第311話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国の革命出来るかな ・最終戦(40 首里城に、新しい風が吹く)
< 終戦 >
謝名 親盛と小島の一騎打ちが始まる少し前のこと。
紫苑姫が王宮に忍び込み、牢獄のあちこちを見るが、母の姿はない。
看守も既に逃げている。
紫苑姫が意を決し、王の間に行く。
尚清王のご機嫌を取らないといけない。
そうしないと母の居場所を教えてもらえない。
紫苑姫「尚 世真王に毒を仕込みました。尚 世真王は一週間後に血を吐いて死ぬでしょう」
ウソである。
尚清王の機嫌がみるみる良くなる。
顔色も良くなる。
尚清王「よくやった。よくやった。褒美は好きな物を取らすぞ」
紫苑姫「母はどこに行ったのですか?」
尚清王は途端に不機嫌になる。
尚清王「今朝、首を吊っていたそうだ。儂は知らんぞ。そんな命令も出しておらん。お前の報告がもう少し早かったら、お前も母に会えただろうに残念だな。して、尚 世真王は本当に死ぬのか」
紫苑姫は暗い目をする。
紫苑姫「王様、尚 世真王は越後から持ってきた莫大な財産を那覇に隠してあります。その地図を王様に出したいのですが、よろしいですか?」
尚清王は途端に上機嫌になる。
毛 国鼎摂政も上機嫌となる。
尚清王「出してくれ、今すぐ見たい。おい、すぐ軍を出して取りに行くぞ。用意しておけ。どれ、見せてくれ」
紫苑姫は懐から巻物を出す。
尚清王がどれどれと見にくる。
紫苑姫の口元に笑みが浮かぶ。
紫苑姫「これでございます。よく御覧ください」
紫苑姫はそう言って、巻物で包まれていた抜き身の短刀で尚清王を何度も刺した。
動かなくなる尚清王。
紫苑姫は返り血を浴び、顔も身体も赤くなっている。
毛 国鼎摂政は腰を抜かす。
毛 国鼎摂政「衛兵、衛兵、こいつを殺せ。王を……王を殺したぞーー」
紫苑姫は怒鳴る。
紫苑姫「静まりなさい。毛 国鼎、あなたは外の決戦の勝敗を知らないのですか? 貴方達の負けです。このままでは貴方達は死罪です。助かる方法を教えましょうか?」
毛 国鼎摂政「……教えてくれ」
紫苑姫「尚清王を貴方達が殺したことにして、尚清王の首を新しい王、尚 世真王に届けなさい。さすれば貴方達は莫大な報奨金と命が手に入るでしょう」
毛 国鼎がゴクリと息を飲む。
毛 国鼎「……本当か? おい衛兵、首を取れ。お前、桶を持って参れ」
毛 国鼎が衛兵に指示している間、紫苑姫は王の間を抜け、王宮の外に出た。
紫苑姫は那覇に行き、いくばくかのお金で近くの島に行く舟に乗せてもらった。
<消えた姫>
紫苑姫は、優しかった母や乳母の姿を思い出し泣いた。
思い出すのは幸せだった頃。
ずっと笑ってばかりだった幼少期の頃だ。
少し時間が経つと、毛 国鼎が紫苑姫と母に辛く当たってきたことも思い出してしまった。
思い起こしてみると、毛 国鼎が尚清王を誘導していたようにも思う。
紫苑姫「ざまぁみろ、地獄に落ちろ」
そう言って、紫苑姫はまた泣いた。
その頃、毛 国鼎は、かつての主君尚清王の首を桶に入れて尚 世真王の元にやってきた。
毛 国鼎「尚清王は真の王であらせられる尚 世真王に逆らいました。私は目が覚めました。正道に立ち返り、尚清王の首を取りました。お納め下さい」
尚 世真王が尚清王の首を一瞬見て、目を背ける。
尚 世真王が冷たい声で言う。
尚 世真王「忠誠心の欠片もない者は人ではない。獣以下である。あの世で尚清王に詫びてまいれ」
紫苑姫は尚 世真王の性格を見越して、
紫苑姫「尚清王を貴方達が殺したことにして、尚清王の首を新しい王、尚 世真王に届けなさい。さすれば貴方達は莫大な報奨金と命が手に入るでしょう」
そう言ったのであった。
紫苑姫は自分の手を汚さず、毛 国鼎に復讐を果たしたのであった。
尚 世真王は窓から入る風を浴びて、これからの琉球王国の事を考えていた。
< 勝利宣言 >
尚 世真王は首里城の石段を上り、集まった兵と民を見渡した。
静まり返る城下。
尚 世真王はゆっくりと口を開く。
尚 世真王「皆、顔を上げよ。今日、我らはただ戦に勝ったのではない。未来を奪い返したのだ」
争いに疲れ、飢えに苦しみ、声を上げる力すら奪われていた民が、王を見上げる。
尚 世真王「争いに疲れ、飢えに苦しみ、声を上げる力すら奪われていた民よ。子を抱いて泣いた母よ。その痛みを、私は忘れない。その涙を、私は決して無駄にはしない」
尚 世真王は、集まった民を見渡した。
尚 世真王「この勝利は、私一人のものではない。皆がこの国を救ったのだ」
民衆が息を呑む。
尚 世真王は空を見上げる。
<新しい風>
尚 世真王「今日を境に、我らは新しい道を歩む。誰かに奪われる昨日でもなく、自らの手で選び取る未来を」
按司も、商人も、農民も、兵も。
その場にいるすべての者が、尚 世真王の声に耳を澄ませる。
尚 世真王「按司も、商人も、農民も、兵も、この国に生きるすべての者よ。私はあなたたちの声を聞く王となる。あなたたちの苦しみに寄り添い、あなたたちと共に立つ王となる」
尚 世真王は、風を受けながら拳を掲げる。
尚 世真王「見よ――空は晴れ、風は新しい。この風は、我らの国の始まりを告げている」
民衆が息を呑む。
尚 世真王「私はここに宣言する。今日より、琉球は再び立ち上がる」
静寂。
その静寂を破るように、尚 世真王の声が響く。
尚 世真王「共に歩もう。共に築こう。共に笑おう。我らの国は、今日ここから始まる!」
誰もが口々に尚 世真王を称える。
子供の声が震えながら歌い始める。
大人達も歌い出す。
もはや国歌となったあの歌が、琉球の青い空と蒼い海を越えて、波のように広がっていく。
「風吹けば 波が笑う
古い船は もう疲れた
新しい風 どこから?
空がひらく 海が呼ぶ
海の向こうに 光があるよ
怖がらないで 手を伸ばそう
昨日の王より 明日の夢を
みんなで行こう 新しい島へ」
琉球の海と民を結ぶ風に吹かれ、尚 世真王は遠い未来を見据えた。
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