれ、謁見室に行く。
目の前には細川晴元。
細川晴元「上杉龍義は、無茶しすぎだ。将軍家も公家も天皇家も皆驚いているぞ。どう始末をつけるのだ?」
俺は細川晴元に計画を話す。
細川晴元「それは、上杉龍義らしいな。足利義晴様が大激怒しているから、そこまで話がたどり着くか心配だ」
俺(そんなに足利義晴が激怒しているのか……)
不安。
そこに将軍家から使者が来た。
使者「将軍様がお呼びである」
……来たか。
俺は柿崎と安田を連れて、再び二条御所へ向かった。
<足利将軍激怒>
玉座の間に入った瞬間。
空気が違う。
前回よりも、はるかに重い。
そして――
将軍が怒っている。
足利義晴「上杉龍義!!!!」
怒鳴り声が響く。
足利義晴「貴様は何をしてくれた!! 明国皇帝に勝手に会ったそうではないか!! 倭国の秩序をどうするつもりじゃ!!」
文官達が静まり返る。
まあ、当然だろう。
俺「将軍様、落ち着いて下さい」
足利義晴「落ち着けるか!! 明国から書簡が来ておるのだ!!」
俺「ちょうど良かった。私も将軍様へお土産を持って参りました」
足利義晴「……何?」
俺は合図した。
安田が箱を運ばせる。
そしてもう一つ。
封書。
俺「明国皇帝から、将軍様への挨拶状でございます」
文官が書簡を開く。
そして読み上げる。
文官「明国皇帝より、倭国王へ。海の安寧を喜び、挨拶を送る」
玉座の間がざわつく。
倭国王。
つまり――
足利将軍のことだ。
足利義晴の表情が変わる。
明が正式に「日本国王」として冊封したのは、千四百三年の三代将軍・足利義満だけだ。
十二代将軍・足利義晴の代では、日本国王とされていない。
足利義晴「……続けよ」
文官「琉球王の朝貢を受け、倭国との海路が安定したことを喜ぶ」
読み終わる。
沈黙。
俺「将軍様。こちらがその証でございます」
もう一つの箱を開ける。
中には――
金印。
倭国王印。
文官達が息を飲む。
足利義晴の顔色が興奮で変わる。
足利義晴「……これは」
足利義晴の手が、わずかに震えた。
それを隠すように、袖の中へ押し込んだ。
栄華を極めた足利義満の代でも受け取っていない印を、この上杉龍義が持ってきたのだ。
足利義晴は今、苦境にあるだけに、この印の価値に興奮する。
先祖を、今、自分が追い越したのだ。
俺「明国から将軍様へのお土産です」
李牧が攻略した皇帝の右腕に、大枚を貢いで作成してもらった。
俺は言葉を続ける。
俺「将軍様。大内家は石見銀山と博多を失い、今後は明国との貿易を維持する資金がありません」
文官達が互いを見る。
俺「しかし、長尾家なら可能です」
俺は静かに言った。
俺「今後、明国との関係維持の献金。二万貫。長尾家が負担致します」
空気が凍る。
足利義晴「……」
俺「どうか大内家に代わり、長尾家を倭国の代表としてお使い下さい」
沈黙。
長い沈黙。
やがて――
足利義晴「……数日待て」
それだけ言った。
俺「承知致しました」
俺は深く礼をして下がった。
<京に走る衝撃>
数日後。
京の町で公示が出された。
「将軍家布告」
大内家に代わり、長尾家を倭国海路の代表とする。
京の商人達が騒ぎ出す。
「大内が終わった……」
「これからは長尾か」
「明との窓口が変わったぞ」
この日、倭国の海の主は変わった。
大内家は、博多、石見銀山、そして――明との窓口。
全て失ったのだから。
そして――
勘合は長尾家へ渡った。
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