第315話 1541年 11歳 火縄銃とシャム貿易だぞ
<緊迫!南海を知る男>
山田と淀橋が、一人の男を連れて俺の部屋に入って来た。
山田「若様に会わせたい人がいます」
黒く日に焼けた精悍そうな男が入ってきた。
山田「名前は長田谷政で、シャム語、つまり現在のタイ語と中国語が話せます。商人だけど武芸も出来ます。シャム貿易がやりたいそうなんです」
長田谷政の目は、商人というより戦場の兵士のように鋭かった。
長田谷政「長尾家は西洋帆船を沢山保有していると聞きました。越後とシャムを結ぶ交易がしたいです」
俺は山田と淀橋が、俺のやりたいことを理解していることに感心した。
俺「山田、淀橋、よくやった」
淀橋「やっぱり若様好きだった」
淀橋が小声で呟く。
俺は長田谷政と話す。
俺「なぜシャム貿易がやりたいのか?」
長田谷政「シャムは胡椒、蘇木、象牙、錫を産出します。明との交易が制限される中、南方は金銀と引き換えに確実に利を生みます。
アユタヤの川は濁っておりますが、港は世界一賑わっております」
長田谷政の目には、幾度も死線を越えた者だけが持つ静かな光があった。
俺「俺達がシャム貿易を始めるとして困るのは、現地シャム人の信用が無いことだ。
よって、俺達がいきなり始めると、信用出来る現地の人を探す所から始めないといけない。手間だ。
だから先に、シャム語が喋れる長田谷政がシャムで商品を集めたり、信用を作ったりして欲しい。手付で五百貫やる。
後で、うちの商人を取りまとめている九島弥太郎と会わせよう。
これからも頼むぞ」
この男なら、南海の荒波を越えていける。
ならば、使える。
長田谷政「失敗すれば、南海で骨になります。それで構いません」
俺は長田谷政と握手した。
<危険!一万六千貫の木箱>
長田谷政が出て行った後、山田と淀橋と兵士が、堅牢そうな木箱を四個持ってきた。
俺の口元が緩む。
俺「淀橋、例のあれか?」
淀橋「ハイ、火縄銃四丁です。総額で一万六千貫です」
俺「おう、ご苦労だった。やはり琉球王国の後ろ盾があると、ポルトガルの連中も態度が違うであろう?」
淀橋「違いました。ポルトガルの商人は琉球王国の役人を気にしていました。若様の指示通り、革命が成功してから購入して正解だったと思います」
俺「ありがとう。下がって良いぞ。小島の越中西部の領地は、今は宇佐美に見て貰っているんだ。淀橋は早めに行って、引き継ぎをきちんとしてこい。
山田は第三軍団長の小島を助けろ。編成や訓練を仕切ってこい」
山田と淀橋は一礼をして、俺の部屋を出て行った。
次に俺は明の火砲技術者、火薬技術者(第161話参照)
と根鳥右衛門(第148話参照) と発明家新田次郎(第164話参照)」を呼び出す。
新田「若様、私はこの時を待っておりました」
根鳥「私もです。私はこのために越後に来ました」
明国の火砲技術者等も同じ事を言う。
通訳がついている。
俺は兵士に命じて、ポルトガルの火縄銃を皆に見せる。
新田や根鳥や明国技術者が、我先へと触る。
新田「早速仕組みを図面に起こそう」
根鳥「基幹部品を作ります」
明国技術者「火薬の配合とか、私達の技術で追加出来る所を補助します」
新田「若様、それではこの複製品を作成しますね」
皆、ワクワク顔で俺を見る。
俺「違うよ。そんな事のために一万六千貫も払わないよ」
皆、驚く。
俺が新型火縄銃の図面を机の上に広げる。
俺「連射速度は火縄銃の倍を目指す」
新田「若様……難度高過ぎですよ」
根鳥「若様……なかなか厳しいですぞ」
俺「火縄銃はその内、皆作る。その程度の技術だ。
俺はお前達には、普通の奴らが真似出来ない技術を求めたい」
新田「……お時間は頂きたい」
俺「もちろんだ。頼む。
ついでに、通常の複製品も作っておいてくれ。大量生産するからその手続も新田頼むな」
新田「承知いたしました(新型火縄銃の開発と通常の火縄銃の量産かー大変だな)」
安田「新型火縄銃の図面がまた見えなかったんですけど」
俺「出来てからのお楽しみだ」




