第319話 1541年 十一歳 毛利元就を攻略出来るかな(4 毛利元就、越後の罠に気づく)
< 前哨戦 >
長尾軍は、吉田郡山の南側、青光山に陣取った。
史実では、尼子軍は本陣を青光山に進出させ、湯原宗綱、湯惟宗らは青山に、高尾久友、黒正久澄、吉川興経は光井口に陣取った。
軍記物などでは、郡山の背後にある甲山に尼子が陣取ることを避けるため、間者を使って城の南側、つまり正面に移るよう工作したことになっている。
それでも長尾軍は、大軍の利を活かすため青光山に陣取った。
そこに影牙から、山本勘助が捕まったという報告が来た。
安田が狼狽える。
安田「どうしましょう? 勘助さん捕まっちゃいました。親衛隊も三席から六席までいなくなったら大打撃ですよ」
俺「慌てるな。山本勘助ならうまくやる。そろそろ夕方だ。柿崎、例の作戦はどうなっている?」
柿崎「うまくやってくれるでしょ」
俺達は、明日南側から始まる吉田郡山城の攻城戦について話し合った。
<緊迫の青光山>
丑三つ時。
石見路から青光山へ、長尾兵糧を積んだ荷駄が三十頭続く。
これを見る毛利軍の山伏衆。
山伏衆は、毛利方の井上元景に報告する。
井上元景「お館様から敵の補給路を断てとの指示が出ている。護衛は何名ぞ」
山伏衆「二十名です」
井上元景「兵糧と荷駄は欲しい。弓は使わず護衛を追い払うぞ。四十名用意しろ」
毛利方の井上元景ら四十名の兵士が、目視で松明を掲げた長尾軍の補給部隊を確認する。
井上元景は、定時に来る予定の山伏衆が来ないことに疑念を持つ。
井上元景の副官「ここを通り過ぎると見晴らしがよくなります。如何しましょうか?」
井上元景「行くしかないな。罠の場合は全力で逃げろ」
井上元景ら四十名の兵士は、長尾軍の補給部隊を包囲するように攻撃する。
一方の長尾軍補給部隊の護衛は、ヤンキー兄弟の井口剣一である。
井口剣一(若様の読み通り、敵は馬が欲しいから弓は使ってこず、白兵戦を仕掛けてくるで当たりだな。さて、敵の頭はどいつだ?)
井口剣二「兄貴、敵部隊の頭がいましたぜ。やはり先頭に立ってます」
出来る部隊長は、前線に出て兵士を引っ張るものだ。
井上元景は迷っていた。
長尾軍の護衛部隊が強いのである。
井口剣二「殺すぞー、ボケこら、カス」
井口剣二は、長尾軍の弓兵を攻撃しようとする毛利の兵士の顔に十字槍を突き立てる。
井口剣三「お前の叫び声、猿よりうるせぇんだよ!」
井口剣三は、毛利の兵士の集団の中に入り、十字槍を振り回す。
ヤンキー兄弟はどこでも口が悪い。
井上元景(敵の罠なら撤退しろと言われてはいるが、数で押し切れるか?)
井上元景がそう思っていた所、急所を弓で撃たれ、その場に倒れた。
井上元景の副官が指揮を継続しようとするが、これも撃たれた。
浮足立つ毛利軍。
しかし数の力があると思い、戦闘を継続する。
しばらくすると、後方から長尾軍の援軍が来た。
援軍が来た時は撤退するよう毛利軍は指示されているので、各自バラバラに撤退していった。
毛利兵A「井上元景殿を回収できないか?」
毛利兵B「無理です。行けばこちらもやられるだけです」
毛利兵A「山伏衆を潰されたのが痛いな」
<消える山伏衆>
毛利軍が撤退した後。
井口剣二「若様も何だってこんな面倒くさい作戦案にしたんですかね」
井口剣一「しゃーねーだろ。毛利元就ってのはこういう奇襲戦が上手いらしい。それを支えるのは俺達が倒した中級指揮官だと。それと赤目が三十人掛かりで敵の忍びで、ここいらだと山伏衆てのを潰している」
井口剣二「若様がこんなに細かくやるってのは、毛利元就ってのは相当厄介なんですね」
井口剣一「そうだなー。まぁいいや。早く帰って少し寝んぞ、明日の戦いがあるだろうがよ」
一方、山伏衆を制圧している赤目三人娘。
三女「連続勤務じゃないのよーー、甲賀の里よりきついぞーー」
次女「文句言うなー、お手当は甲賀の里の百倍はある」
長女「本当に百倍ある(笑)っていうか戦闘に集中しろーー」
そう言いながら、山の中に散らばる山伏衆を見つけては排除していく三人娘であった。
毛利元就は報告を聞き、頭を抱える。
毛利元就(越後の奴らは、儂が十余年で育て上げた山伏衆を潰した。これでは足軽を斥候で使うしかない。情報力は半分以下に落ちる。さて、どうしたものか)
毛利元就はショートスリーパータイプで、細かく寝て一日を使う。
この日は、ちょっと寝ては考え、また寝てを繰り返し、朝となった。
毛利元就(敵は山伏を潰した。つまり儂を読んだつもりであろう。ならば儂も読むだけだ)
毛利元就は、野戦で勝負をする事を決意する。
毛利元就(城前で野戦だ。敵は攻めねばならぬ。攻める側は必ず形を作る。形を作ったところを崩す)
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