第320話 1541年 十一歳 毛利元就を攻略出来るかな(5 吉田郡山城前、毛利の罠が動く)
< 野戦 >
毛利元就は、吉田郡山城前で野戦をする指示を下す。
志道広良「兵数で敵は我が軍の二倍です。城で防衛戦がよろしいですぞ」
毛利元就「不意討ちなら必ず勝てる。敵の虚を突く。軍勢を三手に分ける。第一軍は、渡辺通、国司元相に兵五百を預ける。これを城の西方である大通院谷から出た先で伏兵とする。第二軍は、桂元澄、粟屋元真に兵二百人を預ける。これを伏兵として青山に近い場所まで密かに南進させる。そして第三軍千人は、儂自身が率いて正面から長尾軍を引きつける。その前に上杉龍義が川の側に来たら、川側に弓兵を控えさせて射殺する。通信兵、この書簡を届けろ」
毛利元就は、書簡を通信兵に渡す。
吉田郡山城
▲
森 森
(第一伏兵) (第二伏兵)
大通院谷方面 青山南側伏兵
渡辺・国司 桂・粟屋
五百人 二百人
▲
│
青山土取場
▲
│
★毛利本隊(元就)
約千余
(赤川元保先鋒四百)
│
│
南側:長尾軍進軍 五千人
(大軍を広く展開出来ない地形)
<緊迫の書簡>
一方、長尾軍。
俺「敵は押し引きが大変上手い。そして弓矢を多用する。要は、こちらが押し込んだ所に両側面から弓矢で攻撃してくる形だ。我が軍得意の偽装撤退は恐らく通じない。数的優位を活かして面を取っていく戦術となる。柿崎、アレの準備は出来ているか?」
柿崎「若様のご指示通り十分過ぎる量を備えました」
俺「さぁ、始めよう!!」
長尾軍は横陣(一)を作りたいが、地形がそれを許さず、紡錘陣形(◇)とならざるを得ない。
両軍が陣形を整えたころ、毛利から一騎の通信兵が竹の先に文を持ってきた。
文を持って帰らせたいので、通信兵を殺さず残しておく。
文を読む。
「長尾龍義殿
若き将と聞く。
互いに兵を損なうは本意にあらず。
青山の南、又打川のほとりにて、しばし言葉を交わさぬか。
将たる者、兵の後ろに隠れるべきにあらず。
毛利元就」
俺は文面を柿崎に見せる。
柿崎「どうされますか?」
俺は返信を書き、待たせていた毛利の通信兵に持たせる。
加えて「これも持っていけ」と降伏用の白旗も持たせる。
俺「早目に降伏してくれた方が助かる」
通信兵は怒りに満ちた目で俺を睨み、毛利方に戻った。
柿崎「若様にしたら珍しいですよね」
俺「心理戦だからな。これで敵兵が激怒して突出して来てくれたらありがたい」
一方の毛利元就は、通信兵から上杉龍義からの返信と白旗を預かる。
志道広良「上杉龍義は無礼なガキですな。厳しさを教えてやらねば」
毛利元就が、上杉龍義からの手紙を開く。
「毛利元就殿
川辺にて語らんとの書、拝見した。
将たる者が兵の後ろに隠れるべきにあらずとの言、尤もである。
されど、我は兵を率いる身。
一将の勇よりも、軍の利を取る。
話し合いを望むのであれば、条件は二つ。
一、毛利元就三男を人質として差し出すこと。
二、越後と軍事同盟を結ぶこと。
これを受け入れるならば、兵を退く用意はある。
応じぬならば、川辺でなく戦場で語るのみ。
上杉龍義」
毛利元就が、手紙を志道広良に見せる。
志道広良「降伏勧告ではなく、同盟ですか。上杉龍義の意図が図りかねる。殿はわかりますか?」
毛利元就「分かる。儂の意図も読んだ上での返答だろう。さて、返答してやろうぞ。赤川元保よ、出陣せよ」
合図の法螺貝を鳴らす。
<黒い玉が飛ぶ戦場>
赤川元保「待ちかねたぞ!! 者どもかかれーー」
赤川元保が四百名に号令をかける。
血の毛の多いものばかり集めた。
皆、死などを恐れない。
引くことなどあり得ない。
今までもそうしてきた。
目の前の敵に対しても、そうするつもりだ。
目の前に長尾軍が見えて来た。
距離二十メートル。
赤川元保の目の前に、黒い玉が飛んで来た。
震天雷である。
黒い玉は、赤川元保の眼前で爆発した。
爆発とともに飛び散る鉄片が、次々と四百名に突き刺さる。
赤川元保の手や足に鉄片が刺さり、負傷する。
次々と黒い玉が飛んできて、爆発する。
震天雷の爆音に驚き、兵士達が動揺する。
その度に悲鳴があがり、赤川元保の兵士は倒れていく。
自然、心が折れていき、兵士達は撤退していく。
赤川元保「おい、逃げるな、進むぞ」
そう叫ぶ赤川元保に、弓矢が刺さり倒れる。
戦況を見ていた毛利元就が驚く。
毛利元就(瀬戸内の焙烙玉にしては威力が大きすぎる。何だアレは?)
志道広良「明国人から聞いたことがある。あれは瀬戸内の焙烙玉ではない。震天雷だぞ。長尾家の奴ら、何であんな物を持っているんだ?」
毛利元就「対策はあるのか?」
志道広良「盾兵を多く入れるしかありません。それだけでも防げませんが、どうしましょうか?」
毛利元就「盾兵を前面に出して、後ろに弓矢隊を付けろ。奴らが震天雷を投げる所を狙い討て。二百名ほど先に行かせろ」
毛利が盾兵を前面に出し、後ろに弓兵を付けて前進してきた。
この時の盾は金属製ではなく竹製である。
和弓なので有効射程距離は六十メートル。
長尾軍の震天雷の有効射程が二十メートルほどなので、十分に捕捉撃滅出来る距離である。
毛利軍の前に立ちはだかるは、長尾軍の誇る長弓部隊だ。
各自五十センチほどの踏み台を持ち、その上に登り長弓を撃つ。
その有効射程は百二十メートル。
その代償として重量四十キロで、七十キロの弦を両手で持ち上げないといけない。
長弓部隊は、太い針のような矢を放つ。
長弓部隊は竹製の盾を貫通させ、後ろの盾兵も射抜いていく。
盾がいなくなった弓兵も、たちどころに射抜かれていく。
盾兵は長弓の射程から逃れるようにどんどん下がっていき、すぐに和弓の射程距離から外れる。
弓矢部隊は無理とあきらめ、次々と撤退していく。
<毛利元就の沈黙>
戦況を見ている毛利元就は、目を細めた。
毛利元就「射程が違う……」
志道広良「盾が抜かれます」
毛利元就「……構造そのものが違う」
毛利元就(伏兵を置いたのに活かせない)
毛利元就「伏兵は城へ回れ。森を抜け次第、入城せよ」
志道広良「・・・・撤退して城の防備であの新兵器の対策を考えましょうぞ」
毛利元就「・・・野は利無し。城へ退く」
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