第324話 1541年 11歳 博多を攻略出来るかな(2 長尾軍、博多港で火薬を投げ込む )
<危機!博多奇襲>
博多の商人達とは、博多の小西商店を通じての付き合いがあり、博多の豪商、神屋寿禎とも面識がある。
博多商人とすれば、取引のある長尾家の方が大内家より良い。
博多の豪商、神屋寿禎から大内家の情報が入って来る。
大内家の守備兵は約千人で、他は港の関税や罪人の取締り等の役人だそうだ。
作戦は奇襲だ。
大友家は陸路で大内家の博多邸、つまり砦を強襲する。
長尾家は海路で博多港付近の役人や守備兵を無力化する。
決行は明け方、日の出前。
合図の狼煙が上がる。
俺達の西洋帆船三隻が博多港に入る。
博多港は漁港でもあるので、漁船が急遽入ってきた西洋帆船に、何事かと驚く。
西洋帆船を強制接岸する。
次々と重装歩兵を降ろしていく。
降ろした重装歩兵は、順次、博多港付近の役人や守備兵を無力化していく。
順調に事は進む。
しかし、血まみれの大友家の騎兵がこちらに走って来て、状況が一変する。
大友家の騎兵「我々の奇襲が大内家に漏れていたようです。長尾家の応援をお願いします」
柿崎「どういう状況だ」
大友家の騎兵「我々が大内家の砦を攻撃しようとした所、後方から大内家に攻撃され、前面から大内家の砦に攻撃され、挟撃の形となりました」
俺は柿崎に作戦を伝える。
柿崎は兵五百人を連れて大内家の砦に向かう。
柿崎が到着した時、大友家は敗走寸前であった。
後方で大友義鑑が兵を怒鳴っているのが見える。
大内家の兵士達は大内家の砦から二十メートルほど離れており、大友家の兵士を大内家の砦から離そうとしている。
そこを横から長尾家が強襲する形となる。
当然、大内家も長尾家の到着に気づき、こちらに兵を向けてくる。
柿崎は横陣を二列作り、一列目は盾と片手十字槍を構えさせ、二列目は半弓を撃たせた。
弓が次々と大内兵を射抜いていく。
柿崎は若様の作戦通り、兵の一部を割いて大内家の砦に近づく。
正門の前は大内兵が厳重に守っているが、塀の前は無防備である。
堀の外から内へ、どんどん火油雷を投げていく。
爆発音が連続して鳴り響き、地面でも建物でも赤い炎と黒煙を上げ、どんどん燃え広がる。
物の焼ける匂いと油の匂いが、辺り一面に充満していく。
こうなると、大内家は砦を放っておく事は出来ない。
消火活動をしなければならない。
大内家の指揮官は、残存八百人の内の百人を消火活動のため砦に戻す事を指示する。
柿崎が合図の法螺貝と鐘を鳴らす。
大内家の一部の兵が引いた部分へ、長尾軍を突撃させる。
大内軍の一部が崩れる。
そこに息を吹き返した大友軍が襲いかかる。
形勢は逆転した。
大内軍は守備一辺倒になり、大内砦の正門前に固まる。
槍と盾を構え、時間を何とか稼ごうとする。
そこへ長尾軍が震天雷を投げ込む。
爆発音とともに撒き散らされる鉄片が、大内家の兵士を傷つけ、絶叫させる。
柿崎が半弓を一斉掃射させる。
どんどん減る大内軍。
頃合いを見て、柿崎が大内家に投降を呼びかける。
素直に応じる大内家の指揮官の弘中。
しばらくして、柿崎の所に大友義鑑が怒鳴り込んで来た。
大友義鑑「どうなっておるんだ!! 作戦が漏れていたではないか」
大友義鑑も父子二代に渡る大内家への怨念を晴らしたいので、この戦いに賭けている。
柿崎も固まる。
柿崎「とりあえず、大内家の者を拘束して、大内砦の占拠を優先しましょう」
大友義鑑「……そうだな。この不始末どうするんだ」
そう言って、大友義鑑はぷりぷり怒りながら自分の陣に帰って行った。
柿崎は大内家の対応の指示を出してから、俺へ報告に来た。
<緊迫!裏切り者を探せ>
俺は柿崎からの報告を聞き、博多商人の代表である豪商、神屋寿禎を呼び出す。
大内家の情報をもらうため、今回の奇襲を漏らしたのはこの男一人だけなのだ。
俺「神屋寿禎よ、お前は俺の敵か?」
神屋寿禎は真っ青な顔をして、額を地面にこすりつけ、土下座をする。
神屋寿禎「申し訳ございませぬ。私がこの秘密を漏らしたのは番頭ただ一人でございます。この番頭が漏らしたものと思います。手代に言いまして、既に拘束して連れてきております」
番頭が俺の前に出てくる。
顔色は真っ青だ。
俺「お前のせいで大勢が死んだ。首をもらう。正直に言えば生かす道もある。番頭はこの神屋寿禎に指示されて大内家に奇襲を喋ったのか?」
番頭は神屋寿禎をチラリと見る。
番頭「大旦那様の指示でございます」
真っ赤な顔で神屋寿禎が絶叫する。
神屋寿禎「お前は何を言っているんだ。長尾様のためにお前には大内の人数を調べて来いと言っただけだぞ」
おずおずと手代が喋り出す。
手代「長尾様、番頭様は長尾家は負けるのだから大内家に恩を売った方が良い、大旦那様は間違っていると私に漏らしてました。密告の褒美に大内家からお金をもらっています。検めて下さいませ」
番頭が手代に怒りだすが、兵士が番頭を座らせ、懐を探る。
すると、大内家からの褒美の金が出てきた。
俺「間違いないな。神屋寿禎はこの番頭をどうしたい?」
神屋寿禎「長尾様のご処分にお任せします」
俺「そしたら、この裏切り者を大友家に連れて行け。処分は大友家に委ねろ」
これで怒っている大友義鑑の溜飲も下がるだろう。
そして俺は神屋寿禎を立たせる。
俺「神屋寿禎はもっと人を見ないとダメだぞ」
神屋寿禎は博多の大商人である。
この男を処分すると、他の博多商人が俺から手を引くだろう。
神屋寿禎「若様には大変なご迷惑をおかけしました。若様は本当に人の扱いがお上手でございます。我々が大迷惑を被った金城兄弟ですら活躍させておられます」
金城兄弟とは、ホスト顔の凄腕山師である。
佐渡ヶ島の金脈を沢山発掘して、長尾家の経済的な基礎を作った恩人でもあり、生ける伝説でもある。
俺「うん、金城兄弟がここで何をやったんだ?」
神屋寿禎が金城兄弟の事件を話す。
余りの内容に、安田が呟く。
安田「それは金城兄弟は闇に葬られて当然ですね」
実は金城兄弟が石見銀山を発見したのだが、無かった事になっている。
俺はニコリと笑う。
俺「金城兄弟は佐渡ヶ島で更生した。大丈夫だ。……多分?」
俺は深い深いため息をついた。
アイツら大丈夫かな?




