第308話 1540年 10歳 亡命王子は琉球王国の革命出来るかな・最終戦(37 王の天幕に、暗殺者が忍び込む)
<危機!王の天幕に忍ぶ影>
尚世真王のテントの警備は4人だ。
しかし、今は動かない。
原因は、夜食で配られた握り飯だ。
戦時中にしては妙に豪勢で、塩気が強かった。
誰が差し入れたのか。
兵は覚えていない。
黒い影が尚世真王のテントに入る。
短刀を尚世真王に振り下ろす。
だが、その刃は届かない。
黒い影の喉に短刀が突き付けられ、血が一筋垂れた。
三女すみれ「お前か。誰が何と言っても始末する。……王に刃を向けた時点で、生きて帰れると思うな」
赤目のすみれは、暗闇でもハッキリ見える。
怒りで瞳孔が細くなっている。
尚世真王が声で目覚める。
小さな室内用の炎を、大きな灯りへ移す。
尚世真王「すみれさん、待ってくれないか」
三女すみれ「ハイ待ちます。ただ、コイツ縛って良いですか」
王の了承を取り、拘束する。
尚世真王が炎を近づける。
黒い影の顔が明らかになる。
紫苑姫だ。
三女すみれ「……外で始末しても良いですか?」
すみれの瞳が獣のように光る。
声は静かだが、刃は一切揺れない。
尚世真王「紫苑姫に話を聞いても良いですか?」
紫苑姫は唇を噛み、震えている。
目には涙が滲んでいるが、決して逸らさない。
<緊迫!忠臣の血と母の命>
紫苑姫「……我が家は初代琉球王・尚巴志の忠臣で、那覇の初代按司でした。代々その血を継いでおります」
尚世真王「忠臣の血筋ということだな」
紫苑姫は頷き、堪えていた感情が溢れる。
紫苑姫「母の兄は先代王の忠臣で、王府将軍でした。……去年その兄が亡くなった途端、尚清王と毛国鼎摂政は我らを反逆の血筋と呼び、母を投獄しました!」
拳を握る。
尚世真王「なぜ、尚清王がそなた達にそのような酷い真似を?」
紫苑姫「母の兄への怨恨だと思います。母の兄は尚清王の弟を王位につけるよう、先代の王に働きかけていましたから」
三女すみれ「それで母を殺されたくなければ、王を殺せと命じられたのか」
紫苑姫「……はい」
尚世真王の目が僅かに細まる。
紫苑姫「もう財産も名誉回復も諦めた。母と二人で生きられるだけでいい。……何をすれば、その願いを叶えてくれる」
紫苑姫の声が掠れる。
三女すみれ「王に条件を出す立場か?」
尚世真王「すみれさん、刃を少し引いてくれ」
静かだが、王の声である。
尚世真王「尚巴志の忠臣の子孫に無粋なことはしない。今は戦で王宮は混乱している。紫苑姫なら、母の脱獄も可能だろう」
紫苑姫が顔を上げる。
尚世真王「私が混乱を治め、琉球王となったとき、忠臣の子孫に報いることが出来るかもしれない。今回は逃がしてあげる。だが二度目はない」
紫苑姫は深く頭を下げる。
涙が床に落ちる。
三女すみれは不満げに拘束を解く。
紫苑姫は再び尚世真王に頭を下げ、脱兎の如く走り去った。
<動揺!首飾りと邪魔者>
尚世真王「また、すみれさんに助けられてしまった。本当にありがとう」
そう言って、自らの首飾りを外す。
尚世真王「先祖伝来の品だ。受け取ってくれ」
尚世真王は、すみれの首に掛ける。
すみれの顔は真っ赤だ。
怒りも、緊張も、恋も、全てが一気に込み上げる。
三女すみれ(もう、今しかなーーーーーーーーい)
長女と次女がいきなり現れる。
長女「あーこんなとこいた。すみれ何やってんの? 今外大変だよ」
次女「見張りが4人昏倒してる。握り飯が原因っぽい」
尚世真王「命は?」
長女「無事です」
尚世真王は安堵する。
長女「ほらすみれ行くよ。あんた休憩中だったでしょ?」
三姉妹は尚世真王のテントを出る。
次女「すみれはなんで王様の部屋にいた? ……わかった。覗きでしょ」
三女すみれ「覗きじゃないわよ! 王子の寝顔がかわいいから見に行ってただけよ! 恋してんだもんしょうがないでしょ!」
次女「それを覗きって言うんだよ」
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