第322話 1541年 11歳 毛利元就を攻略出来るかな(7 毛利と尼子、十一歳の龍義に睨まれる)
<緊迫!毛利元就との交渉>
尼子の軍勢二万は月山富田城から出陣し、出雲赤名から備後三次を経て、尼子方の三吉隆信の居城・備後八幡山城(三次市)に進出した。
宍戸氏は宍戸元源や宍戸隆家、深瀬隆兼らが、犬飼平や石見堂の渡しで決死の防戦を行い、尼子軍は可愛川(江の川)すら渡る事ができずにいた。
毛利家と長尾家との連絡により停戦となり、尼子晴久、その弟尼子誠久、軍事責任者の尼子国久がこちらに来ることになった。
俺は再度、山本勘助を交渉役として吉田郡山城に派遣し、青光山に陣取る長尾家の陣幕に来てもらうことにした。
当然、吉田郡山城には長尾軍の兵士を入れ、再度戦争準備をさせないよう監視させている。
一刻(約二時間後)、毛利元就は志道広良とともに現れた。
俺の年齢は知っていただろうが、毛利元就の三男、将来の小早川隆景が九歳とさほど変わらない姿に、まず驚く。
もういい加減慣れた。
俺の中身は三十二歳の元自衛隊である。
俺「俺は毛利元就殿の事は高く評価しているつもりだ。それで軍事同盟を結びたい」
毛利元就「……通常は配下とする所を同盟としていただくのは大変ありがたい申し出ですが、なぜそこまで高く評価して頂けるのですか?」
面倒くさいので、俺はいつもの決め台詞を言う。
俺「俺が預言者と言われていることを知らんか?」
毛利元就「申し訳ございませぬ。田舎者でして存じ上げませぬ。なぜですか?」
俺(コイツ、非合理的な事は全く信用しないタイプだ……)
俺「毛利元就殿の事は調べてある。
第一に百万一心。日・力・心を同じくするの意で、民や家臣が協力すれば何事も成し遂げられるという精神だ。民と家臣を大事にする者は必ず伸びる。
第二に『武人にとって大事なのは、武略、計略、調略である。これ以外にない』と言っているそうな。正しいと思う。
第三に、その結果として有田中井手の戦いで武田元繁を討ち取った方法を聞いた。なかなか出来ることではない。
以上の事から、俺は毛利元就を高く評価している」
毛利元就は、長尾家の大名が田舎の弱小国人である自分の事をそこまで詳しく知っていて、評価してくれた事に感動していた。
ただ、この男は常に言葉の裏を探る。
毛利元就が俺の目や表情から、俺の真意を探ろうとする。
全く油断出来ない。
毛利元就「上杉龍義殿は私に何を求めておられるのですか?」
俺「大内家の領地を削って欲しい」
毛利元就は難しい顔をする。
俺「わかっておる。大内家に恩があるのであろう。元就殿が俺の予言を信じる信じないはそちらの勝手であるが、大内家は内紛が起こる。毛利家が頼る事が出来ない家となり、恩を返す事が出来ない家になるぞ」
毛利元就「……」
俺「同盟は信頼があってこそ成り立つ。均衡の証が欲しい。申し訳ないが、三男を人質として長尾家でもらいたいがどうだろう。もうしばらくしたら尼子が来るから、この事は内密で」
<危機!尼子家の圧力>
安田「尼子様が来られました」
尼子晴久、その弟尼子誠久、軍事責任者の尼子国久が現れた。
尼子晴久が俺に頭を下げる。
尼子晴久「上杉龍義殿の言われた通りでしたわ。準備してあったようで、大分苦しめられました」
そう言って、尼子晴久は毛利元就を睨む。
毛利元就は作り笑顔を浮かべ、会釈をする。
尼子晴久「吉田郡山城の采配はどうなりましたか?」
俺「長尾家と毛利家は軍事同盟を結んだ。吉田郡山城はそのまま毛利元就のままだ。以後、尼子家も毛利家も大内家の領地を削って欲しい」
尼子一同が俺を睨む。
尼子晴久「尼子と毛利の関係は?」
俺「対等だ。どちらかを滅ぼす気はない」
尼子晴久「共同の軍事作戦は?」
俺「長尾家から軍事顧問を派遣するから、長尾家を通して連絡等して欲しい」
尼子晴久がギラついた目となる。
尼子晴久「尼子が毛利を攻撃したら」
俺「長尾家も敵にするという事だ」
尼子晴久、尼子誠久、尼子国久が小声で話しだす。
しばらくして、尼子晴久が口を開いた。
尼子晴久「それでは長尾家と尼子家とも軍事同盟を結びましょうぞ」
これで毛利家も尼子家を攻撃することが出来なくなった。
俺「良いでしょう。尼子家と毛利家で大内家の領地を削ってくれたらありがたい」
尼子誠久「経済同盟も締結して頂いて、取引の一層拡大を願いたい」
俺「良いでしょう」
尼子晴久「それでは早速と調停して欲しい案件がある。厳島神社だ。これは尼子家も毛利家もどちらも欲しい領地だ。さぁ、どっちに与えるのだ?」
俺はニヤリと笑う。
俺「早い者勝ちに決まっている」
毛利元就もニヤリと笑った。
<秘密だらけの安田>
毛利と尼子が退室した後。
安田「毛利家三男をどうされるのですか? 良かったら、うちで預かりますけど」
俺「いや、宇佐美に預けようかと思う。安田の家は秘密が一杯で情報漏洩が心配だ」
安田「そうですね、蜂蜜団子の美味しい食べ方とか沢山あります」
俺「違うよ。石鹸製造や明方式の灌漑や俺とのやり取りや極秘情報が山ほどあるよ」
安田「そうでした。私は長尾家の最重要人物でした。ワッハッハ」
この男は本当にすぐ調子に乗る。




